1 懺悔
「良かった、目が覚めたみたいだね」
所長が安心したように息を吐く。
目が覚めると真っ白な天井。起き上がると白い壁に囲まれた部屋の中。その小さな個室の中で、私はベッドに横たわっていたようだ。
「ブッシュ・ド・ノエル……?」
「そう、紅葉も前に来た事があると思うけど、主に“病院では受け付けてくれないような”ものを担当する部屋だよ」
所長が片目を閉じて悪戯っ子のように笑った。
あぁ、確かに知っている。そして最初の地獄を見た所だ。
しかしながら私は死体に致命傷を負わされ、倒れた筈だ。何故……此処に居るのだろう……?
その疑問に答えるように所長が口を開く。
「塊が運びこんで来たんだよ。と言っても最初は事務所に担ぎ込んで、閏日に手当てさせたんだけど」
何の冗談かと思った。塊が此処に連れ込んだ……? そんな事は……そんな事は……そんな事は……あってはならない!!
唇を引き結び、俯く。吐き気がする。今生きている自分が憎らしい……。
不意に扉の開く音が聞こえてきた。こつり、こつりと足音が此方に近付いて来る。足音で分かる。分かってしまう。だから……顔を上げたくない……。
「お疲れ様、塊。紅葉は良くなったよ」
「そうですか。それは良かった」
何時もの、安定した声だった。苦しみも、苦味もまるで感じていない。昨日あった日常的な出来事を聞いて、単純に相槌を打っているかのようだ。
近くにあった丸椅子を、ベッドに引き寄せているらしい。ゴロゴロとざらついた音がする。静かに座る様子が下目で確認出来た。
「所長……、塊と二人だけで話がしたいのです。少し、席を外しては頂けませんか?」
もうそろネタバレだ(´▽`)ノ