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2話*神崎夢子について

 朝の会はあれはなんだったんだ。一体俺の身に何が起こったというのだ!確かに夏は暑いし、蝉もうるさい。だがあの神崎夢子という転校生がこの教室に入った瞬間、世界が止まったような気がした。例えるとしたらアレだ。ジェットコースターで90度に落下する寸前のあの感じ。

 そして今は授業と授業の合間の10分休み。俺は隣のガリベン女に宿題を見せてもらう事も忘れて神崎夢子さんの目の前に立つ。そして、取って置きの一言。絶対惚れさせぜ!・・・・という予定だった。

『しゅ、しゅみはなんですか。』

俺はアホかあああ!!!いくらなんでもこれは第一印象崩しすぎだろ!ただのアホ扱いしかされねえ。あの美人特有の冷たい目つきで見られたら俺もう明日から学校いけません!

 今この瞬間をみんな痛い目で俺を見ているような気がする・・・特に男子。この瞬間以上、変に肩に力が入ったことはないだろう。今夜風呂でよく揉もう。しかし彼女は無表情だったが口を開いた。

「相撲観戦。あと星の観察」

相撲観戦とな!!!まぁ星の観察は素敵なご趣味だ事!じっとしている事が苦手な俺は星の観察なんてもの一番苦手にするであろう!俺の趣味は家庭農園だ。親が「あんたは野菜当番ね。」とか言われて始めたがこれが結構面白い。

 そんな事より彼女のとの初会話に成功した訳だが、なんて返せば良いのかわからないという・・・。

 なんともいえない相撲観戦と、じっとしているだけで俺の苦手な星の観察なんかなんて反応したら・・・・。よーし・・・ここは一つ男らしく・・・。・・・またもや予定で終わったらしい。

「へ、へぇー・・・!まじで!」

確かに男らしくないのは認めよう。計算ミスだ。ちょっとした計算ミスだ。

 俺は自分の頭ではこの話題を盛り上げることが不可能だとわかり、話題を変えることにした。転校の理由を聞くかな・・・。でも触れてはならない理由とかだったら困るし・・・。とりあえず一番気になるのが、神崎さんが冬服のセーラーという事だ。さっきの俺の返事を無視して机に頬杖をつきならが窓の外やら教室を見渡している彼女に

「ところでさ!なんで冬服なの?」

と聞いてみた。彼女は一瞬口をぽかんと開けて「え?」と言う顔になったが、すぐに返事を返した。

「だよね、夏だもんね。忘れてた。」

ジリジリジリジリ太陽が朝っぱらから攻撃してきている今日。忘れてたなんて見るだけでも暑苦しい冬服を着るなど許しがたい言葉だが、かわいい神崎さんを俺は許す。

「こんなに暑いのに?うっかりしてたのか。」

この状態がブスの山口だったら「ふっ」と鼻で笑ってさっさと立ち去るところだったが俺はその彼女にとっても似合っているセーラー服をこの場で脱がないのか少し期待していた。

「家の中とかクーラーつけてたし・・・。」

クーラーいっぱいつけると温暖化がすすむんだぞー…。

 俺の家にはクーラーと言う物が無い。小3まで家にはクーラーが無いのが普通だと思っていたが友達の家に遊びに行きまくったあの日、俺はとことんうちが貧乏な事が身にしみたのを覚えている。しかもうちは車も父親の仕事用の中古の軽自動車しかない。母親も俺も交通手段は自転車か徒歩だ。近所の無料銭湯に足を運ぶのも少なくないし、第一に、家の第一印象は「昔の家」だ。友達誰に聞いてもそう答えるのだ。俺自体「貧乏小山」と呼ばれていたりするほどだ。そうか、神崎さんちはクーラーがあるのか。ぜひ泊めてもらいたいものだね。そんな事いったら変態になるか。それとクーラー無い家なんか俺んちくらいしかないか。

 教室がざわついてきた。なんだ?

