シャーレ移住する
『親愛なるティタニアへ
おかげ様でエレメントの核は十分になって来たわ。
でも、属性をつける武器って難しいわね、失敗が多くなっちゃうのよ。
あたしはこんな事じゃくじけないけど、エッシャルが落ち込んじゃっててね。
あの子ってば一度気にしだすと止まらないからこまっちゃうわ、あたしの能天気さを分けてあげたいぐらいよ。
でもま、そこもエッシャルの可愛いところだとあたしは思うけどね。
引き続きエレメントの核の回収を頼むわね。
ティタニア達は武器がいらないけど、あたし達の武器は消耗品。
使えば使うほど破損率が高くなっちゃう。
まあ、おかげであたし達はもうかってるんだけどね。
そうそう、話は変わるけど、ティタニアの事を悪く言うスレッドが立ってるわよ。
スレ主はティタニアの元婚約者のエドワルドってヤツ。
本当に嫌なヤツね、ティタニアが自分のいう事を聞かないのはおかしいって主張してるのよ、バッカみたい。
大半の奴らは相手にしていないけど、テンマとシャーレっていうあんたの妹は違うみたい。
覗いてみると面白いかもしれないわよ。
それじゃあ、今後もお互いに良い取引をしましょうね。
愛を込めて、クインゼルより』
クインゼル様よりメッセージをいただきましたので、該当のスレッドを探しますと『魔女ティタニア。聖女など嘘っぱち』というスレッドがありました。
内容はわたくしがいかに悪辣非道な冷血漢で、聖女ではなく魔女と呼ぶにふさわしいかという内容でございまして、大半の方が『捨てたと思った婚約者に捨てられた負け犬乙』『見苦しい』『こんなところで愚痴ってる暇あったら真実の愛()の相手と話せば?』というような反応です。
ただ、シャーレは、
『私のことをお姉様に告げ口するなんて最低。私はお姉様のいう事なんて聞きません。私を追い出したいのなら私にそう言えばいいじゃないですか。こんなところでお姉様の悪口を言う振りをして私の事を悪く言うつもりなんでしょう。わかっていますからね。真実の愛で結ばれたと思ったのに、エドワルド様は私を捨てる気なんでしょう。こんなわけのわからない世界に召喚された原因がお姉様にあったとしても、私の夫であるエドワルド様は私を養う義務があるのにそれを怠っておきながら、私を悪く言うなんて、あんまりです。皆様、騙されないで。確かにお姉様は悪逆非道で冷血漢ですし、私に対して酷い事ばかりしますけど、今のエドワルド様だって同じだわ。私の事を大切にしてくれない! 私はエドワルド様との婚姻を破棄して、テンマ様の所に行きたいの。でも、他のメンバーがそれを邪魔しているのよ。ここで宣言するわ、私はテンマ様の所に行く、誰も邪魔しないで!』
驚きの書き込みですね。
それにテンマ様の所のメンバーも反応しているようです。
テンマ様はシャーレの味方をしているようですけれども、他のメンバーの方は微妙な反応ですね。
やはり、何もできないシャーレを受け入れるというのは難しい事なのではないでしょうか。
けれどもリーダーであるテンマ様の意見は重要視されているようで、スレッド内ではいつの間にかわたくしの話からシャーレを受け入れるかどうかという話になっているようです。
エドワルド様も自分のスレッドがこのような事に使われるとは思ってもみなかったでしょうね。
わたくしもまさかこんな展開になるとは思いませんでしたが、他の勇者の方は見守るのに専念することにしたようです。
様々な事が言い合われておりまして、シャーレに移住してきたら何をするかという事を尋ねる方が何人もいらっしゃいますが、シャーレは自分は公爵令嬢なのだから、使用人がするようなことは出来ないと主張しております。
皆様生活するのに必死に試行錯誤しているのに、いつまでも公爵令嬢気分でいるのは困りものですね。
幾人もの方がシャーレに何かの役割を求めておりまして、シャーレもそれが無ければテンマ様の拠点に移住できないのだと流石に察したのか、リビングの掃除をするという事で話が付いたようです。
『これで私はテンマ様の拠点に移住できるのね! もうエドワルド様と一緒に居るのはこりごりだったんです。テンマ様の傍にいることが出来て嬉しいです。私は優れた人の傍にいるべき人間なのだから、当然ですよね』
『おれのことを優れたなんて言われると照れるな。おれはおれに出来る精一杯の事をやっているだけだよ。でも、歓迎するよ、シャーレ』
『おい、俺のスレッドを乗っ取ってなに勝手に人の妻を口説いているんだ。シャーレ話がある、スマートウォッチを閉じて今すぐ俺と話し合いをするぞ』
『お断りです。私は今すぐにテンマ様の拠点に移動します』
その後書き込みがしばらくなかったと思ったら、エドワルド様が怒りをぶつけた書き込みをしました。
『おい、シャーレ! 拠点の備品を根こそぎ持っていくとはどういうつもりだ! あれは俺の稼いだ金で買ったものなんだぞ! メッセージにも返事を返さないなんて、何を考えている! 今すぐ謝罪して備品を返せ!』
『あら、エドワルド様。私は私が使っていたものを持って来ただけです。文句を言われる筋合いはないですよ。それにエドワルド様が稼いだお金? そんなのものはした金じゃないですか、何を偉そうに言っているんです? 冗談を言うのはやめてもらえますか? 私の評判を落としたいのかもしれないけれど、私はもうテンマ様の拠点に移住したんですから、もう私に関わらないでもらえますか』
あらまあ、エドワルド様ってば完全に見捨てられてしまいましたわね。




