卵かけご飯茶碗【WEB】
卵かけご飯茶碗
片割れの、欠けた夫婦茶碗が無造作に置かれている。
クオッ、コッコッコッコ……。
クオッ、コッコッコッコ……。
バサバサバサバサ! バサバサバサバサ!
クオッ! クオッ! クオッ!
コロン!
ほっかほか。
「おお! ピヨコ! 今日も調子いいな!」
炊き立てのほっかほかのご飯を、片割れの欠けた夫婦別れへともりもりと粒を重ねてゆく。
レシピはひみつだが、特製の出汁を加えたお醤油を米粒の頂きから遠慮なくブッ掛けてゆく。
ごくりと喉が鳴る。
米粒の頂きを特製のコッコちゃん柄の螺鈿細工の塗り箸でグリグリと米溜まりの窪みを整える。
「コッコ! 何時もあんがとな!」
跪くきコッコちゃんに両手をあわせて。
パン! パン! パン!
こくりと壱礼……。
「頂くぞ!」
クゥ~コッコッコッコ……。
瞬きもせずジッとわたしを見詰めるコッコ。
グワシと、ほっかほかのコッコちゃんの産み落としたばかりの卵を掴み取る。
数ヵ月に渡ってコッコちゃんにつっつかれ続けた傷後が痛々しい。
クゥ~~~~~コッコッコッコ……。
コンコン! コンコン!
クゥワパアっと乾いた音の後にヌチャルンともりもりの白身に盛り上がる艶っ艶の濃いオレンジ色のコッコちゃんのほっかほかの卵。
遠慮など微塵もなく艶っ艶のオレンジ色の黄身に塗りはをおっ立てて、トロロロリンと米粒の頂きよりかけ降り特製の出汁醤油と絡み合い、わたしの瞳の奥へと背徳の香りを漂わせてくる。
わたしは無我夢中で我を忘れて、グワシグワシグワシと特製コッコちゃん柄の螺鈿細工塗り箸でかっ込んでゆくのだ。
わたしは背徳の念を心に忍ばせながらも、かっ込む箸を止められないのだ。
何時も済まんコッコちゃん……。
グワシグワシグワシグワシグワシグワシ……
クゥ~~~~……コッコッコッココッコッコッコ……。
ジッと瞬きもせずに、わたしを見詰めるコッコちゃんが……。
クオッ! クオッ! クオッ!
バサバサ! バサバサバサバサ!
コロン! コロン!
ほっかほか。
クゥ~コッコッコッコ……。