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最強聖女!チート御一行のダンジョン生活★  作者: 茄子
第二章 動き始める人間関係
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私のもの(シャーレ視点)

「そうやって毎晩俺達の愚痴をその女に吹き込んでいたってわけかよ。いいご身分だよな、リーダー?」

「何を言っているんだ?」

「僕達に随分不満があるみたいじゃないか」

「そんな事はないよ」

「そうか? 今回の作戦だって、俺は俺達だけじゃ無理だって言ったよな。それでもお前は強行しようとした」

「それで彼が止めて言い争いになったところを襲撃されたんだ。死んだのは君の事を一生懸命庇っていた奴だったよね」

「彼は……」

「狙われていたのはお前だったのに、お前とモンスターの間に入って咄嗟にお前を庇って死んだんだ。お前のせいだよ! 他の、出て行った彼女達が居ればお前の考えた作戦でも俺は反対しなかった。だけど彼女達はもういない。お前はその事を考慮しないでやれるっていうわけのわからない事を言っていたんだ」

「レベル的に倒せない相手じゃないはずなんだ」

「お前の能力値でならそうかもな。だが、僕達が全員お前と同じ能力値なわけじゃない」

「何でもかんでも自分基準、自分の思い込みで行動、八方美人で誰にでも手を差し出す癖に最後まで責任なんか取れない。君はそういうタイプだ。スレッドでの交流だけじゃそこまで分からなかったけど、こうして一緒に生活をして一緒に狩りをしていってわかったよ」

「おれは、皆が良ければと思って」

「だったらなんで俺達の意見を聞かないで無理やり作戦を強行しようとした? 自分ならできるなんて思ったんだろう」

「だって、ちゃんと作戦通りに動けばやれるはずだったんだ」

「だから、その作戦に無理があるって言ったんだ。お前の身体能力ならできても、俺達の身体能力じゃできないことだった」

「……なら、そんな事言わない」

「は?」

「シンヤ兄さんならそんな事言わずに、おれの意見を尊重して行動にもちゃんと合わせてくれた!」

「お前、そのシンヤに捨てられたじゃねーか」

「そんな事はない!」


 私の手を握っているテンマ様の手が震えている。

 シンヤ様ってテンマ様の最初のパートナーで従兄弟なのよね。

 チュートリアルが終わってテンマ様を置いて出て行った裏切り者。

 テンマ様はそんな人の事をまだ信じているの?

 チュートリアルの間ずっと一緒に居たパートナーを簡単に捨てるような人間の事なんて、忘れてしまった方がテンマ様のためだわ。

 もしかしてその人がテンマ様の頭の中にずっといる人?

 血の繋がりって難しいわよね。

 あのお姉様だって私と縁を切るなんて言っておきながら、内心では今頃後悔しているに決まっているわ。


「今までお世話になっておいて何だけど、僕達は出ていくことを決めたよ」

「何で!」

「無茶苦茶やるリーダーについていったら命がいくつあっても足りないって皆で話し合ったんだ。それに、俺達が居ない方がその女と存分にいちゃつけるんじゃねーの? 毎晩よろしくやってるみたいだけどな」

「なんのことだ?」

「誤魔化すなよ。全員知ってるぜ? 夜な夜なその女がこの部屋に入って数時間出てこないってな」

「それは話を聞いてもらっていただけだ。シャーレはダンジョンに出ないから、ダンジョンがどんなところなのか気になるからって言って」

「ふーん、まあもうどうでもいいけどな」

「今夜は荷物をまとめて明日の朝に出て行くよ」

「待ってくれ。話合えばわかるはずだ」

「話し合いの結果あいつが死んだんじゃねーか。もう忘れたのかよ!」

「そんな事はないけどっ」

「けどなんだ? またいつもの綺麗ごとでも言うつもりか? もう聞き飽きたよ」

「君は能力的に優秀かもしれないけど、人間的にはどうだろうね」


 その言葉にテンマ様が握ってくる手に力がこもった。

 これだわ。

 能力はともかく人間的に劣っている、それがテンマ様の付け入る隙だわ。


「テンマ様を責めないでください」

「シャーレさんはどうせ出て行かないんだろう? 一人じゃ何も出来ないお嬢様だもんね」

「私はテンマ様の傍にいてあげるんです!」

「養われているくせに上から目線だな」

「もう関わらないんだからいいじゃないか。じゃあ、話はこれだけだよ。後は二人で仲良くしてくれ」


 そう言うと部屋に入る事も無かった四人は扉を閉めて姿を消した。


「どうしてこんなことに……」

「テンマ様、彼らはテンマ様の事を誤解して、よくわかっていないんです。でも、あんな事言われたらもう話し合いでどうにか出来るとは思えません。彼らを引き留めるのは無理だと思います」

「そんな」

「でも大丈夫、私が居ます。テンマ様の優しさも、その素晴らしい力も、私はちゃんと理解しています」

「シャーレ」

「安心してください。私がテンマ様の傍にずっと居ます」


 そう言って握り締めた手を持ち上げて口づけると、テンマ様はびくりと体を震わせた。


「テンマ様が抱えている悩みを私に教えてください。私はテンマ様の全てが知りたいんです」

「おれは、出来損ないなんだ」

「どういうことですか?」

「家族の中で、おれは古武道の才能があまりなくて、冷遇とまではいかないけれども、よく思われていなかった」

「そんな」

「でも、シンヤ兄さんが居た。おれをちゃんと見てくれるのはシンヤ兄さんだけだった。そのシンヤ兄さんが言ったんだ、他の人に優しくすべきだって」

「そのシンヤ様の言葉に従っているんですね」

「ああ、そうすればおれの事を多くの人が認めてくれるって、そう言ってくれたんだ」

「多くの人じゃなくても、私が居ます。他の誰がテンマ様を見なくても、私だけはテンマ様を見続けます」

「シャーレ、ありがとう」


 これでテンマ様は私だけのもの。

 これでこの世界での私の生活も保障されたも同然ね。

 能力の高いテンマ様なら今狩りをしている階層でソロでも十分に活躍できるはずよ。

 料理は食事会やレトルトっていうものになるだろうけど、それも召使いになるような人を招き入れればいいわ。

 何の能力もない私の言いなりになるそんな人を引き込むのよ。

 大丈夫、私の望むものが手に入らなかったことなんてないんだから。

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