第5話:MIMIC
わたしは、みえない。あなたは、みえる。
あなたは、みえない。わたしは、みえる。
――――――――――見知らぬ部屋
力なく開いた瞳には、真っ白な天井が反射していた。病院のベッドのような、真っ白なシーツと淡い水色の病衣に包まれて、ミミは独り身体を起こす。
「ここは……?」
辺りを見渡すと、見慣れぬ機械に囲まれた、病室のような、小さな白い部屋。高い位置にある小窓からは、記憶とは打って変わっての青空が広がっていた。ベッドの隣にある机には、着ていた服が丁寧に畳まれて置かれていた。その傍らにある時計は、あれから1日経過している時間を指していた。自分の身体を見ると、あちこちに擦り傷がある。ふと、胸に違和感を感じるミミ。胸元に手をやり病衣を捲ると、双六角錐の形をした、桃色の水晶のようなペンダントがぶら下がっていた。
「なんだろ、これ……」
ペンダントを窓から降り注ぐ光にかざす。太陽光が乱反射し、きらきらと輝くそれには、ミミの顔が映っていた。
「あら、目が覚めたのね」
扉が開く音と共に、若い女性の声がする。ミミは声の方を振り向くと、入口に女性が立っていた。タイトな黒スーツに身を包み、凛と立つその女性を、ミミは知っていた。
「魔道省開発研究部長官……マリアナ・キャビン……さん?」
「名前を覚えられるなんて、私も有名人になったものね……んんっ、失礼。はじめまして。ミミ・C・マーティン」
ミミは飛び上がるように起き上がり、ベッドの上で正座した。
「初めて見学に行ってから大ファンなんです!魔術武具の本読みました!なんというか、着眼点というか、発想というか。んもう凄くて!私、キャビンさんみたいな素敵な魔術師になりたいって思ってたんです!」
「もう。背中が痒くなるからおだてるのはやめて。貴女の事は、少しだけ調べさせて貰ったわ。……まずは。生きていてくれて、ありがとう」
キャビン長官はベッドに腰掛けると、ミミの手を取り、握りしめた。
「更地になったビル街で倒れていた貴女を、駆けつけた魔術師が回収したの。あちこち傷だらけでぐったり倒れていたものだから。……でも、こうして貴女は生きている」
「ありがとうございます。それで、ここは……?」
「ここは魔道省直営の病院よ。魔術戦争が行われた時等に備えて医療魔術師が多く配置されているの。出番が無いことを祈っていたけど、仕方ないわ。……それにしても、あの『鏖の儀』から魔術結界無しで生き延びるなんて。奇跡のようなものよ。だから、私が直々に話を聞きに来たの」
「あ、あの……すみません。何ですか?その、みなごろしのぎ、って……」
「ああ、そっか。中等部3回生の魔術史で習うからまだだったわね。それじゃあ、簡単だけど授業の時間ね」
そういうとキャビン長官はすこし嬉しそうに足を組み替え、指を振る。ベッドの反対側の壁面に、映像が映写される。
鏖の儀。それは今から30年前に1回目が発生した、一定区間を円で区切り、ディスコードと呼称される異形を降下させ、区間内の生物を蹂躙する人道に反する儀式。この時、天に大きな輪が架かる事が特徴。鏖の儀の最中、内外への干渉はほぼ出来ない。魔術師が極僅か干渉出来る為、魔道省所属の魔術師が内部の人間を守る為の魔術で作られた結界を作成する。それが、魔術結界。この魔術結界は人間等害の無い生物であれば入れ、ディスコードの様な敵意ある生物を弾く、セーフティエリアの役割を持っている。
30年前に連続して発生した鏖の儀は、邪教祖コーダ率いる邪教団フェ・ル・マータが計画し、発生させたものとされている。当時は魔術がまだ発見されたばかりで、人類は抵抗の手段が無いに等しく、ただただ無抵抗に人口を減らすのみだった。それから人口が半数に近づこうとした頃、残された人類は手を取り合い、ついに邪教団フェ・ル・マータは『五戦譜』によって倒され、微塵と化した。
