Ave-Maria
えーっと、18禁ではないんですが少々刺激的なところがありますので苦手な方ごめんなさい
「あァ」
かすれた感嘆みたいな喘ぎ声が軋む骨とベッドに共鳴する。
部屋は薄暗く青銀の粒子が浮遊する、深夜3時。この部屋は鉄筋コンクリートのマンションだから、どんなに声を出しても良いのだけれど、彼はあたしの声を消す様に大音量で音楽をかけていた。音を奏でるのは彼が一目惚れして買ってきた古い蓄音機で、ぶつりぶつりと音飛びするレコードが高速回転する。
最早騒音云々の問題ではなく、あたしの縋るような喘ぎ声を聞くと彼は胸くそが悪くなるらしく、その対策にしかすぎなかった。
流れているのはアヴェ・マリアだった。
A-----ve.Mari---ii--a
伸びやかなソプラノの歌声の奥で、彼の唇が動くのが解る。
美しく天使のような顔をした金髪の少年。彼はその物憂げな深層の美少年の顔の奥にサディストの悪魔の顔を持っていて、けれどもその悪魔は快楽に身を明け渡したあたしに極上の快楽を与えてくれる。
彼の言った言葉がレコードにかき消されて聞こえず、少しだけ首を傾げたら容赦なく張り手が頬に飛んできた。
がん、と消して優しくない音は頭蓋骨に反響して耳の奥から聞こえた。
叩かれた頬は熱くなって、たたかれる準備をまるでしていなかったので咥内が切れて喉の奥まで錆びた味が広がる。
頬を自らの手で押さえる間もなく、彼の白くて繊細な手指があたしの髪をつかんで(ぶちぶち、と不吉な音がしたから結構抜けたに違いない)彼の口元まであたしの耳を持っていってくれる。
「足、舐めろっつったんだよ」
「え、」
彼の性器を舐めた事は幾度となくあったが、足を舐めたことなんて無い。
一体どういう風の吹き回しだろう。
彼の真意が掴めず、その顔を伺っていると、早くしろ、とばかりにまた頬を力加減なく張られた。
これは快楽を伴わない、単なる服従なのでは無いか?
思いはしたが、これ以上叩かれたら自分の血の飲み過ぎで腹が破裂してしまう。
そう思ってこわごわ、彼の右足の甲に舌を這わせた。
少年らしい筋張った白い足は指先がわずかに桃色の、綺麗な裸足だった。
ぬろ、と線を引くように舐めると、僅かな、光源が何処ともしれない光に照らされてそこが艶めかしく乱反射する。
その自分の唾液で引かれたラインに口づけをすると、彼はあたしの前髪をつかんで無理矢理顔を上げさせた。A-----ve-Mari---ii--a
素直に顔をあげれば、そこにあるのは、あたしの“ご主人様”では無く“独裁者”の顔だった。
自分でも、表情がゆがむのがわかる。
しかし彼が再び口を開きかけたので、今度は聞きのがさないようにしっかりと、薄くて桃色の唇が動くのを見つめる。
その意志を違えぬ様。
「 」
「、」
それはあたしの見間違いか、若しくは願望による都合の良い解釈ではないのだけれど。
A-----ve_Mari---ii--a-----
相変わらず音飛びしながら流れ続ける音楽。
その音量は涙で掠れる視界と共に、がむしゃらに湧き出る恋心にフェイドアウトしていった。
無我夢中で彼の裸足をしゃぶる。
指間に舌を潜り込ませ、下品な水音をたてて。
あぁ
あァ
神様。
彼が独裁者であることであたしにその言葉を向けてくれるのなら、何でもかまわない
どうかこの想いを罪になさらぬ様。
深夜の空気は音楽によって胎動し、あたしの裸に優しく纏いついた。
A-----ve.Mari---ii--a----…
【END】
1時間くらいでさらっと書いたやつなんであまり深い意味はないんですが……アヴェ・マリアのスペルミスがありましたらすみません