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アンデッド ─undead─ 一部  作者: 秋暁秋季
第二体 ミエザルメ
114/178

3

「さとりんって……」

 雫がぽかんと口を開き、そのままフリーズしている。

 うん。そうしたい気持ちは良く分かる。群青は前髪を掻き上げて呆れた溜息を漏らした。

 対する三人は『何か変な事言った』とでも言いたげな顔。

「恥ずかしがるポイントが人と少しずれてるよ。スカートのまま体育座りするし、立て膝立てるし、何度言っても聞いてくれないし……」

「だって誰も見ないもん。こんな極太脚見るのは、相当な物好きしかいないもん」

「ね……。こういう子なんです……」

 夜久君は深い溜め息をついて頭を抱えた。なる程、こりゃあ凄い問題児。

 対して覚さんは口を開けてぽかんとしている。物事の中心でありながら、蚊帳の外にいると言ったところだろうか?

「だって恥ずかしくないもん」

 そう言ってスカートを託しあげた。其れを見ていた私達は髪が逆立つ程に慌て、周りに夜久君以外の男子が此方を向いていないかを確認する。そしてさっと覚さんの周りを囲み、視線から隠す。対して夜久君は跪き、託し上げたばかりのスカートを両手で下ろす。

 元々、覚さんのスカートが長く、私達の迅速な行動が功をそうしたのか、被害は最小限に止まった。

「もう!! もう!! もう!! さとりん、お願いだから恥じらいを持って!!」

「他の誰かが見てたらどうすんの」

「流石のあたしも其処までしないぞ」

「夜久君をこれ以上セクハラと勘違いさせない為にも」

「本当だよ!! 街中でやったら悪いのは俺になるの!! 分かった?」

 愛子さん、雫、群青、私、夜久君の順で覚さんへ向けて説教する。四人から叱られた覚さんは萎縮して、肩を縮ませた。

 理解は……してないか。生まれたての子供に説教しても意味が無いのと同じように、怪訝な顔をしている。

 しかし聞こえるか聞こえないかの声でぽつりと呟いた。

「あぁ、でも。……が困るなら……」

「えっ?」

「あぁ、いや……。なんでもないよ」

 覚さんは一瞬見せた虚無的な顔を隠すように笑顔を作った。純粋な無邪気さだけを得てして作られたものだ。それを見て、夜久君は曖昧な微笑みを浮かべて頭を撫でた。撫でられた方の覚さんはされるがままになっている。男子になかなか気を許さない覚さんにとって、唯一無二の大切な存在なのだろう。

「と言うか街中でやんないし。そんな私は安くありませーん。見たら金取る!!」

「もう、そう言った汚いお金の話は止めなさい!!」

 夜久君のお説教じみたツッコミにより、この会話はお開きとなった。 

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