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最強聖女!チート御一行のダンジョン生活★  作者: 茄子
第三章 手に入れる者、失う者
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結局は私の思い通り(シャーレ視点)

「おれのシンヤ兄さんはそんな事言わない!」


 叫ぶテンマ様に、私は自分の分の食事を持ちながらオロオロすることしかできない。

 シンヤ様にテンマ様を取られることはないと思っていたけれど、これは私の予想していた展開とは違うわ。

 シンヤ様から改めて私に対してテンマ様をよろしく頼むって言われて、テンマ様が今まで以上に私の事を大切に扱ってくれるようになるはずだったのに、これじゃ計画が台無しじゃないの。


「テンマ様、落ち着いてください。そんな態度、テンマ様らしくありませんよ」

「おれの事なんかわかっていないくせに! シャーレは黙っていてくれ!」

「なっ、そんなことありません。私はテンマ様の事を愛していますし、テンマ様のお役に立ちたいと思っています」

「じゃあ、今すぐおれの代わりにダンジョンに出て生活費を稼いでくれよ!」

「それは……、テンマ様どうしちゃったんですか? 私にはそんなことしなくていい、家に居て出来る限りの事をしてくれればいいっていつも言ってくれるのに、なんだかおかしいですよ」


 テンマ様のところに居れば、私がダンジョンに出なくて済むから居るのに、ダンジョンに出ろなんてテンマ様と一緒に居る意味が無くなってしまうじゃない。

 私は手にした食事を持ったまま、なんとかいつものテンマ様に戻ってもらうために頭を働かせる。


「そうだ、料理が台無しになっちゃいましたね。買い直して来ないといけませんね。美味しいものを食べて落ち着けばいつものテンマ様に戻れますよ」

「いつものおれってなんだよ!」

「何って、優しくて頼りになる私の最愛の人に決まっているじゃないですか」

「おれは頼りになんてならない! 弱い人間なんだっ」

「そんなことありませんよ、勇者の中でもテンマ様は強いって有名じゃないですか」

「シンヤ兄さんに簡単に腕を切り落とされる程度の強さなんて、程度が知れているじゃないか! 俺が弱いから皆が俺から離れて行くんだ!」

「私が居ます。私はずっとテンマ様のお傍にいます」


 私の言葉にテンマ様が上半身を起こす。

 そうよ、それでいいのよ。


「シンヤ兄さんじゃなきゃダメなんだ。俺の事を本当にわかってくれるのはシンヤ兄さんだけなんだ。なあ、シンヤ兄さん。昔のように仲よくしよう? おれが弱っている時に優しくしてくれたシンヤ兄さんに戻ってくれよ」


 テンマ様はシンヤ様の方を見てそう言う。

 まるで私の事なんて目に入っていないようなその態度が気に入らないわ。


「いつまでも子供のままでいることが出来ると思わない事だ。他人に優しくして見識を広め、最後まで責任を持てる人間になれと言っただろう」

「そうしてもシンヤ兄さんは戻ってこないじゃないか!」

「そもそも、俺はテンマのところに戻る気はない」

「どうしてだよ!」

「何度も同じことを言わせる気か? 子供のお守りはこりごりなんだ」


 その言葉にテンマ様は飛び起きると、落ちていた剣を拾ってシンヤ様に向かって突き出した。


物理防御シールド


 私の近くからそんな声がしたかと思うと、テンマ様の剣が見えない壁に弾かれてしまう。

 咄嗟にお姉様の方を見ると、呆れた視線をテンマ様に向けていた。


「お姉様、何をしたんですか?」

「防御魔法を発動させただけですわ。それから、わたくしの事をお姉様と呼ばないでくださいませ、シャーレ様」

「今はそんなことどうでもいいじゃないですか! どうしてテンマ様の邪魔をするんですか!」

「おっしゃっている意味がわかりませんわね。大切な友人が攻撃されるのを黙って見ていろと言うのですか?」

「あの人が居なくなれば、テンマ様には私だけが残るんです! そうすればテンマ様は私だけを見てくれます。私の為に何でもしてくれるようになります!」

「随分都合のいいことをおっしゃいますのね」


 呆れたようにため息を吐き出されてむっとして掴みかかろうとしたけど、手にした料理が邪魔でそれも出来ない。


「そんな風に攻撃してくるなんて、また腕を切り落とされたいのか?」

「ひっ」

「俺はお前が何をどう考えているなんて知らない。自分の都合のいいようにおれの事を神聖化するのも勝手だが、俺には俺の考えも都合もある。元の世界でお前に中途半端に優しくしてしまった事は申し訳ないと思っている。だが、俺はもうテンマと関わり合いになる気はないんだ」

「おれが、おれがもっと他人に優しくして強くなれば、シンヤ兄さんは俺の所に戻って来てくれるのか?」

「俺の話を聞いていたか?」

「そうか、そうだよな。おれ、シンヤ兄さんが言ったようにちゃんと他人に優しくしてやれていなかったもんな。強くもなれていないし、シンヤ兄さんがおれを見守るのも仕方がないよな」

「テンマ様?」

「シャーレ、さっきはごめん。おれ、ちゃんとシャーレに最後まで優しくするよ」

「わかってもらえて嬉しいです、テンマ様」


 そうよ、これでいいのよ。

 テンマ様はずっと私の面倒を見て、私の為に戦ってくれればいいの。


「テンマ様、目的が決まったらそれに備えてちゃんと食事を食べなくちゃいけませんよ。もう一度料理を買って来て一緒に食べましょう。久しぶりにテンマ様と食事が食べられるなんて、嬉しいです」

「そうだな」


 テンマ様はいつものように笑って、剣をアイテムボックスにしまうとおばんざい屋の方に歩いていく。

 私はお姉様達から離れた場所に座ると、テンマ様が来るのを待って食事を始めた。

 相変わらず味が薄くて食べた気にならないけど、こんなものでもお腹が膨れるんだから許してあげるわ。

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