第四話 傍にいて
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心の章アナザールートです。
一話~三話までは心の章と同じで、四話の途中から違う展開となります。
四話の重複箇所を――――――――――――――――――――――――――で区切りました。
既読箇所を飛ばしたい方は線を目印にスクロールして下さい。
第四話
傍にいて
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二階にやってきた。相変わらず一面コンクリートな景色で嫌になってくる。俺たちは利彦さんから得た「二階には休憩室というシャワーやベッド、食料など生活用品が詰め込まれた部屋がある」という情報を頼りに休める場所を清美さんのチェックポイントを周りつつ探していた。
その道すがら真白さんのミッションを達成するために願いを教えている。
「次はぁ、芯君ね、芯君の願いはぁ何ですかぁ?」
「俺の願いは・・・心を知りたい、というものです。」
「心、ねぇ・・・どうしてそう願ったのぉ?」
「・・・それは、ちょっと勘弁してもらえないですか・・・」
「あらぁ、ごめんなさいねぇ・・・」
別に話しても問題は発生しないのだけど、安易に話す事ではないから・・・
そう言うと、真白さんは菫ちゃんの願いを聴きに行った。
「菫ちゃん~。菫ちゃんの願いはなぁに?」
「・・・・・・えっと・・・」
菫ちゃんもあんまり話したくない様で困っていた。
みんなそんな感じなのかな?
「菫ちゃん、もし周りに聞かれたくないのなら、スマホを真白さんにだけ見せるとかしてみたら?」
「そうねぇ、そうしてもらえると助かるわぁ」
「・・・うん。」
俺が提案すると、菫ちゃんも同意してくれた。
「・・・っ!!菫ちゃん、あなた・・・」
「?・・・えっ!?何で!?」
菫ちゃんがあまり他の人に願いを知られたくない様だから、スマホを見ないようにそっぽを向いていたら、なんか隣が騒がしくなっていた。
「?真白さん?どうかしたんですか?」
「えっ!?いや・・・菫ちゃんって、結構着痩せするタイプでねぇ、さっきおっぱい触ったら私よりもあるみたいでぇ、お姉さんちょっとショックだったのよぉ・・・」
この状況下で何してるんだこの人は・・・
しゃべり方といい真白さんといると命がかかったゲーム中でも緊張しなくて済む。この人なりの気の使い方なのだろうか。
もうひとつ気になるのは菫ちゃんの願い。物ではないけど心を知ることを望んだ俺は、物の心を知るスキルを手に入れた。なら菫ちゃんは何を望んでライフルを呼び出すスキルを手に入れたのだろうか・・・
「!?・・・皆さん~ちょっと待って下さい~。」
真白さんが何かに気付いたようにみんなを止める。
「清美ちゃん、地図を見せてもらってもいいですか~?」
「ええ、どうぞ」
余談だが、清美さんと真白さんは同い年らしい。一応このグループでは最年長、蒼は俺より年下で19歳、菫ちゃんが16歳、さっきの米山兄妹も若いし、水瓶座の子も・・・参加者の年齢は20歳前後なのだろう。
「ちょっと遠回りになりますけどぉ、こっちから行きましょう~。」
「行きましょうって真白、最短はこっちよ。」
「最短ばかりじゃつまんないわよ~、それに、こっちに休憩室がある気がするのぉ~。」
「そんな適当な・・・私のミッションで時間がかかるのに何で・・・。」
「清美ちゃん、真面目なのは清美ちゃんのいいところでカッコいいけどぉ、あんまりカリカリしてると疲れちゃうわよ。おっぱいも育たないしぃ」
「胸は関係ないでしょ!」
真白さんオヤジ臭い・・・
そして清美さん・・・カッコいいんだけど、美人なんだけど、ある一点、いやこの場合な二点か、その二点が物足りない・・・美人だから気にはならないけどね。
菫ちゃんはマフラーとブレザーの所為であまり目立たないけど、真白おじさん曰く大きいらしい
