世界
鎧姿の女に細身の剣を突き詰められ低めの声で聞いてきた。
「私とて手荒な真似はしたくないが返答次第で変わると思え、その剣はどこで手に入れたんだ?」
目の前スレスレに剣先が横切り前髪が少し切られた。
「し、知らないっ…で…す。」
緊張で答えづらく、声が上ずる。頰が一瞬冷たくなり暖かいモノが流れる。
「っう……!」
「私は本気だ…。詳細を言え。」
女は上から冷たい視線でじっとみてくる。
こんな時に限って、前に聞いた友人たちの会話「年上女性の冷たい目はご褒美だ」を思い出して目を逸らしてしまった。
「何故!赤くなる!」
魔女風の女が脇から出てきた。
「お姉様だからですわ!お姉様の尋問は優しすぎます。私が聴き出しますわ!」
「ほぉ?どうやって?手に持ってるのは何だ?」
「体液ですわ!」
満面の笑みで瓶に入った液体を掲げ上げた。
「何の?」
「とある魔物から搾りたてホヤホヤです。ものすごい酸性の体液なんです。」
「……。それで?」
「彼を骨ごと溶かして、その後に私仕様に再構築、私に使うように命令致します!これで全て上手くいきます!」
鎧姿の女は制止ししようとしていたが、魔女は喋りながら手際良く瓶のフタを開けて投げつけてきた。
瓶が当たる瞬間に目の前が白い壁が現れた。
《発動》
『竜神の加護』
「だから…何があるか分からないと先程説明しただろ。」
ーーー
家での夕食後に自室にこもり、ゲームを進めた。
明日は友人達とマルチで遊んだ後に剣について『お問い合わせ』する予定になっている。
このゲームは、僕の祖父が書いた小説が元になってる物語らしいが、良くある勇者と魔王軍の戦いだった。強いて言うなら魔王軍側の内容が多く暗めな感じだ。
祖父のトモじーちゃんは若い頃に数年消息不明になったがフラッと帰ってきたらしい。その後狂った様に小説を書き出した…が、たいして売れなかった。就職後に仲間たちの間だけに小説は広まり、仲間の1人がゲーム化して、さらに広まった。
と、言うのを母親から先程に聞いた。
珍しくゲームに熱中していたら時計の針は真夜中を指していた。
「そろそろ止めるか…。」
目を擦りながらスマホを閉じようと画面を触れたとき、指に違和感。
触れた画面から指先に無数の数字が這い上がってくる。指を離そうとしても高圧電流のように離れず動かない。
「……ぐぁ!」
ーーー
「はぁ…?ニホン?チバ??アッタマおかしいんではないですの?」
魔法使いは威嚇するように睨みつけてきた。
「メイ…真面目に聞いてやれ。」
「どう聞いても可笑しいですわ!作り話にも程がありますわよ!証拠もございませんわ」
「全てが嘘だとの証拠もないな。」
「……じゃあどうしますの?全て消します?」
「何を消すんだか知らないが…お前、名はなんだ?」
騎士に尋ねられ驚き即座に答えた。
「ユウ…ウチヤマユウ」
「ユウか…。お前はどうするんだこの後は?」
なにも考えていなかった。いつの間にか知らない土地にいて、妙な鳥に絡まれ、変な女の人に絡まれてる。今、思いつくのは…。もうすぐ高校も始まる友達とも約束もあったのに、楽しみにしていたアニメも映画も…積んであるプラモも。
「帰りたい。帰るんだ家に」
「はあ?さっさと剣を置いて帰りなさいよボーヤ」
「メイ…話が進まんから向こうで薬草つくってろ」
「嫌です。お姉さまと離れたくありませんですわ」
「じゃあ黙っててくれ。ユウ、君を帰り届ければその剣を頂けないだろか?」
「これですか?渡したいのは山々ですが…何故か離れないんですけど……」
剣は磁石のように僕の体にペッタリとくっついていた。
「いつの間にか飛ばされていて、いつの間にか持っていたなら、その以前を調べたら有意義なのでは無いか?」
「そうかも…じゃあ取れたら渡します。」
「そんな事しなくても、くっついてるところを削げばよろしいのでは?」
削ぐ…何か嫌な言葉だった。
「剣だけ手に入れても剣に拒まれたたら意味が無いのだよ。では、ヨロシクだユウよ」
騎士から手を差し出された。僕はその手を恐る恐る掴み握手をした。