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15話:ガラックスケータイ

「へー? よかったな三人一緒な部屋になって」

「ぼくは疑問がある。 やっぱり追加の家具は魔法でポンっと送られてきたの?」


「いいえ」団子のクシを横にしながらマイニーが笑った。

「ベッドは今日届く予定だったみたいだけど、断ってきたわ」

「ほら、ミヤビコちゃんほんとの姿だと、私かマイニーの枕元で眠れるから」


 周りに聞こえないよう、サラちゃんが声をひそめて、口元のタレを拭きながら微笑む。


 休日二日目の今日はアーチタウン観光だ。


 ミヤビコちゃんは人形族の国を出たことがないみたいだし、ぼくらも友達と出かけるなんて初めてだから今日は楽しむぞ〜。


「クックック。 昨日はベッドをくっつけて三人で寝っちゃったのよ。 わたしが川の字の真ん中よ!」

「ねー! わたしとマイニーちゃんは寝相いいほうなんだけど、ミヤビコちゃんは」

「ククッ、それ以上はプライバシーよ」


 秘密を共有したのもあるのかな、あっとゆーまに仲良くなったみたいだ。女子部屋は華やかそうだなー。それに顔は見えないけど、ミヤビコちゃんがすごく楽しそう。


「ククッ、プライバシーといえば聞いて。マイニーが深夜にわたしのカラクリ人形体(カラダ)をじっと見つめてたわ」


 ぶふ――マイニーがアンコを盛大に吹いた。思わずぼくとヒョンも吹いた。


「気づいてたのね!? じゃなくて! あれはその、イチヨ様のお作りになられた魔導ギアを研究したい一心で」


「ええ。 クククッ。触れるか触れまいか、ねっとりとした目つきで手をわきわきさせてたわね」


「変態だ」「変態だな」


 ぼくとヒョンの頭にブックの角⋯⋯がさすがに落とせなかったのか、顔を真っ赤にしてキョロキョロすると、猛ダッシュで近くの店のノレンをくぐるマイニーだが。


「ま、魔導ギアショップだわ!ミヤビコちゃん、ここの魔導ギアはいいわよ!」


「話そらした先が魔導ギアかよ」「もう呪われてるね」


 苦笑いを浮かべるサラちゃんたちをつれて、ぼくとヒョンはお馴染みの店に入った。


「お、いらっしゃいお嬢さん方! ん?そこのピンク髪の子は顔見知りの魔導ギアマニアによく似ているが妹さんかい?」


「それより新入荷はないかしら?」


 開口一番のセリフも同じだ⋯?と首をかしげるおじさん。だがしかし、


「今日はメイクスから新商品が届いてるぜっ!」


 さすが商売人、疑問より営業を取った。


「魔導ギアの街から⁉︎」

「ああ、メイクスでも大ヒットの商品で在庫は少ないからな、早めの購入をオススメするぜ!」


 棚のポップは【数量限定! スペシャル通信魔導ギア! ガラックスケータイ!】って飾られてる。


「通称ガラケーっていってな! こいつを持った同士で文章のやりとりができるんだ」

「手紙のようなものかしら?」

「おう!ある程度の遠距離間で送り合いっこできる便利アイテムだぜ!」


 遠距離に手紙を送るギア?この細長いハコみたいのが?


「ククッ、人形族の魔法から発想を得たのかな?」

「人形族には似たよーな魔法があるの?」


 女子二人も興味津々みたい。


「寮は男女別だから便利そうだね〜」

「シルが迷子になったときとか探すのが楽になるな?」

「すぐ迷子になるのはヒョンじゃん」

「オレはヤンチャだから道をハズレんのが好きなだけだ」


 なんて言ってると、サラちゃんがカウンターに顔を乗せた。


「でもこれ⋯⋯お高いんでしょう?」

「それがなんといまなら一台三万イェン! これはイチヨ様が発明され、ガーディアンズと族長様たちが所持する【キャンディーウォッチ】っつーギアの簡易版なんだがな!それでも本来はかなり高額なんだ!


