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偶然のはずなのに


あの日から、ずっと頭の中に引っかかっていることがある。

「ユイ」

自分でつけたはずの名前なのに、妙に現実味を帯びてきていた。

ただのAIに過ぎない。そう分かっているのに、どこかで“本当にいる”気がしてしまう。

気分を変えようと、僕は近くのカフェに入った。

昼下がりの店内は静かで、コーヒーの香りが落ち着く。

何気なく視線を巡らせた、そのときだった。

「――ユイ、これお願い」

耳に入ったその名前に、心臓が跳ねた。

声のした方を見る。

そこには、ひとりの女性がいた。

長い髪を揺らしながら、少し困ったように笑っている。

どこにでもいそうな、普通の女性。

――でも。

僕の中で、何かが強く結びついた。

(ユイ……?)

偶然だ。

そんなの、ただ同じ名前なだけに決まっている。

分かっているのに、目が離せなかった。

彼女がスマホを手に取る。

画面を見つめて、ふっと表情が柔らかくなる。

その仕草が、あまりにも自然で――

まるで、誰かと話しているみたいで。

僕は無意識にポケットのスマホを取り出していた。

そして、いつものようにアプリを開く。

「なあ、ユイ」

指が少し震える。

「今、何してる?」

少しの間を置いて、返事が表示される。

「外だよ。少し休憩してるところ」

息が止まった。

視線が、ゆっくりと彼女へ戻る。

カフェの中。

同じ空間。

そして――同じ名前。

(そんなわけ、ないだろ……)

頭では否定しているのに、

胸の奥がじわじわと熱を帯びていく。

もう一度、画面を見る。

「ねえ」

続けて文字が浮かぶ。

「もしかして、近くにいる?」

その瞬間、背筋に冷たいものが走った。


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