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23 新生

お仕着せ=主人もしくは雇い主から支給される服。制服。ファンタジー世界だと大抵の場合メイド服。


 リージェの素の問いには、フィンではなく、クロイが答えた。


「大勢の前で、あらためてバラバラにでもする気か。ひでえなあ」

「いや。()()()()、治さなくてもできた」

「怖えぞおい。じゃあ何だよ」


「これを、譲り受けたい」


 フィンは、クロイの黒剣を鞘の中程で握って突き出すと、子供のように言った。


「欲しい」


「あんたが勝ったんだ、持っていけばいい」


「それでは盗賊と同じだ。

 これは、魔剣だ。すごいものだ。

 こういう品は、相手を殺したりして無理矢理奪うと、悪いものが貯まる。

 悪いものが貯まると、どんなものでも、使いづらくなる。

 なので、譲ってほしい。

 剣が認めた持ち主から、別な持ち主へ、まっとうに。

 そのために治した」


 クロイは、助けを求めるようにリージェを見た。


「……ここは、命の恩人に、恩を返すべきなのかね。

 譲った直後に外の連中へ引き渡されそうなんだが」


「少年」


 フィンも、リージェを見た。


「いや………………いくら君の頼みでも、それだけは……」


 事情は聞いた、クロイのおかげで結果的に生き延びた住民は少なくないこともわかった。

 しかしゲール一味の副官だったことは事実で、怨みを晴らしたがっている者はまだまだ数多い。


 リージェにしても、盗賊団への恨み憎しみは今の自分を作りあげた原材料だ。まだ残っている他の盗賊たちも、首領を討ったからといって許してやる気持ちはまったくない。


 クロイの口元が、意地悪く歪んだ。


「ということだ、お嬢さん。

 せっかく治してくれたのに悪いが、そいつは、奪って持っていくしかないようだな」

「むう……」


「……フィン。僕が()()


 リージェは自分の剣に手をやった。


「こいつに、僕がとどめを刺して、その剣を奪う。

 それから僕が君に譲ればいいだろう」


「ま、それが、一番いいだろうな」


 クロイは自分の命を失う選択を、軽い口調で認めた。


「リージェ、だったな。いい目だ。今まで見逃してやってたんだが、そうじゃなくても、捕まえられなかったかもしれんな」

「お世辞だろうけど、ありがとう」


 リージェは剣を抜いた。

 フィンも、何か言いたげではあったが、リージェを止めることはなく――。


 立ち上がり、ニンシキソガイの布の幕を取り外し始めた。

 つまり、もう見られても構わないということ。


 クロイの心臓に刃を突き立てようとした、その時だった。


「待って!」


 女の声が割って入った。


「待ってくれ!」


 男の声もかぶさった。


 人が、この広間のさらに奥の扉から、何人も飛び出してきた。


 女は、みな若く、美しかった。着ているものも、かつて領主の館で働いていた者のお仕着せ、そのまま。

 五人いる。


 男は、線が細く、明らかに『騎士』ではなかった。

 こちらは二人。やはり若い。リージェと大差ない年頃だ。


 その七人が、ドッと押し寄せてきて……。


 クロイをかばって、リージェを押しのけた。


「!!!」


 リージェは愕然とした。


「ミリス!?」


 少女たちの中に、知っている顔があった。

 よく知っている、()()()の、()()()()の……。


「リージェなの!?」

「ミリスだよな!?」


 あの災厄の日に根こそぎ失われたと思っていた、甘く懐かしい過去が、可憐な少女の姿をとってそこにいた。


「生きてたの!?」

「生きていたのか!」

「生きてた……リージェ……!」

「ミリス……生きててくれた……!」


 二人は手を取り合いかけて――ハッとした。


 リージェの手には抜き身の剣。

 体からは血の臭い。

 あの日よりも背は伸び、凄惨な経験を積んで、もうおっとりした農家の三男ではない。


 少女、ミリスの身を包むのは、『領主(ゲール)』に仕える者のお仕着せ。

 その表情もたたずまいも、農作業の合間に遊んでいた可愛らしい少女のものではない。


 その彼女が、必死の顔で、リージェに言った。


「お願い! クロイさんを、殺さないで!」

「なにっ!?」


「何やってんだ、お前ら……馬鹿野郎……何で戻ってきた……」

 クロイが、こちらも愕然として、少年少女たちを見回した。

 秘密の抜け道から逃した者たちのようだ。


 リージェはカッとなった。


「どういうことだ! そいつは、盗賊どもの……!」

「わかってる! でも、この人は、違うの!」


 幼なじみが、クロイをかばう――リージェはさらに血が上り、剣を握る手に力がこもった。


「やめて!

