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優しく滅べよ世界たち  作者: 虎太郎
1/5

世界崩壊の真実と嫌われ者 ①

「・・・お前らが、・・・お前らが」              


「・・・お前らが何をしたって、俺はお前らに何もしない」    

 *少年は燃え盛る家屋と理不尽の前で泣き叫び             


「この世界が優しく滅びるのを・・・」             


「お前たちの最後を、笑いながら見送ってやる!!!」       


 *この世界が滅びる事を願った・・・  


 

 ♦


「 やさしく滅べよ世界たち」                     


 ♦


「・・・ダメ。何度やっても」                 

 

 夜の埠頭で頭から足元までもをすっぽりと覆う、ローブ状の服を着た少女は、首を横に振る。暗闇に隠れ顔は見えないものの、その顔色は悪く、今までの努力、切実な思いが、全て否定されたような苦悶の表情を見せる。          


「この惑星ほしに、…命は芽吹かない」         


「どうして…どうしてなの…」             


 地面に両手をついた少女は、やりきれない想いから遠ざかるように、顔を俯かせると瞼を閉じた。少し震えるようにして俯いた顔には、光の当たらない暗闇のような影が宿ると、少女は瞳を潤ませるのだった。


「―――もういいだろ」                   


 不意に少女の後ろから男の声がすると、男は地面を眺める少女の肩を、優しく叩くのだった。

 男も全身を覆うようなフード付きのローブに身を包んでおり、顔はよく見えない。だが、口調と薄っすらと見える口元の歪みからわかるように、少女の言葉を無理やり否定するような口ぶりではなかった。むしろ振り返った少女が見た男の顔は、自分と同じような思いを抱えながらも、いつまでも叶わない願いに自分を悩ませたくないと、自らが悪役を演じ、自らの苦渋の決断で自身の願いを断ち切ったような感じさえするのだった。


 少女は男の顔を見た後に、再び肩を落とし項垂れる。


「お前は頑張ったよ。…でも、無理だったんだ」       


「・・・はい」                        


 少女の正面から男は微笑むと、男は再び少女の肩に優しく触れる。ただ、まだ引きずる思いがあるのか、少女は項垂れた顔をなかなか挙げることができなかった。

 男は少女に触れていた手をゆっくり離すと、踵を返し後ろを振り向く。


「俺はこの後、「プランB」を皆に提案する」          


「!!」                           


 男の言葉に少女は顔を無理やり上げると見開いた目で男を見つめる。


「…で、ですが!!」                   

「もういいだろ!!!! お前は頑張ったんだ!!」      


 少女の大きくなった声に、すぐに反応した男は、再び少女を振り返ると声を掛けた。振り向きざまに少女の肩に触れた両手も先程とは違い力強く、少女に寄せた顔には苦悶の表情とも取れるシワが浮かぶ。


「…もう無理なんだ。…もう、無理なんだよ」      


 男は少女に合わせた顔を少しだけ俯かせた。

 その表情は少女にとっては、やはり同じ想いを男が抱えているにも関わらず、憔悴した自分の為に苦渋の決断をしてくれているように見えてしまうのだった。

 少女はゆっくりと項垂れると鈍るような唇を上下させた。


「…は、…は、い」                 


 男に返答した少女は光の消えた瞳で地面を見つめると、動きを止めるのだった。


「お前はこの半年、この惑星の為に良くやってくれたよ」    

「…はい」


 少女に触れる男の両手は先程までとは違い握りしめる力が緩むと優しくも、暖かくも少女には思えてきてしまうのだった。


「この惑星ほしは滅びる。…仕方がなかったんだ」


 少女を見つめる男の顔も少し項垂れると、少女は自分と同じように男も自分が出した決断に対し、悲痛な胸のうちを秘めているように感じてしまうのだった。


「惑星の寿命だ。…今回は俺達にはどうしようもねーよ」  


 男は少女の前で両目の瞼を閉じると、ゆっくりと首を横に振った。


「…はい。…わかりました」


 少女は瞳を閉じると男の要求を飲むように自らの頭を下にゆっくりと下げたのだった。

 男は少女の返答に微笑みながら2度程頷くと、再び踵を返し後ろを

 振り向く。後ろを振り向いた男は、自分の右耳に右手で触れる。触れた男の耳につけた装置はアンテナのように伸びるとそれから数秒して男は口を開いた。


「ああ、俺だ」                       


 男は誰かと喋っているのか、何もない空間に独り言を呟く。口元には携帯電話のようなものなく。集音するような機器すら無い。ただ男は自身の耳にのみ指先で触れていた。


「皆を集めろ。本日付で俺からプランBを発令する!!」    


 男は誰かと会話しながら、自身の右腕を横に力強く振り払った。


「ああ。この惑星は…」                 


 男は夜空を眺めるように頭上を見上げた。


()()()()!!」                      

「……」                         


 この惑星の滅亡を力強く断言した男とは違い、男の発言にどこか悲しむような素振りを見せた少女の顔は歪む。

 ただ・・・

 誰もその顔をみることはできなかったのだった・・・         


 *男が決断した日を境に                      

 *人類の住むこの惑星「アーステラ」に

 *外宇宙生命体来訪の知らせと

 *その者たちが、この惑星を不当に

 *占領しようとしている報道が世界中に知れ渡ったのだった・・・


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