1 塊の想い
死体狩り事務所。此処には誰もおらず、俺一人だけがぽつんと一人でいる。定位置であるソファに後ろ座りして、背もたれに胸を押し付ける。
紅葉ちゃん、元気にしているかな? まだ怒っているかな? ちょっと気になるけど、今のまま会ったらまずい気がする。モヤモヤはクズを始末した所で収まらず、寧ろ増している。それもこれも紅葉ちゃんが笑ってくれないからだ。
俺はこのモヤモヤをどうにかしたくて、自分用のロッカーを開く。楽器ケースを横に倒し、跪いた。中にあるのは時計の指針を二つ合わせたような聖遺物。其処に唇を近付ける。
「白時、出て来て。相談相手になってよ」
無表情にそう問い掛けると、背中の方から声が聞こえてきた。
「ばぁっ!!」
小学校低学年の体型に、純白のエプロンドレス。その頭部に位置するのは、人形のような顔。髪は銀髪。かなり長く、座り込んでしまえば地に着いてしまうだろう。そしてその頭上には白いつば広帽が乗っている。一件すると天使のように見える少女が俺の上にのしかかっていた。
少女は後ろから抱き付くようにして、笑っている。
「白時、その姿は久々だね」
「ふふふー。帽子とって撫で撫でしても良いんだよー」
白時は満面の笑みでしがみついてきた。