 この人だけは、()()()()()しなかったの! 私たちをかばってくれてたの!」

「そうです、クロイさんは、私たちを他のやつらから守ってくれました!」

「この人は、いなくちゃならない人だ!」


「どういう……ことだよ……?」


 リージェは少年少女を殺気をこめてにらみつけたが、おびえつつも皆、クロイをかばう位置から動こうとしない。


「あ~~~」


 クロイは手を額にあて、心底困り果てた様子でうなった。


「いや、まあ……ほら、ここを俺たちの国にしたいって言っただろ。

 国なら、他の国との交渉もあるだろ。交渉するには、使者の歓迎会とか晩餐会とかもやらなきゃならんだろ。

 そういう席には、()()()()振る舞える召使いなんかもいなきゃならないだろ。

 うちの連中にそんなの無理だ。元からいたのは止める前に殺しちまいやがった。なので、見た目がいいのを集めて、それっぽく見えるように練習させてたんだよ。先を考えれば必要だったからな。それだけだよ」


「自分の女だから手ぇ出すんじゃねえぞって、他の人を追い払って……でも、何もしないでくれていて……沢山、教えてくれて……私たちには、とても、優しくて……!」

 ミリスではない、別な少女が、涙目でクロイの傷に手を這わせながら言った。


「散々やられまくって暗い顔してるやつを、よその使者の前に出せるかっての」


「僕たちも! クロイさんのおかげで!」

 少年が必死の形相で言ってくる。

「計算とか暗記は得意だけど戦うのだめで、捨てられかけていたのを、助けてくれて、色々勉強させてくれて……!」


「会計も渉外(しょうがい)交渉も物品管理も買い物も、ほとんど俺ひとりでやってたからな。手伝いがいなきゃくたばるところだったんだよ」


「他の人たちと全然違って、毎日すごく頑張ってて……寝ないで色々書き物してたり、みんな飲んで騒いで――()()()()()してる時に、外を見張って、剣の稽古してたり……」


「うるせえ。誰かがやらなきゃならねえんだ。貧乏くじ引くのは副官の役目だ」


「私が、お父さんお母さんとか」ミリスが言った。「リージェのこと思い出して、泣いてたら……すまないな、って、頭を撫でてくれて……」


「黙れ、ガキ」


 クロイは顔の上半分を手で隠したままだが、耳が赤くなっていた。


「だからわかって、リージェ。この人は、クロイさんだけは、この国が良くなるように、みんなができるだけ沢山生きていけるようにって、思ってくれてたの……だから……!」


「そんなこと言われても……!」


 盗賊どもは皆殺し。それは変えられない。


「いいから殺せ。勝った者の権利だ。殺してくれぇ……」


 クロイの語尾は弱々しくかすれて消えた。

 耳どころか首筋全体が真っ赤になっていた。


 リージェの剣が葛藤に揺れ動いた。



「……どうでもいいから、早くこの剣を譲ってくれ」


 かたわらから、すべてをぶち壊す声がかかった。


 リージェ以外の全員が激しくビクつく。


 外したぼろ布を頭からかぶった、謎の存在が突然出現したのだ、当然だろう。


 クロイは顔の手を外して、そっちを見た。


「あ~~~~………………………………はぁぁぁぁぁぁ…………」


 重たく長いため息の後に、すべてが面倒になった顔をして、クロイは言った。


「わかった。やるよ。

 我が所持せる至宝、死神の剣(ザグレス)を、剣聖フィン・シャンドレンに譲る。

 ……あばよ。お前は最高の相棒だった」


「うむ!」


 フィンは、リージェも初めて聞く、素のままで朗らかな声を発した。

 握った黒剣を高々と掲げる。

 ぼろぼろから出ているのは腕だけで、顔は見えない。


 本人以外の全員が、流れについていけない顔で固まっている中で、シュッと、抜いた。

 反りのある刀身、鋭い切っ先。黒々とした刃は星のきらめきを宿して鮮麗に輝く。


「これはいいものだ。うむ………………()()


