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最強聖女!チート御一行のダンジョン生活★  作者: 茄子
第二章 動き始める人間関係
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堕ちた王子(エドワルド視点)

 俺にとって、母という存在は絶対だった。

 父に愛されていた母は、後宮で王妃よりも強い権力を持っており、従兄弟であるフォルセルド公爵に聖女であるティタニアとの婚約を無理やり結ばせることに成功した。

 しかしながら、後宮と言うものは蟲毒のようなもので、母は何者かによって毒殺されてしまったのだ。

 王妃に容疑がかかっていたが、あまりにも動機や証拠がありすぎて、逆に真犯人にはめられたのだろうという事で結局のところお咎めはなかった。

 その後、母の呪縛から逃れた俺は、今まで押さえつけられていた思いを開放するようになっていった。

 元々乗り気じゃなかったティタニアとの婚約も、一日でも早く破棄したいと願うようになったし、本当に愛するシャーレと結ばれたいと思う気持ちが止められなくなっていった。

 元々、子供の頃からシャーレは王宮の、それも後宮に遊びに来ることがよくあったから、昔馴染みと言ってもいいほどだったし、ティタニアなんかよりもよほど可愛げがあるからずっと気に入っていた。

 しかし、年頃になり、シャーレにも婚約者が出来たら流石に後宮に来る頻度も下がるかと思ったが、母が亡くなってからというもの、俺を慰めたいといってシャーレが後宮に来る頻度はむしろ高くなった。

 そして、俺とシャーレが男女の関係になるのには時間はかからなかった。

 母に顔が似ている俺の言う事は、母に心酔していた使用人はそのまま俺に忠誠を誓い、言うがままに行動してくれたから、シャーレと二人で過ごす時間を作る事は簡単だった。

 シャーレに子供が出来たと知った時、俺はすぐさまティタニアとの婚約破棄を決めた。

 先にティタニアに言ってしまえば、教会に手を打たれてしまうかもしれないので、そうならない為に父とフォルセルド公爵にシャーレの妊娠とティタニアとの婚約破棄、そしてシャーレと婚約をしたい旨を告げた。

 俺の顔に弱い二人はすぐに承諾してくれて、俺の思うように動いてくれた。

 そうして、俺はティタニアに婚約破棄を伝えるために久しぶりに神殿を訪れた。

 相変わらず陰気な空気の神殿の奥まったところに部屋を与えられているティタニアとの面会は、必ず神殿の応接室で、扉を開けて神官か使用人が付き添ってのものだった。

 それすら堅苦しいと感じていたが、婚約破棄を告げると決めていた俺はあの時はそんなことは気にはならなかった。

 既に父とフォルセルド公爵に許可を得ていることを告げれば、ティタニアは特に反応を示すことなく婚約破棄を受け入れた。

 所詮はその程度のつまらない女だったという事だろう。

 そこからは何もかもがうまくいった。

 シャーレも婚約破棄を問題なくすることが出来、俺との婚約は誰にも反対されることなく結ぶことが出来た。

 ただ、婚姻に関してはシャーレが妊娠しているという事があったため、出産後しばらくしてからするという事になってしまった。

 シャーレはつわりも軽く、多少ふくよかになってしまったが、それも妊婦なのだから仕方がないことなのだと思い、婚姻しても変わらぬ愛を誓いあっていた。

 出産後、シャーレは順調に体型も体調も戻していって、婚姻式の準備も全て終わり、いよいよ婚姻前夜、俺は眩しい光に包まれてこの世界に召喚された。

 はっきり言って誤算もいいところだ。

 だが、シャーレも一緒に召喚されたと知って、少しだけ気は紛れた。

 ティタニアも一緒に召喚されて居たことには多少思うところがあったが、結局はティタニアは誰と組むこともなく一人で行動することになったとわかった時は、胸がすく思いがした。

 しかし、問題はすぐに発生した。

 シャーレは公爵令嬢だったせいで、戦うという経験が全くなく、しかも魔法も習得していないという状況だったため、スライムを倒すのにも俺任せという状況だった。

 しかも一人でいるのは嫌だと言って、効率の悪い一階層で一緒にスライム狩りをすることを強請られた。

 最初はそれでもいいと思っていた。

 俺が頑張ればそれでいいと思ったのだが、すぐにシャーレが状況の改善を要求して来た。

 スライムを狩っているだけでは状況を変えることは出来ないと何度も説明したにもかかわらず、シャーレは俺に文句を言うようになり、俺は状況を変えるために一人で別の階層に行って、シャーレには一人でスライムを狩ってもらう事にした。

 それがいけなかったのかもしれない。

 シャーレと俺の仲は急激に悪化していった。

 最初は俺との幸せな生活を綴っていたシャーレのスレッドの内容も、日を追うごとに俺への愚痴ばかりになっていた。

 子供までなしたというのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

 そうして、関係は悪化していったまま俺は一人で十階層の九尾の狐を討伐した。

 チュートリアルが終わって、二人組を解散できることになれば、シャーレはすぐに出て行くと思ったのだが、なんだかんだと理由をつけてずっと俺の所に居座っていた。

 後でスレッドを見て知ったが、受け入れ先と決めていたテンマのメンバーに拒絶されていたかららしい。

 それでも、結局のところ、シャーレが折れて移住することが決まって、シャーレは出て行ったが、俺の使用していたベッドを残して全ての備品を持って出て行ったのには正直驚きを通り越して怒りしか湧かなかった。

 シャーレは自分が使っていたものを持っていっただけだと言っていたが、俺が使っていたものももちろん入っていたわけで、俺は少ない貯金から備品を買い直すことになって、なけなしの所持金がさらに減ってしまったため、今まで以上に狩りに出なければいけなくなった。

 俺は王子なのに、どうしてこんな生活を送らなくちゃいけなくなったんだ?

 もうなにもかも、シャーレのせいな気がしてならないのはなぜだろうか。

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