チンジャオロース、ぱくぱく
日曜日。
何故か家の前に葉島がいた。
「休みじゃないの」
「い、一応来ました!」
心意気は良し。
「髪サッパリしたわ。あとはその服装ね。金持ってる?」
「え? はい。三千円ぐらいなら」
「じゃあ、あなたの服買いに行きましょう」
「あのね、だらしない奴の周りはみんなだらしないの。分かる?」
「は、はい」
「連れの恥は、自分の恥。私のそばにいたかったら、ちゃんとしなさい」
服だ。服を買おう。
「なんだ。やっぱり元は良いんじゃない」
服を、緑中心のカジュアルな感じにしたら、全然イメージが違う。
「そ、そうですかね」
「容姿、というか、清潔感は大事よ。清潔感が無いと、あいつにはなにしてもいい、みたいなトリガーになりかねないからね」
「そうなんですか?」
「いじめなんてね、ちょっとした思い付きで行われるの。行う側は深刻に考えてないわよ。だから、ほんのちょっとの隙が、いじめの理由になる。
もっともそんなの全部防げないけどね。
基本は強者にのし上がることでしか、解決は出来ない。
まあ、それなりな服着てれば気分違うでしょ?」
「そ、そうですね」
「じゃあご飯でも食べて帰りましょ」
「あ、じゃあ、知り合いがやってるレストランがあって」
知り合い?
学生の?
「まあ、いいわ。そこに行きましょう」
「あら、じゅんちゃん! 久しぶりね! あら、美人な女の子!」
「こんにちは。美味しいご飯を食べれる店と紹介されまして」
「まあ嬉しいわ! 腕によりをかけて作るからね!」
そこは中華料理屋。
中国が発祥の料理を主に出す。
と知識は言っているが、実際は日本オリジナルが殆どらしい。
「はい! 自信作! 青椒肉絲!」
「頂きます」
食べると
「旨いし!」
なにこの油! なにこの肉!
節制の制約とかクソだな。
「だろう!」
「喜んでくれて嬉しいです」
葉島も嬉しそうに食べている。
「コーヒーも出すからね。ゆっくりしていきなさい」
結局、そこで一時間ほど、おばさんと話し込んでしまった。
葉島の叔母らしいが、全然似てない。
ハキハキと喋っている。
「じゅんちゃんも、あんたみたいな子と結ばれれば安心なんだけど」
「それはないです」
「アハハハハハ!!!」
苦笑いする葉島。
その後家まで付いて来て
「じゃあ、また学校で」
「うん! とても楽しかったです!」
それは良かった。
「お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
お母さん。
挨拶だけして、テレビをつける。
ソレイユが気になる。
すると
『中国でクーデター。全人代開催中にテロ』
大々的なテロップ。
『情報は集まりきっていませんが! 全人代が開催されていた人民大会堂で、大規模な爆発が起こりました! 死者、行方不明者は不明です! しかし、昨日の事件以降、中国の行政は完全にストップしています!』
『インターネット規制として有名だった「金盾」のガードが無くなっています! そして、ネットに繋ぐと「新しき時代は来た。共産党支配は終わりだ」というメッセージが表示されます!』
記者の叫び声。
『テロではなく、クーデターであると?』
『はい! すくなくとも、中国当局はクーデターであると認識しているようです。ただ、全人代に参加していたメンバーが全滅に近い状況のようで、続報は……』
ソレイユには統治能力がない。
コイツはかき回すだけ、かき回して終わりだ。
テロは得意だが、新しい体制を築くなどしまい。
「さて、ここからどうするのかしら、龍姫は」
ソレイユはともかく、これを動かしている龍姫の動きが気になる。
考えろ。
今のアイツに神教の制約はない。
有り余った力を制御する必要はない。
となれば?
あの退屈を嫌いそうな性格。
そして、テロを起こしたソレイユ。
次は?
「あ、まさか」
世界地図を見る。
そうだ。中国の隣は。
ロシア。
急いでネットで検索する。
「クソ! ソレイユのついでに調べれば良かった!」
アレフティナって呼ばれていたな。
身なりからしても、良いとこのお嬢さん。
アレフティナで画像検索したらすぐひっかかった。
「ロシアの現大統領の娘」
そして、フェルラインも芋づる式に分かった。
アメリカの石油会社の令嬢。
仲良しで、しょっちゅう連んでいると。
「じゃあ、答えは」
テレビが、キャスターが絶叫した。
『ロシアが!!! ロシアが! 中国に宣戦布告をしました!!!』