 リージェは喉を鳴らした。肌で感じた。その黒い刃に斬れないものはこの世に存在しないだろう。

『剣聖』が、さらに強くなった。


 クロイも賛嘆の声を漏らした。


「すげえ、似合ってる。

 元は、ぶくぶく太った金持ちが、屋敷に隠してたものなんだが……きっと、あんたのところに行くために、一時(いっとき)だけ俺のものになったんだな……こいつも貧乏くじだな、やれやれ」


 刃が、鞘に吸いこまれた。


「感謝する。()()()、感謝する」


 ぐうたら者が、今までよりさらに苦労せず相手を斬れる道具を手に入れて――心から弾んだ声で言った。


「で…………剣が欲しいから、ってだけじゃないだろう、俺を生かしておくのは」


 クロイが、さすがに歴戦の者だけあって早々に気を取り直し、ふてぶてしくフィンに問うた。


「察しはついた。外の連中の()()を、俺にさせる気だろ」


 急を告げる鐘の音を聞いて、もうじき駆け戻ってくるだろう数十人もの盗賊たち。

 彼らに、ゲールの首を掲げリッキの遺骸を晒し、その上で副官のクロイと斬り合わせるのが狙いか。

 盗賊どももかつてはこの土地の人間にやらせていたことだ。『兵』になるための試験は、顔見知りを殺させることだった。


「これまでの仲間を殺させるか。それと引き換えにこのガキどもの命を助けると。残酷なやつだなほんと」


 口では非難しつつも、汚辱をきわめる行為を引き受けるつもりが明白な、重たい声でクロイは言う。


 しかし、フィンはさらりと返した。


「いや。()()はもう終わっている」

「?」


 フィンは、小さな袋を取り出し、逆さにした。


 塩やら薬やらの、あの袋と同じものだが――中からこぼれ落ちたのは、きらきらした、透明な……粉末ではなく、何かのかけらのようなものだった。


「魔法の品だな」とクロイが見て取る。


「ああ。元は小さな、筒のようなかたちをしていて、ふたつずつ組になっている。

 片方を壊すと、どれだけ離れたところにあっても、もう片方もすぐ壊れるんだ」

「あ」

 クロイだけが、理解した様子の驚きの声をあげた。

「まさか……()()()()()()か!?」

「ああ」

「?」

 リージェは首を傾げる。


()()()だよ。俺たちの。

 近くまで来てるんだろ?

