1匹目 訂正、美少女は三次元にもいたようです(1)
今日から俺は晴れて高校生になる。
とはいえ俺が入る高校はがっつり地元なので新入生のほとんどが顔見知りだ。
ほぼ中学の延長と言って差し支えあるまい。
偏差値はそこそこで進学率も悪くはない、そしてなにより家から遠くない。
まぁ学校選びの基準なんてものは男子は距離、女子は制服ってのがよくある考え方だろう。
その例外になることなく家から大した距離もない、学校までの道程を歩いていると、 皆大好き我らが正義のマスコット動物、猫が道の脇にいた。
それも対象的に真っ黒な猫と真っ白な猫の2匹だ。
これは珍しい。
名前はレンかな、いや他意はない。
これはせっかくだし写メに収めるしかあるまい。
そう思い携帯を取り出そうとポケットに手を入れると、なにかされると思ったのか猫が移動を始めてしまった。
まぁ幸いなことに猫はのんびりと歩いて行っただけで大した移動もせず、すぐそこで腰を落ち着けていた。
撮るなら今だな。
そう思った俺はゆっくりと猫との距離を詰める。
そしてカメラのピントがバッチリ合ったというタイミングで急に2匹が別々の方向へ走り出したのだ。
「えぇっ!マジか!?」
今思えばここで猫を諦めて学校に向かってればこの数分後に交番に連れて行かれずに済んでいたように思う。
だがしかし、俺には未来を見通せるような超能力みたいな力はないし、それにこの時の俺は、猫を追うと決めて追った。
なら最後までそれを貫こうと思ったのだ。
たかだか猫のためになにを真剣になってんだ、とか思われるかもしれないがそれが俺のポリシーなのだ。
一度決めたならそれを貫き通す。それに今日は入学式、高校生活の初日からポリシーを曲げるのはなんか出だしから躓いてるような気がして嫌だ。
入学式を晴れやかな気持ちで迎えるためにも走って行ったうち1匹を俺は追うことにした・・・
とまぁ、追ってみたはいいものの、かなり早い段階で俺は猫を見失っていた。
いやだってレンってばすげぇ逃げんだもん。
俺の何がそんな嫌なの?俺はロリコンじゃないよ?って説明しようかと思うくらい本気で逃げてくんだもん。
ちょっと諦めようかなとか心が挫けそうになってとぼとぼ歩いていると
「いた」
ちょうど通学路に道を戻そうと角を曲がったところで気持ちよさそうに寝っ転がっている黒猫。
「ふっ、ついに見つけたぞ。散々振りまわしてくれたがついに年貢の納め時がきたようだな。」
このチャンスを無駄にはできない!
「これで終いだ!ファイナルフラーーーー」
「遅刻するーーーーっ!」
「あべしっ!?」
俺はシャッターを押す前に何者かに吹っ飛ばされた。というよりぶつかられた。
ある意味全部言い終わる前にぶつかられたのはいいタイミングだったかもとか思いながら、とりあえず体を起こしてぶつかってきたであろう犯人の方に顔を向けると
「・・・」
正直相手を見るまでは文句の一つでも言ってやろうかとか思っていたんだが・・・うん、何事も争いはよくない。
それというのも俺にぶつかったと思われる相手は一言で言うなら、えらく可愛い女の子であった。
ちょうど肩くらいまで伸びた艶やかな白い髪、さっきの猫にも負けないくらいのくりっとした愛らしい赤い瞳、すらっと伸びた健康的な脚、そしてなによりニーソとスカートの素晴らしい組み合わせ!
俺と同じ学校の制服を着てるところから彼女も新入生で間違いないだろう。
それにしても・・・今まで知りあったどの女の子とも違う、というより人種からして違うんじゃないかってくらいパーツが整い過ぎている。
「いたたた・・・もう、一体なんなのよ」
どうやら向こうは俺とぶつかって体のどこかを打ったようだ。
普通なら相手を心配するなり気遣うなりするべきなんだろうが今の俺はそれどころではない。
いや、決して理想の出会い方をしたとか思って感動してるわけではないですよ?そもそもこの子はトースト咥えてないし。
とまぁ俺がある理由から相手の子に熱烈な視線を浴びせていると、向こうもこちらに目線をよこして
「ちょっとあんた。人にぶつかっておいて謝罪の一つもないわけ?」
「ごちそうさまです」
「はぁ?なんでごちそう・・さ・・ま・・・っ!?」
どうやらこのお嬢さんはようやく自分のあられもないお姿に気がついたようだ。
おそらくぶつかった拍子だと思うが、なんと目の前のお嬢さんのスカートが捲れあがって、まぁその・・・今の状況と全く関係ないけど白は世界をも救える偉大な色だと思わないかい?
映像としてこの光景をお届けできないのが残念だが、健康的な男子諸君ならばこの状況をごちそうさまと言わずしてなんと言えようかという俺の意見に賛同してもらえる事と思う。
いや、むしろいただきますの方が正解だったのか?
やはり言い直すべきかどうか悩みつつ、顔を真っ赤にしながらスカートを直している彼女のいじらしい姿を楽しんでいると
「ちょっとそこの変態」
失敬な、さすがに紳士だと言い張るつもりはないが変態のつもりはない。
むしろあんなサービスカットを無視する方が相手にも失礼になる。
と、目の前の彼女に小一時間話をしようかと考えたがやめた。
なぜなら彼女の手にはカメラモードのままの俺の携帯が握られて・・・いや、今にも逆パカされそうになっていたからだ。
「待ってくれ。冷静に話し合おうじゃないか」
「変態との話し合いに応じる気はないわ。ひ、人の、ぱぱパンツを覗いた上に、と、盗撮までしようとするなんて!」
「いやそれは誤解というやつで・・・てかここまで本人に気づかれてたら盗撮といううよりやらせ・・・」
「や、ややヤらせろですって!?」
「言ってないからね!?」
いかん、状況が状況だけに彼女はかなりテンパッているようだ。
俺も全くもって平静というわけでもないが。
しかしここは俺の携帯のため、そして俺の心がいかに君のスカートの中に身につけられている代物より純白かということを理解してもらうためにもとことんまで話し合わなければ。
まずは彼女を落ち着けてなんとかもう一度あの魅惑の三角地帯を拝めないもんかなぁとか考えているとふいに後ろから声をかけられた。
「君、ちょっと交番まで来てもらえるでありますか?」