3
でも所長は真っ黒な雰囲気のままに言葉を連ねた。
「君の人生全てを奪ってしまったと思っているから。後悔して、後悔して……」
「じゃあ、罰を望んでいるんだ」
何だ。とても簡単な事じゃないか。ずっと悩み続けたのが馬鹿みたい。
「あぁ……。とても可哀想だけど」
「分かった。有り難う、所長」
じゃあ、俺の為だけに生きて、死ねばいい。奴隷になればいい。ずっとずっと罰を与えてあげる。そして守ってあげる。紅葉ちゃんが他の事で苦しまないように。そうしたら……笑ってくれるかな……? 笑ってくれたら心は温かくなるかな?
「塊にぃ……」
「うん?」
「それ……逆効果じゃない?」
おかしいな……理論的に考えた結果なのだけど……間違ってしまったのかな……?
白時が頭を抱えて首を左右に振った。俺は少しだけ眉を顰めて困った顔を作る。今の俺の思想は人間的に捉えて“困った”時に使うものだ。間違っていないと経験が告げる。
「でもね、その後白時と話した事は凄く為になったよ。少しだけ紅葉ちゃんの雰囲気が柔らかくなった気がした」
白時が首を傾けて考え込む。どうやら俺に話した事を忘れてしまったらしい。
「ほら、バトルファンタジーものの主人公」
「あぁ、あれね」
所長に“嫌な予感”の訳を告げた後、俺はロッカーの中から刻刺を引っ張り出し、白時を呼び出した。
少し思うべき所があった為、相談したかったのだ。
「ねぇ白時。『よくさ、こんな戦いに女子を巻き込むな!!』って叫ぶじゃん? あれってさ、凄い出し惜しみだと思うんだ。一概に男子の方が優れてるって言えないじゃん?」
俺から言わせれば才能の出し惜しみ以外の何物でもない。もしかしたら、その台詞を言い放った主人公よりも優れた才能を秘めているかも知れないじゃないか。
問い掛けると白時は精神体の姿で現れた。仁王立ちして頚を傾ける。つば広帽が顔の半分を覆ってしまって良く見えない。
暫く考え込んだ白時は応えを導き出した。
「そうだね。それにさ、その子の気持ちを無視してる。本当は仲間と共に戦って傷付きたいと思うよ。私だって塊にぃだけが傷付いているの見たら黙って見てらんないもん。応戦するもん」
俺は黙って考える。そう言った状況に追い込まれた時の事を想像する。