高嶺の花
シャーレ様と縁切りをして変わったことがあります。
わたくしのステータスの幸運が99になったのです。
元々高かったのですが、ナティルと同じ99になったのは喜ばしい事ですね。
もしかしたらわたくしの幸運の足を引っ張っていたのがシャーレ様だったのかもしれません。
もっとも、神様がどのようにステータスを設定しているのかはわかりませんので、何とも言えませんけれどもね。
そうして、シャーレ様と縁を切ったことでもう一つ変わったことがあります。
それは幾人かの男性にデートに誘われるようになったという事です。
はっきり申しまして、このダンジョンでデートと言われても狩りをする以外にないのですが、それでも眷属を省いた二人きりで狩りをしたいというのはデートのお誘いと考えてよろしいのでしょう。
まあ、お断りしているのですけれどもね。
当たり前でしょう、一緒に狩りなどしたらわたくしのチートがばれてしまうかもしれないではありませんか。
そんな危険を冒してまでよく知らない男性とデートしようとは思いません。
それに、眷属を連れて行かないなんて、食事会でもあまり良い顔をしませんのに、それがデートなんて言ったら反対されるに決まっておりますわ。
と申しますか、一度わたくしが一人で他の男性と一緒に狩りに行ってもいいかと尋ねたところ、ナティルは笑顔で「駄目ですね」と言い、ツバキは難しい顔で「看過できぬ」と言い、ネーロは反論するように手(?)でテーブルをベシベシと叩きました。
ステータス的にわたくしをどうにか出来る勇者が居るとは思えませんが、用心に越したことはありませんし、眷属全員に反対されてまでデートに行きたいとは思いませんからね。
それにしても、シャーレ様と縁を切った途端にこんな状況になるという事は、今まではシャーレ様の存在があったからわたくしが皆様から倦厭されていたという事なのでしょうか?
未だにわたくしの事を妹に婚約者を寝取られた負け犬聖女などという方もいらっしゃるようですが、そのような方は本当に少数派のようで、大半の方がわたくしに好意的です。
自分で言うのもなんですが、聖女ですし、実際に会ってみれば磨かれた社交術がありますので好印象に持っていくことは難しい事ではありませんので、このような結果になっていることも当然の事なのかもしれません。
ちゃんとこの世界のルールにのっとり、狩りをする事も忘れておりませんし、自分で評判を落としていくシャーレ様とは違うのですわ。
評判を落としていくといえば、エドワルド様ですが、どうしてもボスに勝つことが出来なくてジニーを出して仲間を雇って戦ったそうなのですが、あまりにも自己中心的な戦い方に、PTを組んだ方が苦情をスレッドに書き込んでおりました。
エドワルド様は戦闘訓練でも王太子として、周囲が自分に合わせるという戦闘スタイルが普通でしたので、この世界に来てもその癖は抜けないのでしょう。
そもそも、ずっとソロでしたしね。
けれども、その書き込みのせいか、その後エドワルド様がいくら募集しても一緒にPTを組む方は現れず、エドワルド様はひたすらレベルを上げてボスにチャレンジする機会をうかがっているそうです。
うーん、わたくしは眷属が居ますので問題ありませんが、上層階のボスモンスターにソロで挑むのは流石に厳しいものがあるのではないでしょうか?
あのテンマ様ですら同居なさっているメンバーとPTを組んでいると聞きます。
そのPT仲間にシャーレ様はもちろん組み込まれませんけれども、テンマ様もシャーレ様を庇う書き込みが多い事で徐々に評判を下げているようなのですよね。
まったく、皆様自分で評判を下げるのがお好きなようで困ってしまいます。
わたくしは、どなたからのデートの誘いも受けないことから、高嶺の花などと言われるようになっておりますけれども、食事会などに参加した際はそれでもあきらめずにデートの誘いをしてくる方がいらっしゃいます。
そんな時にさりげなく助け船を出してくださるのがシンヤ様です。
ソロで戦いなれている人が急に他の人と戦い方を合わせるのは大変だとか、あまり気乗りじゃないことを強要するのはよくないとか、さりげない一言ですけれども、わたくしにとってはその一言がとてもありがたいです。
年頃の男性は性的欲求に弱いと教皇様もおっしゃっていましたし、申し訳ないのですが様々な理由でデートはやはりお断りするしかありませんよね。
かといって、女性の勇者とPTを組むのかと言えばそれもまたしないのですけれども、その理由付けに関しては、一人の方が遠慮なく魔法を行使できるからだと説明しております。
これにはエッシャル様が後押しをしてくださっていて、魔法によっては周囲を巻き込むものも多くあるので、近接攻撃も可能な魔法使いは、ソロで活動したほうが有利な場合が多いといってくださっています。
皆様の援護あってこその平穏な日々だと思っておりますので、今日もこのような環境で暮らすことをお許しくださっている神様へ感謝をささげる事から一日が始まります。