「あれ?神崎さん?幼稚園の時に一緒に遊んだの。覚えてる?」

「ほれ、貧乏小山。お前どけや。」

あっという間に神崎さんは男子やら女子やらだいたいの出身小が秋原幼稚園の子達に囲まれた。うるさいぞ!お前ら!さっきチラッと聞いた噂だが、神崎さんは5歳までこの町にいて、近所の秋原幼稚園という所に通っていたらしい。俺は通っていなかったがな。

 さっきから、まるで俺が最初からいなかったかのようにぎゅうぎゅう押されて輪の外に出された。おい、先に話をしていたのは俺だぞ。優先しないか!

「ごめんなさい。覚えてない。」

神崎さん!そらいけねえよ。一緒に幼少時代をすごした子達を忘れるなんて・・・!

「・・・・ま、まぁ 仕方ないよ!あんな昔の事・・・。」

「神崎さん、また仲良くしてね。」

「貧乏小山つったってんじゃねーよ、どけよカス!」

相変わらず俺には冷たいな・・・全く・・・。

 神崎さんは周りの奴が消えたあとそのきれいな髪をいじりながら黒板の方をボーっとみつめていた。邪魔するようだったが、彼女のことをもっと知りたいために色々質問してみる俺。うざいだろうなあ・・・。

「前はなんて学校にいたの?」

「私立椿澤学園。」

「そこ・・・隣の県の?」

「そうよ。」

「え!私立じゃん!受験したんだろ?」

「いろいろあってね。」

これ以上聞いたらやばそうだったから笑みだけ返しておいた。神崎さんの事だか暴力事件とかじゃなさそうだけど・・・。・・・・あっち系じゃないよな・・・。

「・・・・星の観察ってどんなところがすき?」

「ちょっと学校探検でもしてくる。」

「え!ちょ、神崎さーん!」

彼女はさっさと席を立ち、足早で教室から出て行った。俺は追いかけようとしたけど、しつこいのって女の子嫌いだって言ってたっけ?とりあえずそういう理由で彼女を待つことにした。

 畜生!廊下に消える時の神埼さんのゆれる髪、見とれっちまったぜ。


 授業が始まる少し前のこと。

「あれ?先生・・・神崎さんは?」

俺も気にして・・・いや、俺の方が気にしていたが、神崎さんの隣の席の恨めしい野郎が言い出した。わかった!お前も神崎さんが好きか!ライバルだな!負けねぇぜ。

「神崎さん?あ、今日来たお金持ちの転校生ね!」

何っ!確かにお嬢様オーラを漂わせていたがまさか本当に金持ちだったとは!

「えっとねー、お父さんがあのプロ野球の神崎選手で、お母さんはアナウンサーやってるんだって。おじいちゃんが芸能事務所の社長さんだって。」

「すげぇ!どんだけだよ、神崎さん!」

「…って神崎さん本当にどこいっちゃったんだろうね…?誰か知ってる人いる?」

「せんせぇー、小山が神崎さんと寸前まで話してました。」

ちょ、女いらん事を…!俺がなんか連れ出したとかの犯人扱いされるじゃねえか!

「小山君、何か知ってる?」

「え、学校探検してくるといっておりました。」

生徒数名がくすっと笑った。何がおかしい!

 先生が書類をトントンと机で揃えながら、「じゃあ見てこようかな。」そう言った時だった。天井に取り付けられた校内放送用のスピーカーからゴツゴツとマイクを手で触る音が聞こえた。俺もこの学校の生徒みんなも誰もがまた新井先生の気まぐれのたいした事ない放送だと思っていた。だがしかし、テンポの良いドラムだけの音楽が流れ、そして人の声が聞こえてきたのだ。

『Hey,boys and girls!Good morning everyone.』

その声は確実にアニメに出てくる元気の良い少女の声だった。アニメのキャラに置き換えると、ツインテールだったりポニーテールだったりとりあえず髪をまとめていて、夏が似合う運動の得意そうでクラスでも目だっていそうな・・・。ま・・・まぁうまくまとめられないが、アニメの登場人物には欠かせないキャラそのものだ。放送している奴は、早口で英語にしたり、日本語にしたり、とにかくコメントをする。

