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スカーレット ~青の護り手~  作者: 五五五 五
第三章 ~燃えて生きる~
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第92話 リアルブレイク

 逃走に転じた魔女を見て千里は指をパチンと鳴らした。

 もちろん、先ほど乗り物にしていたセラフを呼ぶためだ。

 だが、なにも起きない。

 見上げれば空には、まだ何体ものセラフが飛び回っていて、急降下を繰り返しては地上の騎士達と激闘を繰り広げていた。

 空からゆっくりと舞い降りてきた咲梨が怪訝な顔を向けてくる。


「セラフを操れるんじゃなかったの?」


 問いかけると千里は悲しげに首を横に振った。


「人がそんなに便利になれるわけ……ない」

「さっきやってたでしょ!?」


 繰り返して訊くと、千里は両腕を組んで唸った。


「うーん。さっきはノリでできたんだけど」

「ノリって……」

「なんとなくできそうだと思ったことは、だいたいできるんだけど、今回は疑ってしまったかもしれない」

「前から思ってたんだけど、あなたの特殊能力って一体どういうものなのよ?」


 呆れ返った顔で訊いてくる。


「生みの親の言によれば、物理法則を無視するとか、そういったあり得ないことを引き起こす力らしい。とりあえずわたしはリアルブレイクと名づけた」

「いや、名前はどうでもいいけど、物理法則を無視するって、それはもうオカルト……いや、魔法や異能自体がオカルトなんだけど……」


 呆れるのを通り越して咲梨は頭を抱えていた。。


「やっぱり、直接的で無骨な名前は受けが悪かったか。幻想能力(ファンタジア)などというファンシーな名前よりは良い気がしたのだが……」


 考え込んでいると、突然足下の地面から死体が起き上がってきて叫ぶ。


「お前ら、話し込んでる場合か! まだ戦いが続いてんじゃねーか!」

「カーライルくん!」


 咲梨が死体を見て驚きの声をあげる。


「さすがだ、ライライ。ゾンビになってまで世界の危機に立ち向かうとは、お前こそ騎士の鑑」

「ゾンビじゃねえし、ライライでもねえ! カーライル・ライルだ!」

「そんなことをわざわざ主張している場合か? まだ戦いが続いているんだぞ」

「お・ま・えは~~~~~~っ!」


 なにやら地団駄を踏んで悔しがりながらも、ライライ――カーライルは剣を片手に駈け出していった。

 キーア・ハールスの魔法をまともに食らって、マントは消し飛びプロテクターもボロボロだったが、本人は大きな外傷もなく元気そうだ。


「千里ちゃん、わたし達もいくわよ。まずは残りのセラフを片づけましょう」


 咲梨の言葉に従って千里も走り出した。

 全力で戦うのはもちろんのことだが、常に手加減して戦うというのも神経を磨り減らすらしく、咲梨は見るからに疲れた様子だったが、さすがは正義の味方を自称する部長だ。泣き言一つ言わずに魔法によって再び宙に舞い上がると、凄まじい砲撃を連発し始めた。

 カーライルと千里もそれぞれの得物を手にセラフを斬り刻んでいく。

 生き残りの敵は少なくなかったが、すでに戦いの趨勢は決している。

 ここでの戦いはもはや人類の勝利で揺るぎなかった。

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