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1 過去の過ち
目を開く。其処は異国風の路地裏ではなく、要智さんも居なかった。ただ良く見知った公園。今はまだ昼のようで、太陽が明るく地を照らしていた。子供質の明るい掛け声もこだまする。
私は一人ぼんやりと突っ立ったまま、その様子を見据えていた。平和な日常。死体狩り以外の人々は死体の存在など知る由もないのだろう。少し羨ましい。
不意に男の子が蹴り上げたサッカーボールが私の顔面に向かって飛んできた。束の間の生理現象、反射的にまぶたを閉ざすも傷みは無い。恐る恐る目を開けて見ると、其処にボールは無く、変わりに男の子が駆け寄ってくるところだった。文句の一つでも言ってやろうと口を開く前に、驚くべき事が起きた。
なんと少年は“体を通過”してボールを取りに行ったのだ。
この事から類推するに、私はこの夢の世界に存在し得ない事になっているらしい。まぁ、それならそれで構わないが。
姿が見えず、ものに触れられないということは厄介な事でもってあり、反面便利な事でもあった。取り敢えず、今の私は何をしているのだろう。