止まってなんかいられない
「本当に学院に行って大丈夫なの?」
リオのお母さんが後ろで心配そうに聞いてきた。
「体調は大丈夫だよ! 学院の内容から後れを取りたくないの」
「リオ……」
リオのお母さんは、感心したような表情を浮かべている。
けれども、その中には、リオのことが心配という気持ちが感じられた。
何日かリオとして過ごして、わかったことがあった。
リオのお母さんはリオの状態に気付いていたのかもしれない。でも、リオが話さないし、何事もないように家で振る舞っているから聞けなかったのだろう。
考えれば考えるほど、この二人はすれ違っていたし、お互いに申し訳なさを感じていたのだろうな……。
制服に着替えながら、そんなことを思っていると、
「やっぱり、リオはなんでも似合うわね!」
リオのお母さんの嬉しそうな声が後ろから聞こえた。
「……そう? ……ありがとう…」
急に褒められたせいか、恥ずかしくなる。
それを見たリオのお母さんは幸せそうな表情で「ふふ」と笑うと、「馬車を準備したから一緒に下行くわね」と言って、リオのスクールバッグを持つとドアの前に立った。私を待っているのだろうか。
(リオのお母さんって……本当に淑女だな。)
すぐに駆け足で向かうと、「走ったら転ぶわよ」と声をかけられた。
「そんな子供じゃないよ?」
と言うと、
「何言ってるの。お母さんからしたら、リオはいつまでも子供よ!」
(やっぱり、いい家族だな……)
どちらともなく、笑いがこぼれて、幸せな気分で玄関まで降りたのだった。
◇◇◇◇◇◇
馬車に乗り込むと、リオのお母さんから「いってらっしゃい。体調が悪くなったら、帰ってきていいからね? 絶対に無理をしちゃダメよ!」と言われて、胸が温かくなった。
「うん! いってきます!」
そうして、馬車が動き出した。