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スカーレット ~青の護り手~  作者: 五五五 五
第二章 ~花と散る~
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第59話 闇夜の光

 夜の町中で笹木和人は途方に暮れていた。

 夜中に家を出た華実に気づき、自転車で後を()けたまでは良かったが、彼女のあまりの速さにあっという間に振り切られてしまい、気がつけば見知らぬ場所で息を切らせているという有様だ。


「か、格好悪いな。これでも現役野球部員なのに……」


 昔から華実がバカみたいに運動神経が良いのは知っていたが、高校になってまで歯が立たないとは思わなかった。ましてや野球部で毎日鍛えている身体だ。体力には自信がある。


「いや、自信があった(・・・)だな。過去形だ」


 呟いてガックリとうなだれつつ、とりあえず家に帰るために周囲を見回した。

 電灯の少ない田舎道。建ち並ぶ民家は、ほとんどが木造建築で灯りが点いている窓もまばらだ。道の片側は完全に林になっていて、少しばかり気味が悪かったが、まさかお化けなどという非現実的なものが出てくることはないだろう。

 自分に言い聞かせてペダルを漕ごうとした瞬間、木々の合間に赤い光が灯った気がして、反射的にそちらを見た。

 見間違いではない。まるで闇夜に輝く物の怪の目のような光りが、ゆらゆらと揺れながら、こちらに近づいてくる。

 悲鳴をあげなかったのは、驚きのあまり喉がつかえてしまったからだ。

 慌てて逃げだそうとペダルを踏みしめるが、バランスを崩して転倒してしまう。

 もはや逃げ出すこともできずに恐怖で震えあがっていると、そいつはゆっくりと近づいてきて――バタッと倒れた。

 和人は弾かれたように我に返る。


「人間か!」


 それにしては奇妙な金属音が響いた気がしたが、かえってお化けではないと確信して駆け寄ると、倒れていた人影に声をかける。


「だ、大丈夫ですか!?」


 揺り起こそうとするが、その身体は奇妙に重く、しかも金属のように冷たかった。


「え……?」


 唖然とする和人の前で、そいつは地面に手を突くと、ゆっくりと上体を起こす。

 赤い瞳と紫がかった銀髪の機械人形(マシンドール)――ダリアが無言のまま彼の顔を覗き込んでいた。

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