ヒント
最初は、自分のことについて、持ち物などを確認していく。
服装はこのゲームに参加した時と同じで、黒のTシャツに7分丈のジーパン、ランニングシューズ。ジーパンのポケットには、スマホとサイフが入っていた。
サイフには、5000円札が1枚のみ。
ゲームに関する説明は少なかったが、確かこの世界では持っていたお金を全て使い切ってしまっても、元と同じ金額が追加される仕組みだと言っていたか。
人によって(というよりは難易度と言えばいいのだろうか)金額は変わるが、追加される回数は1日 1回と決まっていた。
次に、スマホを確かめる。
日付は20××年1月4日、16時21分。
2年前の日付だ。
受付カウンターにある日付カレンダーでも確認、同じだ。壁にある時計も確認。これは同じではなく、時計の針は1時35分を指していた。秒針はない。
ゲームを始める前、現実世界では16時に入室したはずだ。説明などを受けてこの世界に入ったわけだから、そう考えるとスマホの時間が一応は正常な時間だと考えていいだろう。
となると、この日付と時間、加えてこの場所も女性を特定するためのヒントだと思って間違いない。
よし、現状把握はこんなものでいいかな。
話が出来るんだから、とりあえずダメ元でいろいろ聞いてみるか。
隣の女性に再度声を掛ける。
「すみません、あなたの名前を教えてもらえませんか?」
「それを調べるのがこのゲームですよ」
女性は、おそらく顎や口の辺りに手を当てて、くすっと笑った(ように感じた)。
「そうですよね。じゃあ、年齢を聞いても?」
「女性に歳を聞くのは、昔からの御法度です」
と、今度はからかうような響きがあった。どうやら、顔がわからなくても些細な感情の変化や仕草のようなものは分かるようになっているらしい。
「俺のことは知ってます?会ったことは?」
「どうだったかな?覚えてないですね」
首を傾けながら(そういう風に感じた)、女性は間髪入れずに答える。
やはり、教えることは出来ないということだろう。
俺からの問いかけが止むと女性はまた正面を向いたようだった。
とんとん進みすぎかな
それともぐだぐだし過ぎかな
難しい...