「……という訳。昨日の鏖の儀は30年ぶりに発生した、恐ろしい儀式なの」
「そんな惨い事が……」
「今回これを計画した組織がいないか、現在調査中よ。じゃ、次の授業ね」
さらにキャビン長官は映像を切り替える。そこには、ミミにも見覚えのある、悍ましい異形の姿が映し出されていた。
「ディスコード。魔力で出来た生命体で、鏖の儀の際に降り注ぎ、儀式が終わると接収される謎多き生命体。核と呼ばれる中央の球体には魔力を有していて、その魔力を使って、足の先端で貫いたり噛みつく等で攻撃する。この攻撃は魔術回路の持たない人間が攻撃を受けると受けた魔力を昇華出来ず無音分解される。……つまり即死するの」
ミミは公園での最初の犠牲者、野良犬が灰のように消える姿を思い出す。
「30年前の第1楽章では魔術結界の技術も無かったから被害は甚大だったけれど、昨日の一件は魔術結界の技術も確立された上あの時間帯に人が少なかったこともあって、被害者も最小限に抑えられた……」
キャビン長官はその言葉を発した直後、ハッとした顔をし、ミミに謝った。
「ごめんなさい、友人が亡くなってるんだったわね」
「……」
ミミは黙って、目に涙を溜めていた。キャビン長官はミミの肩に手を当て、優しくささやいた。
「お願い、聞いて。我々魔道省としては、貴女には前を向いて欲しいの」
「どういう、事ですか」
「先に結論から言うわね。魔道省は貴女を魔術師、魔法剣士として迎え入れます」
「えっ?」
キャビン長官の言葉に、ミミは顔を上げる。驚きと、喜びと、困惑の感情が入り混じり、なんとも言えない表情をしている。
「倒れていた貴女が持っていたそのペンダント。こちらで解析させて貰ったわ。それには『魔道衣』が格納されている。この意味が分かるわね?魔道衣が与えられた事実。それは貴女が立派な魔術師である証左。……前置きが長くなったけど、結論を先に伝えた以上、貴女にはこれから私がする質問には全て答えて欲しい」
「は、はい。覚えている事なら」
ミミは袖で涙を拭い、キャビン長官を見つめる。
「じゃあまずは、覚えている限りでいいから、鏖の儀が始まった時からの状況を教えて」
ミミは記憶の限り、あの異形からの逃避行を順に説明する。久々に会った親友と、公園で談笑していたこと。突如ディスコードが降り注いだこと。天に架かる輪が、公園を中心に形成されていたこと。親友と共に逃げた先で、ディスコードに襲われ親友が殺されたこと……
サキが殺された話をしていると、あの悪夢のような出来事が夢でなかったことを改めて認識したのか、ミミは大声で泣き叫んだ。キャビン長官は何も話す事無く、優しくミミの頭を撫で微笑んだ。まるで、母親が辛いことのあった子供をあやすかのように。
ひとしきり泣き叫び落ち着いたミミは、真っ赤に泣き腫らした目を擦り謝った。
「すみません。取り乱して」
「いいわ。辛かったわね。でも、ありがとう。こちらもデータで観測していたけれど、そういった細かい事象については観測しきれていなくて。だからこういった証言はとても大切なの」
「キャビン君、いるかね」
低い男性の声と共に、突然部屋の扉が開く。大きな包みを背負い屈むように入ってきた大男は、魔道省管理部長官、テイラー・クリフトだった。
「テイラー、ノックして」
「む、あぁ、失礼」
既に入った後なのに、扉を叩く。軽く拳の先で小突いただけだが、爆音と共に部屋全体が揺れ、扉が大きく歪んだ。
「おっと、すまない」
「……修理代、給料から引いておくわ」
「勘弁してくれ。妻に殺される」