『それでは、今日一日勉強がんばってね☆』

最後はこれで終わった。一分も満たないで長い文章を噛まずに読み上げた。これは録音なのではないか?生でやっていたら絶対にプロの声優だ・・・。放送中、皆が時間が止まったかのように誰でも一言もしゃべらず視線がスピーカーへ向かっていた。先生もまとめた書類をそのまま手にしたまま口を半開きにし、スピーカーへ目をやっていた。

「え・・・あ・・・さっきの何・・・。」

さっきのを先生に聞かれても困る。数名何が起こったか理解して目をギョロギョロさせていたようだがまだ残りの大半の人は理解していない。…俺もそうだ。

「・・・・・・。」

軽く放送していた間の時は数えた。少なくとも1分は越えただろう。瞬き5回以上した奴は絶対数名しか居ない。

 ガラッ。突然静まり返った教室に鳴り響くドアが床に擦れる音。ビクッっとしたようにみんなスピーカーから眼を離し、音のする方向をみる。やる気がないのにおままごとをさせられたおとうさん役の子供のような表情でドアの前に神崎夢子が立っていた。またもや先生も含め、誰もが口を半開きでポカーンとした顔で彼女をみる。そんな事も気にせず、彼女は自分の席についた。その瞬間に授業の開始を知らせるチャイムの音が学校中を響き渡った。全員はっと我に帰り、ようやく「なんだったの・・・」とか「え?え?」とかつぶやきだして教室がいつもどおりうるさくなってきた。

「神崎さん・・・どこいってたの?」

「授業に間に合ったわけですし、いいじゃないですか。」

「・・・まぁ・・・。じゃ、じゃあ号令。」

最初は日直も少し戸惑ったようだったが、いつもの号令ではじまった。

 男子大半があの放送の事を忘れようとしていたと思う。しかしあの印象に残る声は忘れようとしても忘れられないだろう。女子大半は休み時間に一斉に飛び出して友達を寄せ集め、「授業の始まる前のあの放送聞いたぁ〜?!」「超ありえな〜い!」とか言い出して下手な真似でもしだすのだろう。あ、ほら。もうそこの前後が。あ!そこの前後も。衝撃的な事件であるが、多分大きな噂になる事は少ないだろう。なんというか、学校にアニメのワンシーンを流すという痛い行動を認めたくないというか・・・。まぁそんな感じで。

 その後は授業はいつもどおり終了し、休み時間になった。

 女子は思ってたよりは騒いでいないようだが、教室で「なんだったんだろうね、あれ。」程度の笑いのネタにされていた。その辺のアニメ好きのいわゆるオタクの男女の間ではかなり大きな噂になっているらしい。あの声は絶対にあのアニメのあの子の声だ。とか、他のキャラクターをあげてみたり。よくもまぁそんなに覚えられるとは。その無駄な能力を勉強に役立ててください。

 そういえばあの放送をあの時いなかった神崎さんは聞いたのだろうか?まぁ、これも話のネタとして使えるし、神崎さんとの仲を・・・ふふふ。早速彼女に近づく俺。こういう行動だけは早い。

「授業始まる前の放送聞いた?あれ凄いよね。」

神埼さんにどんな反応されてもいいように、馬鹿にしているようにも普通に話しているようにも取れる微妙な表情で話しかけた。さて、神崎さんはどんな子なのだろう。ここでまたその表情に隠れている謎が解けるであろう!教科書、ノート、問題集をカバンにしまいながら彼女は俺と目を合わせて

「あっ。それ、私。」

と言った。えええ!ちょ、それは予想外ですよ。冗談、冗談!と笑ってくれ!その無邪気な笑顔にも惚れてやるから!神崎さんの外見では考えられないあの声はどう考えても別人ですよ。・・・あ、本当に神崎さんでもかわいい事は変わりないけど・・・。とりあえず予想外!