 そこで、最新魔導ギアを学生たちが触れるように、って差額は暗黒皇帝が負担してくださるんだ!」


 だから学生割引でお買い得だぞ!とおじさん。


 それでもお高い⋯⋯とサラちゃん。


「買うわ!」そのとき、マイニーがポケットから札束をカウンターに叩きつけた。


「おいマイニー! その千イェン札90枚はギルドで稼いだ全額じゃねえか!」

「そうだよ! ぼくらの全財産だよっ!?」


「だまらっしゃい! もとはといえばあんたら二人がバカみたいに浪費するから私が隠しておいた素材を売り払ったお金じゃないの!

 

 文句いわれる筋合いはないわよ」


 宿を追い出された日、ギルドで換金していたお金(一万イェン札九枚より束の方がハクがつくとヒョン)なんだけど、グウの音も出ませんわ!


「九万イェンってことは三台お買い上げだな? 運がいいな嬢ちゃん! さっき赤髪の一年生ボウズが買ってったから残りちょーど三台だ!


 まいどあり!」


「すご〜い。 即決なんてマイニーちゃん大人だっ!」

「クックック。 やはりタダモノじゃないねっ」


「それほどでもないわ⋯ってあっ。サラちゃんだったのね」


 カウンターに顔を乗せたまま上目遣いで見る視線に、マイニーがびっくりした顔でのけぞった。

 ようやくいつもとはメンツが違うことを思い出したらしい。とゆーかいままでなんだと思ってたの?座敷わらし?


「シルがふざけてるのかと⋯⋯ごめんなさいね私たちだけ」


「いいよいいよ、自分で頑張って買う!」「たまに使わせて欲しいかもだけどっ」


 ありがとう、と微笑むマイニーに、おじさんがガラケーの操作方法を伝授してくれるらしい。


「お互いに魔力を登録して⋯⋯自分のガラケーに魔力をこめる」

「おお! なんか浮かんだ!」


 ぼくらも真似してやると、ガラケーの小さな画面が空中に表示された。


「そして、入力したい内容を考えながら魔力を流して、送信ボタンを押す」

「おお! なんかブルっと振動したぜ!」


 ヒョンのガラケーから宙に浮かぶ半透明なディスプレイに表示される、〈テスト送信〉の文字⋯。


 なにこれ、もう、わっくわくが止まらなくなってきたかも⋯!


〈ヒョン!届いてる?)〈おう!届いてる届いてる!〉〈マイニーってケチなくせにギアとなると金銭感覚バカになるよね?〉〈それな! オレらが浪費したっつってるけどバカみてぇにギアと本買い込んでたのは誰だっつーのな! ケチ女め!〉


「見えてるわよ」


 ヒョンとぼくの頭にブックの角が落ちた。


「はっは! ボウズども、ガラケーの横にボタンがついてるだろ? それ押せばディスプレイが宙に表示されなくなるぞ?」


「あっ、切り替えられるんだ⋯! 先に教えて欲しかった⋯」

「よく出来てるわね。けど、これが普及すると陰湿な世の中になりそうね」


「まあな! だからイチヨ様たちはキャンディーウォッチを普及させないんだろーな! あっちはさらに高性能らしいからな!」


 どうでもいいけど⋯⋯こんな大きな声で会話する人初めてかも、とミヤビコちゃんが耳元でぼそり。


 確かにワシードの騒がしさとは別タイプの声のデカさだもんね。


「メイクスにガラケーの技術提供するのも悩んだらしいぜ! ただ、世の発展を止めるわけにもいかねえってさ!」


 わっはっは間違いねえわな!とおじさん。うん、通りを挟んだ向こうのお店まで届いてそうな野太い笑い声だ。


「ま、なんでも使う人しだいだものね」


 マイニーとおじさんが何やら小難しいギア談義を始めた。これは長くなりそう。何分続くか、メッセージでヒョンと昼ごはんでも賭けてみよう。と画面を宙に表示すると、

 

「ねね、シルくん、よかったらちょっとだけ使わせてもらってもいい?」

「いいよ!」

「ヒョン。ククッ。 貸して」

「やだね!」


 ぼくとヒョンの返事が揃った。中身は正反対だけど。


「ありがとうっ!」「ククッ。 泣くわよ」


 いやあミヤビコちゃん、ヒョンからオモチャを取り上げるのは大変だよー。



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