楽しいカラオケ
翌日、登校中に絡まれた。
「遠藤さん。あなた、自分の力に気付いてる?」
最初はイジメの連中か? と思ったが、記憶を漁っても心当たりがない。
というか、誰だこいつ。
「自己紹介からしてくれない?」
「有川愛菜。前世の名前ヘリーナ・アル・マルディリス」
三名かよ。貴族だな。
前世。こいつも私の世界から来たのか?
でもヘリーナなんて知らん。
「知らないわ」
「あなた、ラマール、いえ、神崎さんに会ったでしょう?」
「誰?」
知らないし
「ほら、街で会った」
街?
「ああ、あの黒ずくめの痛いやつ」
「あれは、正装なの」
そんな正装あったかな?
「いい。ついに、魔物が出たわ。私達は世界を救わないといけない。あなたも力を貸して」
「いやよ。面倒くさい。私は、前のやり方は飽きたの。世界を救うなんてクソ面倒よ」
「信じて。貴女には力が……あれ? なんか、違和感あるんだけど」
「なに?」
「あなた、前世の記憶あるの?」
は?
「それを前提に話してるんじゃないの?」
なに言ってるの、こいつ。
そいつがなんか考え込んでいる間に、私は置いていった。
朝、いきなり教師に呼び出される。
なんだよ、面倒だな。
「遠藤さん。過去の償いは出来ません。ですが、これからの話は出来ます」
校長。
「私も別に復讐したいわけでは全くなく。好きに生きたいだけです」
「有り難い言葉です。その上で、殴ったり、机を投げたりは避けて欲しい。今後は貴女に対する対応はきっちりやります。すぐ先生を呼んでもらえれば対応しますから」
「まあ、それは構いませんが」
ホッとした顔を見せる校長。
「机投げないと対応変わらないぐらいなら、別に変えなくてもいいと思いますよ」
私は、別に学校からイジメを無くしたいなんて思ってないし。
イジメは人間の必然。
群れれば当然弱者は出る。
私は、強者にのし上がるだけである。
教室に行くと、石倉が寄ってきた。
「お前は本物だ。僅か2日で、誰もお前に手出しをしない」
「なによ、急に」
「まこっちゃんが気に入ってる。付き合ってやってくれ」
こういう人間も大変ね。
「まあ、別にいいけど」
「それと、俺は、リーダーにやっぱり向いてないか?」
「ええ。『リーダーになれるか?』という質問だったら『なれる』と答えるけど、『向いてる?』と言われたら『向いてない』」
「なら良いんだ。ありがとう」
石倉はいなくなった。
なんだ、あいつ。
「なあ、今日、どっか行こうぜ」
大川が声をかけてくる。
「くらもお前気に入ったってよ。3人で行こうぜ」
「くら?」
なにそれ?
「石倉」
なるほど。
「別にいいよ。今日はどこ行く?」
「カラオケ行こうぜ」
カラオケ、カラオケ。
なるほど。
「いいよ」
お昼
「……ねえ、誠とカラオケ行くってマジ?」
知らない女が来る。
あ、こいつ大川の女だ。
誠。
大川誠か。
「別に彼女になる気ないから安心して」
「そんな事言われても。あんた急に綺麗になるし、性格変わるし」
こいつは、記憶によればイジメには参加せず、むしろ同情的だったらしい。
まあ同情だけしたってね、なんでしょうけど。
「じゃあ、新さんも来ればいいじゃない」
四人でカラオケ行くことになりました。
その間
「あの狼みたいな化け物、アメリカとかにも出たらしいよ」
「中国もだって。でっかい熊とか。なんか世界中で大騒ぎだって」
世界中に魔獣か。
私の世界からも誰か来てるのかな?
龍姫とか。あいつ来たら楽なんだけどなぁ。
あとジュブグラン。
元部下だれか来て~。
カラオケボックスに入ると
「なに歌う?」
さて。歌ね。
記憶を漁ると色々歌はあるが、私の好みは
『Just result bursted end!!!』
絶叫。
アニメの曲らしい。
私はテンポの速いのが好き。
「すげー激しいな。格好いいし」
「というか、歌上手くね?」
男二人から誉められる
「負けないぞ! 次私!」
張り切って新が歌う。
その間、何故か石倉がやたら寄ってくる。
「お前、そんなに度胸あって、顔も美人で、身体も良いのになんで、虐められてたんだ?」
「肌は知ってるでしょ? 一つでも大きな欠点があればね。いくらでも卑屈になるのよ」
「今はこんなに綺麗なのに」
こら、触るな。
「だから生き方変えたの」
カラオケは盛り上がって終わった。
「またこの四人で行こう!」
何故か新はハシャいでいた。
大川は、新とベタベタしていて、私は石倉にやたら絡まれていた。
それはともかく、カラオケは面白かった。
また行きたいな。
そう考えて歩いていたら、また黒ずくめがいた。
「世界に異変が起こっている」
「だから?」
「私達の同士となり、共に闘いましょう」
「嫌だ」
同士って、お前何様だよ?
私は聖女様だぞ。
私の同士になりうる存在なんて龍姫ぐらいだ。
もっとも、あいつが同士になれとか絶対言わないけどな。
「このままでは、魔物は、世界を滅ぼす」
「知らないわよ」
必要になったら殺すだけだ。
「あなた、前世の記憶あるらしいわね。聞かせて。なんてお名前だったの?」
「聖女」
「聖女? お名前は?」
「聖女で知らんなら、知らんのでしょうね」
違う世界からも来てるのかな?
話で聞くと、私の元いた世界にはいなかった魔獣も出たらしい。
「待って! 話を聞いて!」
嫌だよ。さようなら。
夜。
ニュースを見る。
全世界で巻き起こる魔獣の害。
こんな事は今まで一度も無かったらしい。
私と同じタイミングで来たのか。
画面でその魔獣の姿が写るが
「こんなの見たこと無いな」
巨大な蛇に翼が生えた生き物。
伝承でも聞いたことがない。
多分別の世界の生き物。
国によっては、致命的な被害も生まれているらしい。
「大変だねぇ。まあ、電気とか凄い世界だからなんとかするでしょ?」
私は、他人事のように見ていたが
『これは恐ろしい話です。例えば、軍施設の核爆弾、原子力発電所などに、このような化け物が侵入したらどうなりますか? その街全体が、下手をしたら世界が滅びかねない』
「は?」
『核爆弾がその場で炸裂したら、自動的に防護システムが作動することもあります。そうなれば、世界に向け核爆弾が発射されることに』
記憶を引き出しながら、整理すると
「一カ所破壊されると、街全体が吹き飛ぶ施設がいっぱいあるのか」
よくそんな状況でみんな寝れるね。
「うわぁ……じゃあ、とりあえず、この近辺の魔獣は殺さないとダメ?」
というか、サーチできるかな?魔獣。
とりあえず魔獣の生命力は極大だ。
分かりやすいとは思う。
探すと
「……? なんか、多いな」
ダメだ。多すぎて絞れない。
全部が魔獣とも思えない。
別のモノが引っかかってる?
まあいい。
「明日は調べ物をしましょうかね」
おやすみなさい