「そ、そんな・・・!マジで?!嘘じゃないよな?」

俺はわかりやすい嘘をノリが良く空気も読める奴のように振舞った。実際はただの貧乏だが・・・。神崎さんはキョトンとした顔で「冗談なんか言わないわ。」と言い、神崎さんを疑っていないと言えば間違っているが、現状を素直に受け止められない。そんな感じだ・・・。

 しかし、内心少し期待していた。目の前でその美人な顔から予想もできないアニメチックなかわいい声をだしてほしかった。

「私、脇役とか一回ぽっきりのアニメとかの声優やらせてもらってるから、よろしかったら探してみて?」

こ、こいつぁすごい人と出会ってしまった・・・。中学生ですでに声優とは・・・!ってゆーかあの演技力・・・。ただものではないな・・・。

「ちょっ!すごいな、声優なんか!神崎さんスタイルいいからモデルとかもやってそう。」

身近にこんな活動している人がいれば誰でも目がキラキラしてしまうだろう。なぜかそれを彼女は嫌がる表情をして見せた。正直カチンときたが、神崎さんだからこそ許す。しつこいのは俺だしな。

「モデルもやってたわ。でも、退屈だからやめた。」

この人、本当にどんな人ですか。

「やっぱりおじいさんの事務所で?」

「ええ。」

「他に何かやってる事とかある?」

俺は調子にのって一気に聞いてしまったが、神崎さんは長い髪を右肩に寄せてから「それは言えない。」といった。その細く長い髪と顔に似合う小悪魔のような台詞に心を完全に奪われた気がした。嫌、気がしたのではなくて絶対にさっきので完全に奪われた。俺の負けだ!

さっきからもちらちら元秋原幼稚園の生徒だという同級生が尋ねてくるが、誰も覚えていないと言う神崎さん。

 クールビューティーというのか。それともただの天然少女なのか。もしかして、転校するたびに元の学校の記憶を忘れるような機械を…。そんな漫画の世界のような事はありはしないだろうが、神崎さんの事だから少し期待してしまった。

 2時間目の国語の授業は何事もなく、神崎さんも席でじっとしていたらしい。国語の先生は授業を注意を言ってから始めた。「勝手に放送室を使った人がいます。誰だかはわかりませんが、絶対にやめてください。」多分全部のクラスで言われているだろう。神崎さんの方向を見てみたが、何事もないように窓の外を眺めていた。


 みんな、よく聞いてくれ。いいか?神崎さんは落ち着いている。授業中、普通の行動をしている。いつもどおりに授業を受けている。もう行動や声質でわかってしまうほど自然だ。

 なぜ俺がここまで言っているかというと、神崎さんは先生に問題が出される度に挙手をし、フリーに答える問題でもすべてにおいて正解をする。1時間目は挙手とかない順番に差していくみたいな授業だったからその能力は発揮されていなかったが、2時間目で明らかになった。今までは「これがわかる人、挙手。」みたいになっても沈黙が続き、結局先生が援助しながらみんなで答えを出していく。そんな授業の進め方だったが、今日は全く違う。スムーズに進んで、逆に迷惑なほどすいすい問題に答えていく。クラストップの人も全く役目無しで授業は終わってしまった。

 やはりこれは格好よかった。男女とも神崎さんの机の周りに集まり褒め称える。アホの野郎は「これから宿題うつさせて。」とか言い出すが、すでに神崎さんはクラスの人気者になっていた。

 この噂を聞き、給食準備中に他のクラスの人が神崎さんを人目見ようと、うちのクラスにたくさん来た。誰でもが認める美人という事で、明日告白するとか言い出した奴もいたらしい。そんな奴は俺が全力で止めるけどな。


「やばっ、小山、保健室行って消毒液取ってきてくれる?」

「しょうがねえな。いってやるよ!」

給食準備なんかにいちいち手消毒しやがって。消毒液なくなったんなら石鹸で洗えばいいだろ?普通はそう思うよな?しかしな、俺の学校ではそんなのありえないんだ。保健室が少し遠いから行きたがらない人はいるが、大半の男子は絶対あそこへ行きたがる。目的?そりゃ先生にきまってるだろ。うちの学校の保健室の清水先生、美人なんだぜ。若いのかな。でも20後半か30前半って所。独身らしい。なんで結婚できないんだろう。清水先生は別に頑固じゃないのに。俺だったらすぐプロポーズしてるね。

