1 決意
目が覚める。なんだか蜃が死体になった夢を見ていた気がする。最近要智さんの夢も見ないし、精神が安定していないのだろうか……? だがそうぐずぐずと言ってられない。そんな事をする前に、私にはやるべき事があるのだから。
「あら、もう良いの?」
刃型の聖遺物を持った女医のような人から尋ねられる。この人は蜃が塊になった時にも世話になった人だ。何だか懐かしい。
私は静かに頷くとシーツの皺を無くし、羽毛をかけ直した。その様子を見られ、微かに笑われる。
「そんな事しなくても大丈夫よ。やるべき事があるのでしょう?」
「分かるんですか?」
「貴方、結構分かりやすいから」
女医の微笑みを受け、私は深々と頭を下げた。
まずは塊を探さなくては……。死体を狩りに出て居ないとなると自宅……もしくは事務所……。此処からだと事務所の方が近い筈だ。
白で覆われた廊下を抜け、出口へと急ぐ。外に出ると暖かい日射しが降り注いでいた。行き交う人々が交錯し、人の川を作っている。その中を泳ぐようにして、足早に歩を進める。
ふと、ショウウィンドウに飾られたマネキン達と目が合う。“目が合う”と大袈裟に言っても、顔さえ禄に描かれておらず、窪みがあるだけだ。塊の姿とこれらの姿が重なる。
其処までして首を左右に振った。塊はマネキンなんかじゃない。病室に居た時は木偶人形だと思っていたけれど、少なくとも助けてくれた。助けようと思わなければ助けないし、助けられない。それは何かしらの衝動や勢い、もしくは“感情に近い何か”があったからだ。
塊はマネキンなんかじゃない。させない!!