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アンデッド ─undead─ 一部  作者: 秋暁秋季
第三体 擦れ違う、二人
159/178

1 岩悪を買おう!!

 朝飯を食べ終わり、身支度を済ませると靴を履いた。歩きにくいヒールなどではなく、きちんとした運動靴。それなりに歩く事になりそうだから。一番最初の目的地は本屋、次に事務所である。距離的に見てもこっちの方が合理的だ。

 私はマンションを飛び出し、街へと向かう。都会になり切れない街並み。電車もバスも通っているし、背の高いビルもそれなりにあるけれど、雰囲気が追い付いていない感じ。小さな子供が万札はためかせているような、妙なズレ。それでも不自由はしないし、暮らし易い。

 目当てはショッピングモール。其処に行けばある程度のものは揃う。……食料品は値段が跳ね上がるからお勧めはしないが。しかし本は定価、何処で買おうが値段の変動は無い。

 ふらふらと歩きながら細道を使う。この細道は住宅街の中にあって、住宅や団地、マンションの隣り合った隙間に慎ましやかに存在している。故に交通量が少なく、人混みが出来た事なんて見たことが無い。夜はすこし危ないが、昼間はなかなかの穴場であったりする。

 っと……此処を抜ければ。あぁ見えて来た。

 見上げるようにして馬鹿デカい建物を見る。クリーム色の壁の中にはスーパー、文具店、服屋は勿論のことCD店や本屋、雑貨店、眼鏡屋に至るまで小店舗が密集している。昔はゲームセンターに立ち寄る事もあったが、今は五月蝿いので避けている。

 私は自動ドアを抜けるとエスカレーターに乗る。本屋は此処の端の方。其れまでにアパレルや雑貨店が並び、女子達がひらひらした服を見てはしゃいでいる。正直……雑貨店は小店舗故に坪が小さく、十人程入ればすぐに身動きがとれなくなるのが難点である。

 混み合った店内を横目で流し、目的地に到着した。黒を基調とした薄暗い店内。しかし入りにくい訳では無く、夜をイメージしたようなシックで大人びた雰囲気がある。此処の本屋の空気は気に入っている。移転しないで欲しいな……。

 迷う事無くライトノベル売場に向かい、岩悪を探す。ありとあらゆるライトノベルの表紙と私の目が合う。しかし見つからない。新刊売場の方だろうか……。本屋によりけりだが、新刊は新刊で別の売場に設置されている事が稀にある。しかも以外とそう言うのって目当ての売場から遠いのだ。……何故だか分からないが。

 場所を移動する。中心が、本を立て掛けられるように作られた独特の本棚の上に目当ての物を発見する。


  ──岩波先生と美しき悪魔たち 岩悪劇場版──


 あった……!! 美しき悪魔達がそれぞれポーズを取っている。衣装は勿論、八木氏が淡いピンクのミニ浴衣、めぐねぇが弓道着、あきがフリル特盛りのゴスロリである。早速包装された其れを手に取り、裏返す。表紙と同様のブロマイドが付録として内包されていた。嬉し過ぎる……。

 早速会計を済ませねば。中央レジに向かってみると思いの他混雑していた。それぞれが手に入れたい書を手に持って、長蛇の列を作っている。止めよう。第二レジだ。

 第二レジは中央レジから少し離れた場所にある、こじんまりとしたものだ。係りもレジスターもそれぞれ一人と一つ。しかし知らな人が多いのか並ぶ事はまぁ無い。今日はどうだろうか? ひっそりと覗いて見ると、数人で列を作っていつつ、中央レジとは比べ物にならない程空いていた。これならさっさと済みそうだ。私はレジに並ぶとあらすじから湧き出る想像を膨らませていた。

 レジを済ませ、書店を出たところで袋から岩悪を出す。プラスチック製の包装を指で雑に破き、中を拝見。内容は家でゆっくり確認するつもりで、今気になるのは主に挿絵である。細部まで良く描き込まれたイラストに、内心頬を緩ませながらざっと頁を捲る。

 おっと……いけない。今日は事務所にも寄らねばならないのだった。こんな事をしていたら、忘れてしまう。

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