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自分の非常識に気付いた日の日記

 心地良い風で目を覚ました。その風は隣で微笑む精霊らしき少女から吹いていた。そのとき俺は、自分が彼女を助けたことを思い出した。


 俺は日記を読み返し、昨日の出来事を確認する。

 そして左腕の模様に【全ての暗号を解読する魔術】を唱えた。

 浮かび上がる“1、俺は忘れっぽい。2、そのことを他人に知られないようにする事。3、必ず日記を付ける事。”というメッセージ。この3つは何としても守ろうと心に決めた。


 早速シルの故郷の精霊の森に向かうことにした。ダンジョンから出ると、そこは人気のない荒野だった。歩いていくのも面倒なので、適当な魔術で移動しようと考えていた。


 シルは自分が風で運ぶと言い出した。試しに彼女の風で浮かせてもらうと中々快適だった。

天気も良いし、気持ちよく飛んでいくのも悪くない。

 それに途中で何かを見ることで思い出すこともあるかもしれない。彼女に頼むと伝えると、俺の体はフワフワと空へ舞い上がった。


 しばらく楽しい空の旅を満喫していると、地上の風景は荒野は少しずつ草原に変わっていった。

草原をしばらく進むと、途中で人の悲鳴と獣の咆哮が聞こえた。

 地上に目をやると、何やら立派な紋章が入った馬車が、巨大な狼の群れに襲われていた。狼はドス黒い何かをまとっている。その異常な敵意もダンジョンで倒したドラゴンと同じ雰囲気だ。

 馬車の周囲には数人の魔術師らしき者達が応戦していたが、かなり苦戦しているように見える。


 俺は上空から狼に【3日は溶けない氷漬けの魔術】を唱えた。

 一瞬で凍り付き、動かなくなる狼。まだ地上に敵が残っているかもしれない。

 念のためシルは上空に待機させ、俺だけが魔術師達の様子を見に地上に降りた。


 どうやら敵は全滅したようだ。魔術師達は魔力が枯渇している者が多いものの、重傷者はおらず概ね無事のようだった。

 俺に気付いた魔術師達は一斉にこちらに駆け寄ってきた。お礼もそこそこに先程の俺の魔術について、魔術師達の魔術談義が始まった。

 これだけの広域魔術、相当な時間をかけて術式構築し、莫大な魔力を消費したに違いない。敵だけを正確に氷漬けにする精度、さぞ高名な一族だろうと勝手に盛り上がっていた。


 話を聞くにみんな中々の魔術マニアだ。どうやら先程のような魔術を人前で行使すると目立ってしまうようだ。

 これから人前で魔術を使うときは、もっと地味な魔術を使うことにしよう。

 下手なことを答えて面倒になってはいけない。俺は質問には一切に答えず笑ってごまかした。


 魔術師達が俺の師匠当てクイズで盛り上がっていると、立派な馬車の中から、立派な杖を持ち、立派な尖った長い耳のお婆さんが降りてきた。

 一斉に跪く魔術師達。魔術師達は俺にも跪くよう促すが、それを立派なお婆さんが遮る。お婆さんからもお礼を言われた。お婆さんは魔術の名家で近くの街を治める貴族らしい。

 お婆さん達は儀式魔術を使用した帰りで、魔力が枯渇しているところを狼の魔物に襲われ危ういところだった話した。


後日お礼の品を届けたいので名前を教えて欲しいと言う。もしかしたら俺を知っている人がいるかもしれない。

 情報を得られるのは良いが、下手なことを言って俺が忘れっぽいことを悟られても面倒だ。


 俺は名乗る程のものではないと伝え、笑ってごまかした。

 大声で上空で待機しているシルの名前を呼び、彼女の風に乗ってその場を立ち去った。


 日も暮れ始めたので、地上に降りて野営することにした。ダンジョンで目が覚めてから2日間、何も食べていない。

 腹が減ったが食料は何も特にない。近くの小川の水を飲んで空腹を紛らわせた。


 シルに腹が減っていないか聞いたが、平気のようだった。精霊は土地から生命力を吸収して活動源とするらしい。羨ましい限りだ。

 陽が落ち切る前に日記を書き終えてさっさと寝ることにした。


 明日は食料を確保して、精霊の森に向かうことにする。

 今日も色んなことがあった。他人と話す度に自分の非常識さに気付く。

 それもこれも、この忘れっぽさが悪い。

 シルのママが、この忘れっぽさを何とかする方法を知っていることを願って今日は寝ることにする。



以上、自分の非常識に気付いた日の日記。

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