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壊させなかった想い

 自分の部屋にあたしを置いて、いろいろと話してくれた。

 今日は練習で怒られたこと、今日はお父様に叩かれたこと、もうすぐ学園に通うこと。


 まだ十二歳だったレイナは、もう大人にも負けない知識と礼儀作法、教養、言葉遣い、舞踏をこなしていた。


 学園に通うけど、寮にそのまま入って、あたしを持って行きたい。

 ──そう、彼女は願った。


 でも、レイナがまだアメリアのことを思っていることに不満を思った父親は、花瓶(あたし)を処分しようとした。


 そのことにレイナはいち早く気付き、「この花瓶を壊したら……(わたくし)はもう、お父様の指示には従いません!」と父親に脅した。


 それが、彼女が初めて父親に意見を言ったことだった。


 その言葉に父親は()()あたしを処分するのを諦めた。

 ……けれど、花瓶(あたし)を処分すること自体は、やはり諦めていなかった。



◇◇◇◇◇◇



 あまりにも悲しい出来事に、涙がこぼれそうになる。けれど、それを必死に我慢した。


(……泣くのは家に帰ってからにしよう。レイナ嬢だって、この真相を知らないかもしれないのに、私だけ先に泣くのは違う気がする)


 それに、今はこの場を平和に納めて、ホームルームに繋げないと……。


 そう思ったところで、つり目の子が「信じられない……」と呟き、元通りになった花瓶に触れた。


 そして、元通りだということが、実感したのか。私に向かって歩いてきた。


「……本当にありがとう。この花瓶は、()()()()()()で……絶対に失いたくなかったの」


 と、私にだけ聞こえるような声で言った。


 ──やっぱり!

 思わず、息を飲む。


 花瓶の記憶で見たレイナ嬢とつり目の子になんとなく面影があったのだ。


(だったら、私もこのことを話さないと、いけないわね。レイナ嬢には、その権利がある)


「どういたしまして。その、レイナ嬢に話さないといけないことがあるの。昼休みか放課後に時間をくれないかしら?」


 私もレイナ嬢にだけ、聞こえる声で言う。


「……わかったわ」


 レイナ嬢はしばらく黙って目を伏せていたが──やがて、静かに頷いた。



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