蒼と黒
何もないとは言えない。無ではない。何かは存在しているからこれほどの黒に囲まれているのだろう。
深い蒼は密度を増して、漆黒となっている。
いや、漆黒に感ずるが。確かに青いのだ。
密度の増した青は、黒く感じるものなのか。そんなことに納得しながら、青から黒のグラデーションの美しさのなか佇む。私は浮遊しているのか。私の輪郭が見えない。
いくらほどの時間が経ったであろう。
確かに私以外の存在がここにある。指となった私の一部は、他の存在の同じ部分と触れている。向き合って、対を描くように。気付くと間もなく始まるイマジネーション。
私以外の誰かの低い声が、静かに私に響いていく。落ち着いて。ひとことずつ。
「二人向き合って」
「拡がるよ」
向き合って、右腕を後ろへ引き上げながら、私は後ろへと下がっていく。好奇心でいっぱいの心は弾んでいた。それは歩くよりも素早く動いた。踏みしめる土などない。私の重心を後ろに下げる感覚を意識したなら、自然と私は移動した。勢いよくスムーズに移動を始めたら、二次関数的な曲線を描く減速度で止まっていく。離れた指と指の間には、暗く光る線が現れていた。
「線が出てきたね」
下に少し弧を描きながら暗く深く光る青い線。私はしばらくその鈍い光を眺めていた。
線から生まれたのだろう何者かが、その線の真ん中を引っ張り始める。2つの何者かが、上へと下へと向かい合って引っ張っていく。それは天使であるとぼんやりと気付く。
膨らんだなにかはやがて立体を描き、空間となった。
宇宙の始まり。
何万光年の時を経て、今の宇宙は形作られていったのだろうか。
いまはただ、深き蒼と漆黒のグラデーションが美しい。
原作:「蒼と黒」 アマネハルカnoteにて公開