「ちわーっす。消毒液ください、清水先生。」

清水先生は丸い背もたれのないあの回転椅子に座っていた。ウェーブのかかった髪を揺らしながら「裕太郎君、久しぶり。」と微笑んでくれた。俺は髪フェチなんだなぁとつくづく思った。清水先生の名前は蛍。その名に合うような綺麗な歩き方で、ただ消毒液を用意するだけでも見とれてしまう、舞うような足取りで。いつでも光り輝く蛍ような笑顔を見せて和ませてくれる。いやらしいが、これまた巨乳で。くびれのある白衣ってなかなかセクシーだよな。神崎さんに惚れてからも清水先生は永遠に俺の憧れの人だな…。

「あ、そうだ。今日転校生きたんですよ!」

先生は神崎さんと正反対で、話すときも笑顔で話してくれる。

「名簿見たわ。神崎さんよね?どんな子なの?もう話した?」

そして会話が続くように返事を返してくれる。神崎さんもこんな風だったらパーフェクトだったのに…。まぁクールビューティーってのもいいけどな。

「すごい人ですよ。頭もいいし、おまけに美人ですし。ちょっと冷たいですけどね。」

ははっ。っと笑って見せたが先生は少し予想外の事を言い出した。

「あれ?私は明るい子って聞いたのにな。初日だから緊張してたのかな?」

え!まるで明るい人には見えなかったけどな。実際に接してみても…。そんなの誰がいったんだ?生徒が言ったのはないだろうけど…。

「もうなんか、クールビューティーっていうんですかね?」

 話を続けたかったが清水先生が消毒液を俺に持たせて給食当番さん平気なの?と話をつけてしまった。給食当番が困ってる事などしらん!普通に石鹸で手洗えばいいじゃねえか。流行の病気があるからって心配しすぎだよ!そんな俺みたいに床に落ちたもん食って腹強くさせりゃあ平気なんだよ!俺はわざとゆっくり歩いて教室へもどる。

 やけに廊下に人がいるなぁ。と思ったら、教室に入るなり驚いた。そこには襟に赤い大きなリボンを揺らしながら、緑色の落ち着いた色のワンピースの上にフリルのついたエプロンを着ているメイドが数名いて、豪華な食事を皿に盛っていた。

「小山、せっかく保健室行ってきてもらったけど不要になったわ。おつかれ。」

頼んだ野郎が言ってきた。すべてこのメイドがやってくれてるのか?そこの廊下にいたあいつらは野次馬だったか!俺も他クラスだったらその一人になってたかもな。それにしてもすげえ。今日の献立は、ワカメご飯に豆の煮物。それに普通の牛乳だったよな?これはなんだい。ミネストローネか…?わかんないけど赤いスープにでかい肉。サラダもある。小さいフランスパンの横にフルーツポンチの豪華バージョンみたいなやつが小さな皿にちょこんと添えてある!飲み物も牛乳は牛乳だが、すこしジャムっぽい物でとろみがつけてある。

「すごいだろ、神崎さんちがつくってくれたんだとよ。」

とか先生にいわれるなんて俺はきっとすごいアホ面をしていたんだろうな。でも周りみてもみんなアホ面ならべてんじゃねーかよ。そら驚くよな。先生も驚くだろ。

 給食が全員にいきわたるとメイドさん達が神崎さんの所まで来てなにか丁寧に挨拶をして帰っていく。すっげぇ。こんなのドラマとかでしか見たことねぇよ・・・。

「すみません。時間の関係で職員室とこのクラス分しか作れませんでした。この料理は家からこの学校、クラスへの挨拶がわりです。どうぞ皆さん召し上がってください。」

ワァッと歓声がわき、すぐさま給食に食いつくクラスメイトと俺。見た目だけでなく、味も絶品という最強の料理なんてうちの収入じゃ一生無理だと思ってたぜ!この料理に500円出してもおつりが帰ってくるなんて考えられん!どんだけ金持ちなんだよ神崎さん!

 日直のごちそうさまの挨拶で各自食器を片付けるが、それ以外はすべてさっきのメイドさんがやってくれた。周りにはもう「すっげ!」とか「感動」とかそういう系の言葉しか聞こえてこない。

 たかが挨拶だろ!?こんなにしてくれるなんて思ってもいなかった。

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