表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

29年目のラジオ体操

作者: 水原 たか

 最近、町内のラジオ体操に参加している。

 朝早く神社に集まってラジオ体操をするのは、小学生の夏休み以来だと思う。


 あの頃は、首から下げたスタンプカードにハンコをもらうため、一生懸命早起きをしていた。ハンコの数に応じて、ノートや鉛筆を貰えて嬉しかった。


 もちろん、大人のスタンプカードはそれとは一味違う。一定の期間中に出席率が9割を超えると、商店街の3割引券が貰える。それは恐るべきことに一回限りではない、向こう1ヶ月間割引され続けるという代物なのである。

 またまた恐るべきことに、達成者全員にという太っ腹さである。

 しかし、なまなか手に入れるのは苦難を極める。


 9割の出席者は、意外と周りにいる。が、その9割のうち3割を模範体操者として衆人環視の中、体操を披露しなければならない。


 つまり模範体操とみなされなければ、9割出席しても割引券は貰えないのである。

 何度もチャレンジ可能ではある。

 だが、未だに模範体操として表彰された人間はおらず、皆、四苦八苦している。


 現在、私も王手をかけているが、半ば挫折した感がある。もちろん、努力はした。その結果、箸にも棒にもかからなかったのである。

 審査を苛烈なものにしている要因は、商店街会長兼呉服屋さんを営む、A氏。

 彼の卓抜たる眼力に適うのは、正直かなり厳しい。


 普段は穏和なおじいちゃんなのだが。審査に関しては別なのである。「体操者は表現者たれ」と、指の先まで寸分の狂いも許さない。


 偏執的な物の見方と思うなかれ。彼は戦後の朝のラジオ体操番組を25年間勤め上げた、功労者であり、歴戦の模範体操者なのである。


 その彼をして、「天稟」と称する人物が最近登場したのである。

 弱冠6歳の女の子。隣町に出現し、模範体操者としてA氏が依頼を受けた際に、そのラジオ体操の神童を発見したらしい。


 この少女の名が、ラジオ体操界に轟くのは時間の問題である。もう何人かの門下生がいるらしく、私も近いうちに彼女に師事しにいくつもりである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