公園の話
とあるオカルトシリーズに影響されまくってます
通っていた高校の近くには小さな公園があった
自宅とは逆の方向にあるその公園は、多少入り組んだ路地を抜ける必要があるという不便な立地からか、子供も滅多に訪れない無いほどに寂れていた
その分静かで読書をするには丁度良く、僕は頻繁に足を運んでいた
本格的な夏の到来を控えたある日の事。公園に1つだけあるベンチ座って本を読んでいると何かが軋むような音が聞こえた
顔を上げるとブランコが1人でに揺れているのが目に入る
無風に近い風速にも関わらずブランコは大きく揺れている
不気味に思い、僕は読んでいた本を閉じ足早に公園を後にした
次の日
オカルト話が好きな高校の先輩にブランコの話をしてみるとつまらなそうな顔で
「共振だな」
と言われた
共振……理科で習った記憶がある。確か物体が持つ固有振動数と同じ揺れを加えてやると物体が振動する現象だったか
「その公園のブランコは支柱から直接ブランコが垂れている物じゃなく。固定された支柱から平行に垂れ下がっているポールにブランコが付いているだろ。あの形は共振を起こし易いんだ」
そう言って先輩は鞄から取り出したノートにブランコの簡単な図を書きだす、確かに公園のブランコと同じ形状だ
「無風に近くてもほんの少しブランコを動かす事が出来れば自ずと揺れが大きくなるんだよ。お前が見たのはその時だ」
拍子抜けした。1人でに動いたブランコはオカルトでも何でも無く極当たり前の物理現象だったのか
「……あれ? 先輩…あの公園に行った事あるんですか?」
僕が説明してもいない公園のブランコを先輩は正確に図にしていた
「何度かな」
嫌な予感がする、自他共に認めるオカルトフリークの先輩だ、何の用も無しにあんな入り組んだ場所に行くとは思えなかった
「……な、
何か曰くでもあるんでしょうか?」
恐る恐る聞いてみると先輩は微かに驚いたような表情を見せた
「なんだ、知らなかったのか?」
リサーチが足りないなと先輩が笑う、意地の悪い笑みだ
「知らないなら教えてやるよ。今から10年以上前の話だが、お前が座っていたっていうベンチの脇に1本の桜の木があってな。そこで女子生徒が首を吊って自殺したんだ」
絶句した
「以来、あの公園には女子生徒の霊が出る。私も見たことがあるぞ、ベンチの側に浮かぶ女をな」
そんな場所で僕は呑気に本を読んでいたのか……
先輩は意地の悪い笑みを浮かべたまま僕を見据える。 なんだ? まだ何か言う気なのだろうか
「お前……どうしてあの公園に辿り着いたんだ?」
「どうしてって……理由なんて無いですよ。偶々あの公園を見つけて……」
そう言って僕は妙な事に気がついた
何故僕はあの公園を見つける事が出来たのか……件の公園は僕の自宅とは逆方向で、路地を抜けなければ辿り着けないのだ。何故僕はわざわざそんな場所に行こうと思ったのか……動機が思い出せない
極自然に。当たり前のように、公園のある方へと進んでいたような気がする
「呼ばれていたんでしょうか……僕は……」
その女子生徒の霊に
先輩は答えずに肩を竦めて見せるだけだった