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「それ、愚問なんだけど。私が使わなくて誰が使うの?」
「そう。俺の可愛い“モノ”と変えてあげても良いと思ったんだけどね」
硝吸鎌との契約を破棄する訳にはいかない。硝吸鎌の為にも、彼の為にも。裏切らないと決めたのだ。そしてこれがただの自己満足であることは百も承知である。
しっかし……何故あのようなものを私に要求してきたのかは甚だ疑問だ。いや……ただの気まぐれか……。
私は硝吸鎌の思想を全て理解することは不可能だと改めて思い知らされた。
漸く貫いたままのトマトを口に含み、咀嚼する。うん、悪くない。
レタスを口に加えてパリパリと口の中に入れているときぼそりと塊が呟いた。
「それに硝吸鎌の事嫌いだし、食えない性格とか本当に有り得ないし、全世界のもの馬鹿にしてるし」
……これは……? 本心……なの……だろうか?
そう思い始めて直ぐに掻き消す。ただの真似事に過ぎない。気にしないに限る。
食パンをちまちま千切ってポタージュに浸す、充分に染み込ませた所で口に入れる。
うん、だいぶまともな味になったと思う。最初は舌がねじ曲がるようなものを平気で出されたものだから、指導のかいがあったものというもの。
「塊は?」
「ん?」
「食べないの?」
「紅葉ちゃんが食べ終わったら食べる~」
何時もの、ニヤニヤ笑いを浮かべたまま返答された。勿論手短にあったナイフを脅し代わりに彼に向けた事は言うでもない。更に言うならば、満面の笑みを返してきた事も言うでもないだろう。
食事を終え、皿洗いを済ませ、運動靴に履き替える。塊が見送りしてくれる。
「いってらっしゃい」