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ヒロインは悪役令嬢に見つかる

作者: あきみつ

息抜きに書いたものです

「見つけたーーーーー!!!!見つけた見つけた見つけた見つけたーーーーー!!!!」


そんな叫び声が聞こえて振り返ると、綺麗に腰まで伸びた赤髪に、真紅の瞳の美少女がいた。


「ディック!!!捕まえて!!!!」

「へいお嬢!!!!」


気付いた時には布でぐるぐる巻きにされ、俵担ぎで攫われていた。



着いた先は公爵家・サルジルの邸宅だった。


「やっと見つけたわヒロイン。いえ、マリネット・トゥーイ」


「あの、どうして私の名前・・・。いえ、それよりも貴女は、」


「そうね、申し遅れたわ。私はレジーナ・サルジル。このサルジル公爵家の一人娘にして貴女のライバルよ!!」



声高々と宣言したレジーナ様はビシィッと私を指さし続ける。


「10歳で前世を思いだし、ここが乙女ゲームの世界で、自分が悪役令嬢だと気づいてから早6年。悩んだわ。悩みに悩んで夜も眠れなかった」


嘘っすよめっちゃ夜爆睡してたじゃないっすかと後ろで従者の方が呟いている。


「貴女は今年、ルイアーナ魔法学園に入学するわね?」


「は、はい」


「そこで貴女は数多の男性と恋をするの。その中には私の婚約者であるエドワード殿下もいらっしゃるのよ。考えたわ。どうにかこのゲームを回避し婚約破棄からの国外追放バッドエンドを逃れられるのか」


「は、はぁ」


言っている意味は全く理解できないけど、口を挟める雰囲気でもなくただ聞くことしか出来ない


「そこで私は思いついたのよ。始まるのを待つくらいなら始めればいいんだって!さぁマリネット行くわよ!!殿下の元へ!!!」


「え、えぇ!?」


ぐるぐる巻きにされたまま、また従者の方に俵担ぎで連れていかれた。




「たのもーーーーう!!!」


バーーーーーンとレジーナ様が扉を開けた先には二人の男性がいた。


「レジーナ・・・ここは王宮だよ。もう少し礼儀を弁えたらどうだ?」


ため息を付きながらレジーナ様を諭したのは、この国の次期国王であらせられるエドワード殿下だった。

平民の私なんかが、こんなに近づける様なお方ではない。


エドワード殿下の後ろに控えているのは、エドワード殿下の護衛のイシュタル様だ。

俵担ぎされたままの私と目が合う。


「レジーナ様、そのお方は・・・」


「ヒロインを連れて参りましたのよ!!!」


「またその話か・・・・」


呆れたようにエドワード殿下が呟く。


「何度も言うけどねレジーナ。僕は君との婚約を破棄するつもりなんて全く無いからね」


「この子を見てもまだそんな事が仰れるかしら?ディック!」



ディックと呼ばれた従者の肩から降ろされ、布を取られる。

現れた私をエドワード殿下が見つめる。


端正なお顔にまじまじと見られると恥ずかしくなり頬が赤くなるのが分かる。


ほらっ・・・今マリネットは殿下に惚れたわよ・・・っ!とレジーナ様が従者の肩をバシバシと叩いて呟いているのが見えた。


惚れたというか、人にまじまじ見られて恥ずかしくならない女の子がいるかしら。

そのお相手がエドワード殿下だとしたら尚更


「はぁ・・・それで?この平民の子がどうしたって?」


「だから、ヒロインですって!何か惹かれるものがございますでしょう?」


「特に。」


ちょっと傷付いた


「レジーナ、君は平民の子にこんな真似をさせて迄僕との婚約を破棄したいのか?そんなに僕の事が嫌いなのか」


「き、嫌いだなんて!むしろ好きすぎる位ですわ!!」


「お嬢顔まっかかー」


ケラケラ笑う従者の肩をレジーナ様が思い切り叩く。


鋭い瞳で従者の方を見つめるエドワード殿下に、足が震えた。

私、何の為に此処に連れてこられたのかしら・・・



「なら何故6年間も婚約破棄をしたがるんだ。そろそろ僕も限界だよ。閉じ込めてしまおうか?」


スッと目を細めるエドワード殿下にレジーナ様も流石に怯える。

怯えていないのはイシュタル様と従者の方位だ。


「殿下お嬢をそんなに怯えさせないで下さいよぉ。お嬢だって殿下の事を引き留めるのに必死なんすからー」


「ディ、ディック!!」


わたわた慌てるレジーナ様を殿下は愛おしそうに見つめている。


私・・・どうしたらいいの・・・帰って平気かな・・・・


「申し訳ございません。えぇっと・・・・」


「あ、マリネット・トゥーイと申します。あの、私どうしたら・・・」


所在投げに立っていた私に気を使ってか、イシュタル様が話しかけて下さった。


「レジーナ様は何時もあぁなのです。ヒロインがどう、自分は悪役令嬢だから殿下を奪われるのだとか」


「まぁ・・・」


見た所、お二人は両想いに見えますけれど



「そ、それにこの方は『女神の祝福』をお使いになられるのですよ!」


急にレジーナ様に腕を引かれエドワード殿下の前に立たされた。

『女神の祝福』?


「マリネット、いい?私に続いて」


「は、はい」


いきなりの事で訳が分からず、レジーナ様に従う。


「掌に力を集める感じで、集中して」


「はい」


「『我は乞う 我らが世界の憂いが去ることを』」


「わ、我は乞う 我らが世界の憂いが去ることを」


「『汝が為にこの祈りを捧げん!』」


「汝が為にこの祈りを捧げん!」


次の瞬間、掌から光が飛び出し、天井で弾けた


綺麗だと思った。



「うそ・・・・」


「レジーナ・・・・君は・・・・」


レジーナ様の掌から、『女神の祝福』は発動した




あの後、すぐにレジーナ様とエドワード殿下の結婚式が行われた。


『女神の祝福』という失われた魔法を使えると知ったエドワード殿下が誰にも取られまいと、学園入学前にとお急ぎになられたのだ。


あんなに可愛いらしく美しく、さらに『女神の祝福』が使えるとあれば、横から攫われてしまう可能性もあるかららしい



レジーナ様の勘違いで王宮に連れて行かれた私はというと


「いやぁおさまる所におさまって良かったっすよぉ〜。ホント、お嬢には振り回されたっす。」


従者のディックさんとお茶をしていた。


「レジーナ様は一体どうして勘違いされてらしたのかしら?」


「不思議っすよねぇ。あんなにヒロインがヒロインがって言ってたのに、自分が発動させちゃうんすから」


お互いに苦笑する


お茶を一口飲みカップを置くと、ディックさんが真剣な顔をして話始めた


「でも可笑しいんすよ。お嬢は今まで何度も試してたっす。それなのに発動しなかったんすよ。それなのに突然発動した。可笑しいと思わないっすか?」


「魔力が足りてなかったとかではなく?」


「お嬢は何時も万全の状態で挑んでたっす。ただ一つ違うのはあの日、貴女がそばに・・・・」


「ディックさん」


ディックさんが話してるのを遮るように声をかけ


「もし良ければ、私と結婚致しませんか?」


ニッコリと笑った。


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