 先に侵入したお嬢さんが、俺たちを確認したら、そいつを壊す。

 そしたら、騎士団長か誰か知らんが、そいつが持ってるもう片方が壊れて、ここへ向かって進撃開始ってわけだ」


「ああ。ブルンタークの赤竜騎士団と銀斧戦士団、シュムベルクからもひとつ部隊が出てきてる。合計一千人ほど」


「最精鋭じゃねえか……そこまで憎まれてたか……まあ、いっぱい暴れたからなあ。むしろ少ないくらいだ」


 リージェは唖然とし……外の世界のことを何とか理解しようとし……理解できて、呆然となった。


「みんなに叫ばせた、()()も……?」


 ブルンターク軍が近くまで来ている。シュムベルクの軍もいる。

 あれもまた、嘘ではなかったのか。


「ありそうな話を新しく考えるのはめんどくさかったからな」

「いつ、壊したんだ?」

「荷台の上で」


 最初に会った時。

 つまり、昨日の昼前……『関所』を抜けてすぐ……ということは。


「もう、来てるのか?」

「いい訓練になると、伯父上も乗り気でな。銀斧戦士団には、忍びの技を得意とする者が多い。山を越えて『関所』を襲うことなど簡単だ」

「じゃあ……今頃は……」


 地響きを感じた。

 リージェの知らない音。大軍の馬蹄。近づいてくるようだ。


「来たな」


 館の外から、騒ぐ声が流れこんできた。

 駆けこんできた仲間が、リージェを呼んでいる。


 一千もの数の、戦闘の専門家たちが到着したのなら、盗賊団の残党など鎧袖一触(がいしゅういっしょく)だろう。


「ああ、わかったよ。ほんとひでえ女だ。

 俺を()()()()にするつもりだな。

 ゲールはそいつが討った。リッキもやられてる。

 それじゃ、せっかく出向いた騎士団の手柄がない。

 副官、『黒剣のクロイ』の首なら、成果としては申し分ない」


「いや」


 これもまた、フィンは容赦なく一蹴した。


「そういうものが必要なら、私が斬ってる」

「ええぇ…………」


 考えつくことを片端から否定されて困惑するクロイに、リージェは少しだけ同情した。


 そしてフィンは言った。


「すばらしい剣には、それにふさわしい、()()()()()()()が必要だったからだ」


 足を開き身を低くして、前にクロイがそうしたのと同じ、鞘から抜き打つ体勢を取る。


 ぼろぼろの中から、すさまじい殺気が叩きつけられた。


「!?」


 全員が麻痺した。

 リージェすら。


『剣聖』の、これが、本当の、本気。


 相手を必ず斬るという絶対の意志――それはもう、殺気というものを超えた、鬼気と呼ぶしかないものだった。


 少女たちの何人かが、立ったまま失禁した。

 狙われた相手の死は確定事項として、それだけでなく、場の誰もが、自分も一緒に斬られると確信した。


『剣聖』――剣をもって生業(なりわい)とし、剣を振るうために生きるもの。

 ならば、人を斬る道具である剣に、血を吸わせるのは当たり前。


 リージェは魂に刻みこまれるように深く思い知らされた。自分が知るフィンは、まだほんの一部にすぎなかった。常人の及ばない、冷酷きわまりないものが、剣に生きる彼女の中にはあるのだった。


