肩(ショルダー)を並べる者はなし
私立 骸骨掌学園の全校集会は、他校のそれとは一線を画している。 壇上に立つのは、校長ではなく学園最強の5人『五体満足』の面々。そして全校生徒は、彼らが発する圧倒的な「骨気」に当てられ、整列しているだけで冷や汗を流していた。
「……暑苦しいな。早く終わらないかな」
列の末端で、僕、肘鉄男はあくびを噛み殺していた。 隣では、幼馴染の神代エルが「見てなさい鉄男、今日は五体満足から重大発表があるんだから」と、僕のこめかみに肘を押し当てながら興奮している。痛い。
だが、静寂は唐突に破られた。
「――おい。貴様が、例の『名前だけで特待生枠を奪った』という不届き者か」
重低音の効いた声と共に、人垣が割れる。 現れたのは、制服の肩周りを改造して特注のパッドを仕込んだ巨漢――ショルダー特待生、肩守大吾だった。
「その細い腕。その貧弱な体格。……笑わせる。我が『肩』の突進を喰らえば、一瞬で消し飛ぶゴミがエルボー特待生だと?」
肩守がゆっくりと肩を回すと、ゴリゴリと岩が削れるような音が周囲に響いた。
「あ、いや……僕も別に好きで特待生になったわけじゃないんで、枠なら返しますけど」 「逃がさん。貴様の不相応な『肘』、ここでへし折ってくれる!」
全校生徒の視線が集中する。 「五体満足」のメンバーたちも、興味深げに壇上から見下ろしている。
「死ねッ! 『剛肩・デストラクション』!!」
肩守が地を蹴った。 体重120キロ超の巨体が、文字通り砲弾となって僕に肉薄する。 避ける? 無理だ。全校生徒が密集するこの場で避ければ、背後の生徒たちが文字通り「肉片」になる。
(……仕方ない。一回だけだぞ)
僕は溜息をつきながら、右足を引き、腰を落とした。 そして、サポーターに包まれた右肘を、ただ最短距離で「前に出した」。
狙うのは相手の巨体ではない。 突進してくる「肩」と「鎖骨」が交差する、唯一の支点。
――ドォォォォォォォッ!!
衝撃。 だが、吹っ飛んだのは僕ではなかった。
「……ぐ、あああぁぁぁっ!?」
絶叫したのは、肩守の方だった。 僕の肘は、彼の鉄板のような肩の筋肉を貫通し、その「芯」を完璧に捉えていた。 運動エネルギーのすべてが彼自身の肩に跳ね返り、肩守の巨体は駒のように回転しながら、体育館の壁まで吹き飛んでいった。
「…………え?」
静まり返る体育館。 壁にめり込んだ肩守は、白目を剥いてピクピクと痙攣している。
「……あ、やりすぎたかな」
僕が慌てて肘を引っ込めると、隣で固まっていたエルが、顔を真っ赤にして僕の肩を掴んだ。
「……今の! 今のエルボー、何よ鉄男! 全然『こめかみ』じゃなかったけど……っ! 私、今、初めて自分の『肘』が濡れた気がするわ!!」 「神代さん、言葉を選んで。あと公衆の面前で肘を押し付けないで」
壇上では、風紀委員長の首藤凛が鋭い眼光を僕に向けていた。
「……肘鉄男。貴様の『骨』、見せてもらうわよ」
静かな学園生活を目指していた僕の野望は、入学初日にして、その「肩」と共に崩れ去った。
【第1話 Tips】
■ 新登場キャラクター
肘 鉄男
部位: エルボー(補欠)
特徴: 平穏を愛するが、肘だけが異常に硬い。
神代 エル
部位: エルボー(筆頭)
特徴: 鉄男の幼馴染。愛情表現が「こめかみへのエルボー」という狂犬ヒロイン。
肩守 大吾
部位: ショルダー(肩)特待生
特徴: ラグビー部主将。肩幅と自信が異常に広い。
■ 用語・必殺技
私立 骸骨掌学園: 部位のスペシャリストを育てる武闘派学園。
エルボー特待生: 肘の威力と美しさを認められた精鋭。
剛肩・デストラクション: 肩守の必殺タックル。当たれば骨が粉砕される。




