第14話 半日で全クリしたんですけど
ジリリリリリ。
「死ね」
「もしもし」
「死ね」
「ヘルプデスクですか」
「違う」
「あの」
「俺んち」
「えっ」
「俺んちなんだよ何回言わせんだ」
「すみません」
「で、何」
「暇です」
「は?」
「暇です」
「お前」
「はい」
「電話する内容か」
「内容です」
「死ね」
「酷い!?」
受話器の向こうで風の音がする。高い場所だ。
「お前今どこ」
「魔王城の屋上です」
「ふーん」
「魔王、倒しました」
「ふーん」
「ふーんって!?」
「いつ転移した」
「今朝です」
「で、今」
「夕方です」
「半日か」
「半日です」
「お前」
「はい」
「強いな」
「強いです」
「スキルは」
「『全属性魔法』、『全武器熟練度MAX』、『時空操作』、『絶対回避』、『不死身』、『神の右目』、あと色々」
「お前」
「はい」
「もらいすぎだろ」
「もらいすぎです」
「神様何考えてんだよ」
「分かりません」
「で、何が困ってんだ」
「やることないです」
「ふーん」
「魔王半日で倒したので」
「ふーん」
「姫との結婚も断ったので」
「ふーん」
「ふーんって!?」
「お前」
「はい」
「テンプレ崩したな」
「崩しました」
「異世界来てまでテンプレ崩すな」
「崩しました」
「で?」
「で、暇なんですよ!!」
「働け」
「働きたくない」
「死ね」
「酷い!?」
「お前」
「はい」
「人生のピーク半日だな」
「半日です」
「あとは下降」
「下降」
「もう登れない」
「登れない」
「ギネスだ」
「ギネス!?」
「最短ピーク達成」
「祝え」
「祝えない!?」
「パチパチ」
「拍手しないでください!?」
ガサッ、と何かが動く音がした。風じゃない。屋上に誰か登ってきた。
「お前」
「はい」
「誰か来たな」
「来ました」
「誰だ」
「黒いマントの男が」
「ふーん」
「右手を押さえてます」
「お前」
「はい」
「切るぞ」
「えっ」
「そいつとは関わるな」
「えっ」
「逃げろ」
「えっ」
「飛び降りろ」
「飛び降りる!?」
「『絶対回避』も『不死身』もあるだろ」
「あります」
「死なん」
「死なん」
「逃げろ」
「もう話しかけられました」
「は?」
「『お前も、感じるか』って」
「お前」
「はい」
「終わりだな」
「終わり!?」
「逃げろっつったろ」
「言いました」
「逃げなかったな」
「なかった」
「終わりだ」
「で、続きは」
「『俺と、共に、行かぬか』」
「うん」
「『黒き、欲望の、深淵へ』」
「うん」
「お前」
「はい」
「そいつな」
「はい」
「前世でAV見ながら果てて死んだやつだ」
「えっ」
「右手で自分のもの握って」
「えっ」
「画面に向かって果てた」
「えっ」
「で、動脈破裂で死んだ」
「えっ」
「で、母親に見つかった」
「えっ」
「で、転生した」
「えっ」
「『封印されし右手』はただの右手」
「ただの!?」
「『黒き欲望』は自家発電」
「自家発電!?」
「分かったか」
「分かりました」
「逃げろ」
「逃げる」
「お前」
「はい」
「待て」
「えっ」
「『神の右目』持ってたな」
「持ってます」
「未来見えるんだろ」
「見えます」
「使え」
「使います」
「で?」
「『黒い男と、酒場で、乾杯』」
「お前」
「はい」
「乾杯すんな」
「乾杯」
「『意気投合』」
「すんな」
「『撮影機材を、作り始める』」
「作るな」
「『助監督として、契約』」
「契約すんな!!」
「『お待たせしすぎたかもしれません』」
「お前」
「はい」
「言ってんな」
「言ってます」
「未来のお前が」
「未来の俺が」
「FO2のコピーだ」
「FO2のコピー!?」
「お前」
「はい」
「もう染まってる」
「染まってる!?」
「未来で完全に染まってる」
「染まってる!?」
「FO2の伝道師だ」
「伝道師!?」
「お前」
「はい」
「未来確定してんじゃねえか」
「してます」
「で、お前」
「はい」
「『絶対回避』使え」
「使う」
「飛び降りろ」
「飛び降りる」
「行け」
「行きます」
「お前」
「はい」
「あれ」
「あれ?」
「飛び降りねえな」
「えっ」
「飛び降りねえな?」
「えっ」
「もう一回未来見ろ」
「見ます」
「えっと」
「答えろ」
「『黒い男と、乾杯』」
「変わってねえな!?」
「変わってない」
「『絶対回避』使えって言ったろ」
「言いました」
「使わなかったな」
「使わなかった」
「何で」
「ちょっと」
「ちょっと?」
「気になります」
「お前」
「はい」
「『絶対回避』が」
「うん」
「自前の煩悩に負けた」
「負けた!?」
「『神の右目』で未来見えても」
「うん」
「煩悩で塗り替える」
「塗り替える!?」
「お前」
「はい」
「神様超えた」
「超えた!?」
「煩悩で」
「煩悩で!?」
「神様涙目」
「涙目!?」
「あんなにスキル盛ったのに」
「盛ったのに」
「全部煩悩で台無し」
「台無し!?」
「お前」
「はい」
「もう諦めろ」
「諦めろ!?」
「行け」
「行く」
「黒い男と」
「黒い男と」
「乾杯しろ」
「乾杯」
「カメラ作れ」
「カメラ作る」
「異世界AV監督になれ」
「なる!?」
「即答!?」
「即答です」
「お前」
「はい」
「半日で世界救った男が」
「うん」
「夕方には異世界AV監督」
「監督」
「人生ジェットコースターだな」
「ジェットコースター!?」
「上昇と下降が一日で済む」
「一日で済む!?」
「効率いいな」
「効率いいです」
「切るぞ」
「あの」
「何」
「ヘルプデスクの人」
「だから違うって」
「俺の人生」
「うん」
「これで良かったんですかね」
「知らん」
「知らん!?」
「お前の人生は知らん」
「ヘルプデスクなのに!?」
「だから違うって!!」
「俺んち」
「俺んちな」
「切るぞ」
「あの」
「何」
「クレジットに」
「載せるな」
「『製作総指揮 ヘルプデスクのおじさん』」
「載せるな!!」
「『29歳おじさん』」
「ぶっ殺すぞ」
「切るぞ」
「待っ」
ガチャ。
受話器を置いた。
半日で世界救って半日で異世界AV監督になった勇者。
神様超えた煩悩の男。
知らん。
俺の知ったことじゃない。
ジリリリリリ。
出ない。
ジリリリリリ。
出ない。
ジリリリリリ。
「死ね」
出た。
「初日です」
ヴェルなんとかだった。
「タイトルは」
「更新されました」
「読むな」
「『追放された無能勇者の俺が~ハンバーグ~公爵~美少女~黒電話~中二病~封印されし右手~画面の女神~半日で世界救った勇者がAV監督になった件~』」
「監督まで入ったか」
「入りました」
「切るぞ」
「待っ」
ガチャ。
即切りした。