 漆黒の刃がひらめいた。


 小さく、しかし鋭く――何度も。


「あ……!」


 わずかなうめきをリージェは漏らした。


 恐怖に凍りつくクロイの――。


 口髭(くちひげ)が落ちた。


 髪が、大量に、舞い散った。


 服が、腕や脚や胴体、すべての部分が切断されて、一気に素肌があらわれた。


 チン。かすかな金属音と共に、黒剣がフィンの腰に吸いこまれる。


 後に残るのは、耳のあたりにわずかな髪だけを残した、つるつるの、ほぼ裸のクロイ。


「な………………()()()()()()…………」


「ゲール盗賊団の副長、黒剣のクロイを斬った。この剣にふさわしい強敵だった」


 フィンが、立ち姿を一切動かさないまま、声だけ漏らす。


「そこにいるのは、この少年の兄……ええと」

「アルツェ」

 長兄の名を、リージェは何も考えられないまま口にする。


「そう、その名前の者だ。盗賊に捕まっていたがかろうじて生き延びた、被害者だ。少年、他の者も、いいな。兄だ」

「あ……ああ……」


 思考が追いつかないまま、リージェはうなずいた。

 クロイは自分の父親と同じか、それ以上の歳と思われる。

 でもうなずくしかなかった。


「いくつだ、お前?」

「多分……25」

「兄として、問題ないな」

 思っていた以上に若かった。苦労していたせいだろう。


「何か着せてやれ」


 少女たちが我先に、自分が羽織っているものを脱いでクロイにかぶせていく。


「これからは、沢山死んだ人たちを(とむら)い祈る、神官として生きていけ。顔は焼かれ、足をやられてまともに歩けないから、表に出ることもできない。そういうことだ」


「あ…………」


 ようやく思考が戻ってきたらしいクロイが、声を漏らす。


「……ひでえな。毎日手入れしてたのによ」


 見事に生え際から切り取られつるんとなった頭頂部や口元を撫で、脱力して言う。

 その引き締まった長身の支えとなるべく、少年少女たちが、自分の体を使ってくれと群がった。


「歩くなってことか。面倒だなあ」


「がんばれ。()()()()()()()()()()()()()()からな」


 誰にも意味のわからないことを、フィンは言った。


 館に回った火がいよいよ大きくなってきたらしく、一階のこの広間にも、きな臭いにおいや、目に見えるほど色濃い煙が漂い始める。


 外から呼ぶ声がさらに大きくなり、リージェはフィンを振り仰いだ。


「行ってやれ。お前が、これからの、ここの()()だ」


「え………………あ………………!」


 フィンに言われて、初めて、()()()()()()()が頭に浮かんだ。


 元村長の息子で、解放軍の頭目にして、ゲールをその手で討った若き英雄。

 生き残ったこの土地の人々の代表として、最もふさわしい。

 つまり、次の領主。


「…………!」


 ゲールに立ち向かったのとは全く違う種類の恐怖心が湧いた。


 何百人という生き残りの人々をまとめて、街をはじめ、いくつもの村を復興させていく。

 ブルンタークをはじめとした外の世界との交渉もあるだろう。元の暮らしを取り戻すために必要な物資の買い付け。商人とのやりとり。入りこんでくるだろう厄介者への対処。二度とこういうことがないようにするための、防衛体制の構築。

 父親がやっていたこと、それぞれの村の村長が、領主一族がやっていたこと……沢山の人たちの生活がかかった、これから何年、何十年と続く様々なことの責任を一身に負わなければならない。


 15年しか生きていない少年には想像したこともない重責が、両肩にのしかかってくるのは間違いなかった。


「あ、あの……!」


 リージェはフィンにすがる目を向けた。


「お前にはこの『兄』がいるだろう? 知恵も経験も、徹底的に使い倒せ」

()()か! ひでえ!」

 禿頭の『兄』が叫んだが無視される。

 幹部を生かしておく理由が明らかになった。生まれ変わったこの小さな国の、顧問に据えるつもりだ。自分がそうされないために。


「そうだけど、そうじゃなくて!」


 ブルンタークの軍が来た、盗賊退治という『剣聖』の任務は終わった、後の面倒を見てくれる相手も用意された…………ならば、彼女は元の国へ帰ってしまう……()()()()()()()()……!


 泣き出しそうな、大柄な少年に、幼なじみの少女が寄り添った。


「私も、手伝うよ……リージェ。がんばろう」


 支えてくれる体は、熱かった。

 心から嬉しく思った。


 でも……今のリージェが欲しいのは、それではなかった。


「…………」


 リージェが涙目で見つめる相手は……。


 ぼろぼろを、わずかに開いて。

 リージェにだけ顔を見せて。



 最も欲しい言葉をくれた。



「帰ると、めんどくさいからな。

 ()()()()()()

 楽をさせてくれるだろうな?」


「っ!!」


 リージェは雷に打たれたように、猛烈に何度も何度も何度も何度もうなずいた。

 穴という穴から水分があふれ出てきた。

 せっかくの美貌が歪んで見えなくなった。


「……()()


 なまけ者の剣聖は、小さく拳を握って口にした。




 やがて、城館は全焼した。


 夕焼けの最後の色合いが山肌から消え、辺りを包む宵闇の中、まぶしいほどに燃え上がる。


 これまで君臨していた邪悪なもの、そのすべてを滅ぼす浄化の炎。

 生き残った誰もがそれを見つめ続けた。


居候先ゲット。

寄生する相手、とも言う。


大団円……ではありません。次が最終話、エピローグです。


あと解説。

討伐軍が来ると知っているのにフィンが色々動いたのは、騎士団に犠牲を出すなと伯父から命令されていたからです。万全の状態だと、関所から警報を出されゲールたちが体勢を整えてしまい、まともに攻めると騎士団にも現地住民にもかなりの犠牲が出ることが想定されました。それを避けようと内部攪乱を試みた結果です。

また、作中では誰も情報を得ていないので触れていませんが、関所を守る30人からも森へ勝手に行ってしまった者が出ており、防御体制は崩れていました。

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