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「だから変わりにいなしてくれないか?」
──私が? 言うこと聞くとは思いませんが。
私は薄笑いを浮かべて硝吸鎌を見る。掌で弄ばれるのが不愉快なのか不機嫌そうな表情を浮かべている。しかし逆鱗の時よりも遙かに丸くなった。後は紅葉に任せよう。
「ほら、紅葉からだ」
「唐紅? 無事か?」
硝級鎌は私から携帯を引ったくると短い会話をし始めた。表情の安定を見る限りでは、かなり落ち着いてきたようだ。れてたので椅子に座る事にしよう。
表情に全く変化は無いものの、電話を終えた硝級鎌は清々したようだ。だが硝級鎌の声が紅葉に伝わらなかったのは気になる。どんな手を使っても伝えそうなものなのに、何故。
……無理に論理を組み立てたところで破滅へと向かうだけだ。もっと別の視点で考えねば……。
まず、今回の件で紅葉は重傷を負った。それも当たり所を間違えたら即死の。そして人為的に起こされたものではない。限り無く事故に近いものだ。此処で情報を足そう。こんな事を許すはずがない硝級鎌が、防ぎ切れなかった。そう、伝達不能、傀儡化不能という屈辱的な方法で。つまり、人間には起こし得ない……。其処で一筋の光が見えた。
私達、死体狩りと死神の敵しか居ない!!
過去を振り返る。紅葉が死体を狩って怪我を負わなかった日は殆どない。つまり、“紅葉と契約した日、若しくはそれ以前に敵は伝達不能、傀儡化を不可能にしていた”という事になる。
気付かなかった自分が憎らしい……。それをした者はもっと憎らしい……。其奴は今でも何処からか硝級や紅葉の行動を監視している事だろう。
舌打ちをすると割れた窓に手を伸ばし、軽く上下に振る。すると一羽の烏が飛来し、窓枠に止まった。あの狸と直接的に話をするのはとても腹立たしい……。
──どうなさいましたか。聖様。
「その名前……君のご主人様が言ったの……?」
──左様で御座います。
一羽の烏は僅かに首を傾け、『何か問題でも?』というように翼をはためかせた。まぁ、今はその話はどうでもいい……。今はそれ何処じゃない……。
私は眉を潜めながら、出来るだけ落ち着いた口調で言伝を頼んだ。
「この付近に監視が付いている可能性がある。気を配ってくれ」
──それはそれは……。必ずやお伝え致します。
烏は二度三度頷くと翼を広げて消えて行った。
はてさて言伝も終わった事だし、この半壊した事務所をどう戻すべきか……。滅籍にでも取り敢えず頼んでみる事にしよう。
Twitter始めました(。・・。)
硝級鎌みたいなキャラってあんまりいないですよね……Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)