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アンデッド ─undead─ 一部  作者: 秋暁秋季
第三体 擦れ違う、二人
121/178

1 油断大敵

「唐紅、慣れてきたからといって、くれぐれも油断はするな」

 見えざる目を失って数日、前よりかは幾分マシに成ってきた。少なくとも、見えていたときよりかはまともに動けていると思いたい。しかし油断するつもりは微塵もなかった。そもそも“見えない”というハンデが、過信という余地すら与えてはくれないのだから。

 私は硝吸鎌の膝の上に座らせられ、そっと頬を撫でられていた。優しい手付きである。

「貴方が奪ったのに」

「あぁ。だが私以外の者に汝を傷付けられるのは腹が立つ」 

 過去をほじくり返して文句を言うのは良くないと分かっているが、硝吸鎌もそんな事をしてくる為に、仕返しとして皮肉を飛ばす。

 彼はさも気にしていないように振る舞いつつ、その口を自らの口で塞ぎ込んだ。

 冷たい指先が首筋に回り、抑え付けるようにして締め付ける。解放されたのは数分後だった。

「互いに好き勝手に生きている。その報いを今受けているだけだ」

 確かにそうだと思う。私達は自分勝手に生きている。他人の感情など関係無しに振る舞い、無理に繋ぎ止めてきた。だから今その報いを受けている。そして償えるのは他人ではなく、自分自身だけなのだ。

 私は硝吸鎌の膝の上で大きく伸びをしながら欠伸をした。

「そうね。お互い自業自得だもの」

 一度引き延ばされた筋肉が弛緩された為に体から力が抜ける。世に言う“ぐったりする”という奴だ。膝の上でそのままくつろいでいると、跳ね上がった前髪をそっと指で弾かれる。そろそろ戻らねばいけないか。

 硝吸鎌の膝の上からおり、視線だけで言葉を交わす。考えを悟ってくれた硝吸鎌は、私だけをこの空間から遠ざけて行った。


 脂臭い事務所に戻って来た。この場にいるのは所長と私だけ。他の面子は死体を狩りに行っているか、ブッシュ・ド・ノエルの仕事、もしくは暇を出されているのだろう。

 ちなみに私は呼び出された身。自ら進んで此処に来た訳ではない。

「お帰り」

「ただいまです」

 私は死んだ目をそのままに所長に向ける。パイプ椅子に踏ん反り返った姿は女子高生というよりも、偉そうな悪代官だろう。彼は曖昧な表情で私を見つめていた。

 所長とはそれなりの付き合いになるが、考えている事全てを理解出来る訳ではない。今だって何を考えているかすら分からない。

「紅葉、今の時期が本当に危険なんだ。過信は…………禁物だよ」

「分かっています」

 所長の口調は言葉の重さを示していた。それだけ私は案じられている。自分では気付いていないだけで、本当は過信しているのでは無いかと錯覚してしまう。

 ふと勉強と似たような関係性があることに気付く。どんなに覚えた気になっていても、試験で解けなくては意味がない。詰め込んだもの全てが知識となる訳ではなく、其処から必要なときに引き出せるのが本当の知識となる。

第三体……嬉し過ぎる~(*´∀`)(*´∀`)

物語もクライマックスを迎える章です(^^ゞ

でもアンデッド─undead─はこれからも続きますよ(^^ゞ


ps

紅葉の呟きにもあった通り、勉強って本当これなんですよね……。

努力が報われないって此処にあると思います……。

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