告白されました
お茶会が終わってお二人が帰った後、ナティルが食器の片づけなどをしてくれている間、わたくしはソファーに座ってシンヤ様の事を考えます。
わたくしと同じで特殊な称号を持っていらっしゃるシンヤ様。
その関係からか、神様の計らいによりお会いすることになりましたが、その後は円滑な関係を築いていると思っております。
定期的にお会いしておりますし、シンヤ様がお茶会にいらっしゃった時や、ダンジョンで一緒に食事を食べる時はいつもよりも楽しく感じるのも事実ですね。
けれども、それこそ愛しているのかと言われると、そんな事はないと申しますか、わからないのですよね。
シンヤ様にお会いできなくなってしまったら、とても寂しく感じてしまうでしょうけれども、他の親しい方と会えなくなってしまった時と違う感情かと言われれば、その時にならなければわかりませんもの。
それに、そんな事にはならない方がいいですよね。
シンヤ様は皆様に優しくしていらっしゃいますし、わたくしだけが特別に優しくされているというわけではないと思います。
けれども、そう言えば以前に考えなしに手を差し伸べると厄介なことになるし、自分は相手を駄目にする性格だから、親しくする人間はちゃんと考えているとおっしゃっていましたね。
相手を駄目にするというのはどういうことなのでしょうか?
テンマ様の事は依存のようなものをさせてしまったと後悔していらっしゃいましたけれども、テンマ様にとってシンヤ様はそれほどまでに重要な存在なのでしょう。
となると、やはりシャーレ様のしていることは無意味なのでは?
神殿に居た時に、悩み相談で依存についていくつかお話を聞きましたけれども、依存と言うものはなかなか治らないものですものね。
けれども、シンヤ様の代わりにシャーレ様がテンマ様の依存対象になればまた話は変わってくるかもしれません。
シンヤ様曰く、テンマ様は他人に認めて貰う事を心の底で望んでいるとのことですし、ずっと傍にいるシャーレ様にその対象が移ってもおかしくはありませんよね。
ただ、シャーレ様の場合自分では何もしないので、依存されているとわかれば、それこそテンマ様を使用人のようにこき使って養われることが当然だと思うのではないでしょうか?
それって、なんともうしますか不毛な関係に思えてしまいます。
そんな事を考えていると、シンヤ様からメッセージが届きました。
内容はこれから遊びに行ってもいいかというものでして、わたくしはすぐさま構わないとお返ししました。
「ちょっとシンヤ様をお迎えに行ってまいりますわね」
「お茶会を終えたばかりであろう?」
「ええ、ですけれどもこの時間ですし、何か大事なお話があるのかもしれません。せっかくですし、夕食を一緒に召し上がっていただくのもいいかもしれません」
「ふむ、タイミングがよいの」
「何かおっしゃいましたか?」
「なんでもない。気を付けて迎えに行くのじゃぞ」
「ええ、ありがとうございます」
わたくしはそう言いますと早速待ち合わせ場所の十一階層に向かいました。
そこにはシンヤ様が既にいらっしゃっていつも通りに笑顔でわたくしを出迎えてくださいます。
「シンヤ様、お待たせしました」
「急にごめんね」
「構いませんわ。このような時間ですし、折角でしたら一緒に夕食を如何でしょうか?」
「それは嬉しいお誘いだね」
その言葉にわたくしはシンヤ様の手を握ると、拠点に移動いたしました。
お茶会は先ほど終えてしまいましたのでお茶請けはもうないのですが、水出しのアイスティーがございますのでそちらを用意して、シンヤ様が先に座っているソファーの所に行きました。
「それで、何かわたくしに御用でしょうか?」
「うん、さっきクインゼルちゃんとエッシャルちゃんからメッセージをもらってね」
「あのお二人から?」
「ティタニアちゃん、俺の事を親しいとは思ってくれているけど、恋愛対象としては見ていないんだってね」
「そうですわね。そもそも恋愛と言うものがわからないのですけれども」
「そっかー。俺はティタニアちゃんの事が好きだよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「恋愛的な意味でね」
「へ?」
「最初に会った時からずっと気になってたんだけど、俺ってこんな性格だから、変にティタニアちゃんに近づいてティタニアちゃんの人生を捻じ曲げたら怖いなって思ってたんだけど、クインゼルちゃんにティタニアちゃんが他の男と付き合ったらどうするって言われて、それは嫌だなって思ったんだよね」
「そうなのですか」
「もちろん、これは俺の一方的な思いだから、ティタニアちゃんに無理に返事をもらおうとは思わないよ。ただ、俺がティタニアちゃんを恋愛的な意味で好きだっていう事は知っていて欲しいって思ったんだ」
「シンヤ様はわたくしとお付き合いをしたいのですか?」
「出来れば、っていう感じだけど、ティタニアちゃんはそういう感情がよくわかっていないんだよね」
「はい」
「俺はそういう子に無理をして付き合って欲しいと思ってはいないよ。でも、俺も男だからね、人並みの独占欲はあるつもり」
「と、申しますと?」
「ティタニアちゃんの傍に、俺以外の男が居ると、嫉妬しちゃうって事」
「それは……、なんと申しますか、意外ですわ」
「そうかな?」
「シンヤ様はどなたにも優しくていらっしゃいますでしょう?」
「優しさと独占欲はまた別ものだよ。それに好きな子に優しくしたいっていうのは当然の感情だよ。まあ、好きな子ほど虐めたいとか、加虐趣味があれば別だけど、俺はそんなものないしね」