テイラー長官は小さく咳払いをし、ミミに向き直り手を差し出す。
「改めて、生還おめでとう。ミミ・C・マーティン。魔道省管理部長官のテイラーだ」
「……はじめまして。ミミです」
テイラー長官の威圧感に気圧されつつもミミは手を差し出す。ミミの3倍はありそうな手は固く、大きかった。握手といっても、ミミはほぼテイラー長官の手に握りつぶされるような握手だった。
「キャビン君、例の件は彼女に話したのか?」
「ええ、ちょうど今その話をしようとしていた所よ」
キャビン長官の言葉を聞くと、テイラー長官は背負っていた包みを床に置いた。包みを解くと、あの大剣が現れた。
「これは……!?」
「その反応だと、知っているようだな」
「はい。私を助けてくれた魔法剣士さんが持っていたやつです」
テイラー長官は大剣を軽々と持ち上げ、掲げる。刀身が太陽の光に反射する。
「これはハイランダーと銘打つ大剣だ。総重量通常時1t。魔法剣士であれば術式である程度は軽量化出来るとはいえ、超重量の大剣であることは間違いない」
「貴方は腕力で持ち上げてるだけでしょ」
「そうともいうが。……話が逸れた。私が聞きたいのはその『魔法剣士』についてだ。どんな姿だったのか。どんな人間だったのか。そして何故武器だけがここにあるのか」
テイラー長官は大剣を床に置き、ベッド傍のパイプ椅子に腰かける。パイプ椅子が少し拉げる音がする。
「教えてくれないかね」
「は、はい。魔法剣士さんは……女性です。年齢はわからないけど、若い女性でした。少し肌が浅黒くて、髪は腰くらいまでありました。顔は……口元以外はほとんどバイザーを付けてたので見えませんでした。赤色のドレスアーマーとマントを着けてて、その大きな剣を持っていました」
「ふむ。女性、か」
「その人はどうしてか、私の名前を知っていました。ビルの屋上から落ちてきたのも、私を守る為だったと思います。『遅くなった』とか、『私が守ってあげるから』とか、そうやって言ってくれたのです」
「ではハイランダーだけが残されていたのは何故だ?」
「ビルから出た後、ディスコードに囲まれたんです。そこで魔法剣士さんは強い光で周辺のディスコードを退けた。どうやったかはわからないけれど、とにかくディスコードはいなくなりました。ただ、それと同時に魔法剣士さんもいなくなってしまったんです」
長官2人は腕を組みながら黙って聞く。ミミは続ける。
「魔法剣士さんはボロボロでした。まるで何年も休みなく戦い続けたような……そんな気がします。私、魔術回路が無いから。魔力を目で見る事が出来ても、魔術を使うことは出来ません。でも、最後の光は、自らが持つ魔力を全部使いきるような、そんな光だったことだけはわかります」
沈黙。長い沈黙の後、テイラー長官が口を開く。
「……なるほど。わかった」
「テイラー、そっちの方では何か掴めていたのかしら?」
「いや、何も。霞を掴むような気分だ。ただ、鏖の儀の瞬間にT地区の30には魔法剣士が2人いた事だけがわかっただけでも、こちらとしては収穫だ」
テイラー長官はパイプ椅子から立ち上がり、大剣を担いだ。
「私はこれで失礼する。今後の課題と後処理が山ほどあるのでな。キャビン君、後は任せた」
「任せられました」
歪な形になった扉を無理矢理閉めて出ていくテイラー長官。閉めた衝撃でミミのベッドが5cmは横に移動した。
「……あの後開けるの難しそうね。でも、気を悪くしないでね。彼は機嫌が悪いんじゃなくて、ただ力が強すぎるだけなの」
「あはは……」
キャビン長官が苦笑しつつ、ミミを見る。
「そ、そういえば。魔法剣士が2人いる……って?」
「貴女が見た魔法剣士が消えた、その後の事は覚えているかしら?」
