29年目のラジオ体操
最近、町内のラジオ体操に参加している。
朝早く神社に集まってラジオ体操をするのは、小学生の夏休み以来だと思う。
あの頃は、首から下げたスタンプカードにハンコをもらうため、一生懸命早起きをしていた。ハンコの数に応じて、ノートや鉛筆を貰えて嬉しかった。
もちろん、大人のスタンプカードはそれとは一味違う。一定の期間中に出席率が9割を超えると、商店街の3割引券が貰える。それは恐るべきことに一回限りではない、向こう1ヶ月間割引され続けるという代物なのである。
またまた恐るべきことに、達成者全員にという太っ腹さである。
しかし、なまなか手に入れるのは苦難を極める。
9割の出席者は、意外と周りにいる。が、その9割のうち3割を模範体操者として衆人環視の中、体操を披露しなければならない。
つまり模範体操とみなされなければ、9割出席しても割引券は貰えないのである。
何度もチャレンジ可能ではある。
だが、未だに模範体操として表彰された人間はおらず、皆、四苦八苦している。
現在、私も王手をかけているが、半ば挫折した感がある。もちろん、努力はした。その結果、箸にも棒にもかからなかったのである。
審査を苛烈なものにしている要因は、商店街会長兼呉服屋さんを営む、A氏。
彼の卓抜たる眼力に適うのは、正直かなり厳しい。
普段は穏和なおじいちゃんなのだが。審査に関しては別なのである。「体操者は表現者たれ」と、指の先まで寸分の狂いも許さない。
偏執的な物の見方と思うなかれ。彼は戦後の朝のラジオ体操番組を25年間勤め上げた、功労者であり、歴戦の模範体操者なのである。
その彼をして、「天稟」と称する人物が最近登場したのである。
弱冠6歳の女の子。隣町に出現し、模範体操者としてA氏が依頼を受けた際に、そのラジオ体操の神童を発見したらしい。
この少女の名が、ラジオ体操界に轟くのは時間の問題である。もう何人かの門下生がいるらしく、私も近いうちに彼女に師事しにいくつもりである。