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そんな中で、二人はボロボロになりながら戦っていた。
「助っ人に来ました」
「有り難う」
そう言いながら閏日さんは棘屍鞭を振るう。姿の見えない私は、全身の産毛が逆立つような感覚、もげそうになるような臭い、それから共に戦っている仲間の視線を元に十字を振るう。
それでも確かな情報量には至らず、曖昧だ。
「紅葉、今日は量が多いから、適当に振り回しといても大丈夫だよ」
そう言いながら所長も十字をぶん回す。
教会というフィールドは、硝吸鎌や冥鬼といった聖遺物が設立と同時に設置されている。所長が今ぶん回したのも硝吸鎌。教壇に掲げられているものを取り外すしたようだ。
「くそっ、量が多い。つぅか増えてる気がするだけど。どうなってやがんだ?」
閏日さんが吐き捨て、辺りに血の華を咲かせる。
「冥鬼、くたばった死体を処理して」
所長の言葉より、立てかけられた柩達の蓋が一斉に開け放たれる。銀のツタが有りとあらゆる床に這い回り、次々と回収していく。その間にも私や閏日さんの攻撃が止むことなく、振り回し続けた。
「開門!!」
所長が叫ぶと巨大な扉が開け放たれる。流れ込んで来るのは荊達。動きの早い蛇のように教会内に入り込んで来ると、あっという間に私達の体をすり抜けて、荊の鞭を振るい始める。
私はその荊の攻撃を回避しながらも、臭いを頼りに殺しを再開する。
「紅葉、それもう戦闘不能!! 右から来る奴に気をつけてっ──」
言われた通り、長い柄を使って見えない敵を突き放す。そろそろ鎌を形成し、振りかざしたい所だが、なんせ多くの荊が邪魔になって攻撃が当たるとは到底思えない。今は柄のままで応戦しよう。
「紅葉、後ろから来てんぞ!!」
私は急いで振り返り、蹴りを飛ばす。明らかに腹へとめり込んだ気色の悪い感触を覚えたが、逆に足首を掴まれて床へと叩き付けられてしまう。
「ぐはっ──」
口から赤が吐き出される。意識が朦朧とする。しかしそんな事に構わず、壊れた玩具のように振り回される。正直死にそうだし、死んでしまいたかった。しかしその考えを抑えたのは硝吸鎌の言葉だった。
──死ぬな──
最期には必ず彼奴が迎えに来るというのに、他の者に殺されるのが気に食わないのか、矛盾した言葉を放つ。でも、だからこそ『硝吸が居るから大丈夫』だと思えるのだ。
その言葉に応える為に、意識を再来させる。指と腕に力をフルに込めて振り下ろす。一種の緩みに乗じて十字を薙ぎ、遠くの方へと飛ばす。一瞬の重み。柔らかい、ぐずぐずした、反吐を催すような何かが遠方へと飛んで行った。
「閉門!!」