「巨大な気味の悪いディスコードが現れて、滅茶苦茶に逃げました。その後ビルの隙間に逃げ込んで……」
キャビン長官が指を振る。先ほど映写されていた写真から変わり更地を映し出す。
「これが、貴女が倒れていた場所の現在」
更地に見えるが、朧気に見覚えのある街角だった。なぎ倒されている信号機に取り付けられている交差点の看板は、あの時見たものと同じものだった。続いてキャビン長官がまた指を振ると、写真は管制室でのレーダーマップに切り替わった。
「これは同座標での観測データね。赤い点がディスコード。それで、白い点が一般者の人間の反応。大きな赤い点の巨大なディスコード。それと通常サイズの赤い点のディスコード。これに挟まれた白い点、生命反応。貴女の証言からすると、この生命反応が貴女、ということになるわね」
レーダーマップがスローモーションで再生される。突如、赤い点に挟まれた白い点が、巨大な黄色い点となり、大きい方の赤い点に向かっていく。双方がぶつかった瞬間、映像は終了した。
「見ての通り、この白い生命反応が、突如強力な魔力を発して、黄色い点、魔法剣士反応となってディスコードに向かっていったの。そこから急に観測システムがダウンして、再起動し終わった頃にはすべてのディスコード反応が消えていた。再起動までの時間は5分。その間にその魔法剣士は100体近く残っていたディスコードを一掃した、という訳」
「……、……」
「で、鏖の儀の特徴である天の輪が消え、我々魔道省が介入出来るようになった頃、この更地と化したビル群で、貴女を発見した……」
ミミは話を聞いていて、次第に青ざめていく。
「も、もしかしてそれを……」
「ええ。観測上は貴女がやったとしか思えないの。だから、その時の状況を教えて」
「……すみません。私も覚えていないんです。ただ、狐のような生き物が現れて、しっぽのところにある剣を掴めって言われて……私……!」
「別に責めてる訳じゃあないわ。むしろ誇って欲しいの。狐のような獣が貴女の前に現れた、それはとても運の良かった事なのよ」
キャビン長官はミミの頭を撫で、写真を切り替える。その写真は、古い絵巻のようなものを撮影したものだった。絵巻には、9つの何かが描かれているが、ほとんどは滲んでぼけて形すらわからない。
「魔道生物。これらはそう呼ばれているわ。全部で9匹いると言われていて、我々人間よりも魔術に強い、いつ現れたのか、どれくらい生きるのか一切不明の謎多き生物。この生物は皆人間と同等、いやそれ以上の知能を持ち言葉を話すの。それと、魔道生物は全て同一の魔力波長を持っていて、尾にあたる部位には人類がかつて使っていた武器を携えている。我々も30年前の第1楽章の時に存在を確認出来たのだけれど、姿を見たのは中でも3匹のみ。契約者と他の魔道生物との契約者以外には姿を見せない、特異な獣」
絵巻の中で3匹だけ、はっきりと描かれている獣を拡大する。
「番号の若い順から説明するわね。第4の魔道生物。カタナリックビースト・ハイランダー。オスの猿の魔道生物で、尾にはさっき見た大剣、ハイランダーを携えているわ。次に第5の魔道生物。カタナリックビースト・ムラマサ。牝馬の魔道生物で尾には古来の日本刀、ムラマサを携えている。そして最後に第9の魔道生物。貴女の証言からすると、ミミちゃん、貴女はこれに出会っているはずよ」
ミミは、絵巻の1体を見つめる。古い水墨画のような表現の為、完全に同一かと言われたら疑問符が沸くが、そっくりの生物を確かに見ている。特に尾の剣は意匠が似ている。
「カタナリックビースト・デュランダル。オスの狐の魔道生物で、尾には古来の西洋剣、デュランダルを携えている」
「どうしてこの3体だけが?」
「貴女も学校で学んでいると思うけれど、私たち魔道省長官は30年前、第1楽章時代ね。五戦譜と呼ばれていたの」
「はい、この前授業でやりました」
「この時、邪教団フェ・ル・マータが展開してくるディスコードを退けるという目的の為、奮戦していた我々五戦譜に興味を持ち、契約をしてくれた……それがその3体なの」
「契約」
「そう、契約。頭文字を取ってMICって呼んでいるわ。契約は至極簡単。魔道生物が許した相手が、魔道生物の尾にある武器を掴む。これだけ。あとは魔道生物が契約者の魔術回路に入り込み、魔道生物の持つ魔力を貰って大いなる力を得る事が出来る。魔道省に登録された魔法戦士の中でも、強力な戦士。魔法剣士よ」
「ミック……」
ミミは、記憶を失う直前を思い出す。
「でも私、魔術回路が全く無いのに」
「そう。貴女には全く魔術回路が検出されなかった。先日の魔道省主催の認定テストでも魔術回路は0%。昨日の治療時に行った精密検査でも結果は同じ」
「……そう、ですよね」
「魔術回路が無い人間との契約は、偽装契約と呼ばれるわ。これの略称が、MIMIC」
「ミミック。つまり、偽物の魔術師って事ですね……」
「そうねぇ。私たち以来の30年ぶりの偽物の魔術師ね」
「えっ?」
驚くミミを笑顔で見つめ、キャビン長官は小さくウインクをした。
「何を隠そう、さっきのテイラー長官。それに私。五戦譜のうち2人は実際のところ魔術回路はほぼ無いに等しいのよ?みんな「偉大な魔術師だー」ってやたら持ち上げるけれど。蓋を開ければこんなものなの」
「そうなんですか?」
「ええ。そうよ。だから魔術師ランクなんて気にしたらダメ。中には血統主義みたいな、ランクが全ての人もいるけど、少なくとも私やテイラーはそうじゃあないわ。……あぁ、すっかり話し込んじゃった。残りはまた日を改めて聞くことにするわ。魔道省への入省の回答も含めて、ね」
キャビン長官はベッドから立ち上がると、胸元のポケットから通信機と1枚のカードを取り出した。
「これ、貴女のIDカードと通信機。こちらからの連絡はこの端末を介して送ります、魔道衣展開テストとか、準備が整ったら連絡するわね」
「ありがとうございます。いろいろ教えてくださって」
「いいのよ。貴女と話していると昔のクリスちゃんを見てるような気分になったし。じゃ、貴女の退院手続きとかは若手に任せるとして、私は行くわ」
歪なドアを力いっぱい引っ張りこじ開ける。立ち去る直前、キャビン長官は顔を伏せながらミミに問いかける。
「……あ、そうそう。2点だけ確認しておくわ。貴女の夢って、何だったかしら」
「私の夢……ですか?私の夢は『魔術師になる事』でした」
「そう。叶っちゃったわね。じゃあ最後の質問」
扉に手を掛けつつ、ミミの方へ向き直る。先程までの明るい表情から一転、真剣な眼差しでミミを見つめる。
「鏖の儀の真意は、魔術回路の接収とされている。今後貴女は魔法剣士として得た刃をディスコードに向けられるかしら」
「えっ……?」
「自分の知っている人が、ディスコードになったとしても。貴女は戦えるかしら」
沈黙。ミミはシーツを見つめ、壁を見つめ、考えがまとまったのか、真剣な表情で口を開いた。
「……サキは、生きているんですね?」
「可能性の話よ」
「だったら、助けるまでです。私の無力が、サキを殺した。誰が何と言おうと、私はそう思い続けます。魔法剣士がまだ何かすらわかってないけれど、私が力を持てたのなら。私の力でサキを助けます。それが、今の私の夢です」
「……その夢、叶うといいわね」
キャビン長官は最後に元の表情で笑いつつ、立ち去った。扉はもう、使い物にならない。開けっ放しの扉を見つめ、ミミは胸元のペンダントを強く握りしめた。