その真白さんもなかなかの物をお持ちだ。
「じゃあ、こうしましょ~、私の未来予知でこっちに休憩室があった未来が見えたってことで」
「真白さん、見えてないんでしょ。俺のスキルでひとっ走りしてきましょうか?」
蒼いたんだ・・・ホント影薄いな、菫ちゃんは引っ込み過ぎて目立つけど、蒼はまさに空気、目立たない。
「こんなところで寿命を使わなくてい~のよ。」
「俺は役に立てればそれで十分なんですよ。」
「遣いっ走りで寿命使うなよ。」
「芯さん達には話してなかったですよね、俺の願い。もうご存じだと思いますけど、俺はすごく影が薄いんです。何をやっても平均ちょい下辺りで、ダメ過ぎて目立つとかもなくて・・・。俺には何も無くて、それって生きてるとは言わないんじゃないかって、周囲の人に認識されなければ、生きた証を残さなければって思ったんです。太く短くでいいから、生きた証を残して、生きた意味を、無色な人生に色をって。」
「だから寿命を消費してでも人の役に立ちたいってことか。」
少しわかる気がする、もちろん生まれたことに意味がないとは思わないけど、自分が周りにどれだけの影響を与えたか、それは生きていたことを色濃く表すだろう。
「まぁ、オトコノコの~くだならい悩みはともかく、進路変えますよ~。」
「どうでもいいって・・・」
真白さんは本当にマイペースなんだから・・・いや、もしかしたら何か良くない未来が見えたのかな・・・
俺はお馴染みとなった壁さんと会話する。
(壁さん、この道の先に誰かいるとか、何かあるの?)
(やっと話してくれたと思ったら情報を聴くだけって、あなた、私のこと本当に愛してるの!?)
この壁めんどくさい
(いいから早くみんなが行っちゃう。)
(そうやって私のことをないがしろにして・・・昔はあんなに愛してくれたのに・・・)
(あーハイハイ、愛してるから教えて下さいお願いします。)
(・・・まったく、しょうがない人なんだから)
アンタはしょうがない壁だよ。
(さっきなんかヤバそうなオトコが通ったのよ。大きめの銃を持って誰かを探して血眼になってたわ)
(ありがとう。それじゃあ)
(早く戻って・・・)
壁が最後なんか言ってたけど、俺はスキルを切って進路を変えたみんなを追った。
真白さん、正直にこの先にヤバいのがいるって言えば良いのに・・・何であんな回りくどい嘘を・・・
進路を変えてしばらく行くと遠くに男性が見えた。こちらには気付いておらず、俺らとは違う道に行くようで、曲がり角に消えていった。
「真白さん、あの人、願い聞かなくていいんですか?」
「う~ん、目的地は一緒だし・・・一人ってことは攻撃的な人かもしれないしぃ・・・それだとスキルを使っても願いを聴くの難しいし、何よりリスクもあるのよねぇ・・・」
・・・どうしようか悩んでいる。俺は・・・
【1:そうですね、危険ですし後での方がいいかもしれません。】
【2:援護しますから、途中で死なれる前に聴いておきましょう。】
・・・なんか謎の選択肢出てきた。
とりあえず俺は2を選んで発言する。
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「援護しますから、途中で死なれる前に聴いておきましょう。」
「そうよねぇ、後で探すの面倒だしぃ、そうしましょうかぁ。」
こうして、俺たちは男性を追いかける。何かを探すように歩いていたので、さほど時間はかからずに追いついた。
「すみませ~ん、私は乙女座の桃山 真白と申します~。お兄さんにお願いがあるんですけど~いいですか~?」
「え?ああ、どうもご丁寧に・・・俺は森村 樹です。」
「森村さんですか~。その、お願いというのはですねぇ・・・」
どうやら、攻撃的な人ではないようだ。とりあえず一安心。真白さんは願いを問題なく聴けたようだ。俺たちのところに戻ってくる。
「この方、森村さんはぁ、山羊座の方だそうです。」
「はい、俺のミッションは水瓶座の人がどうしても必要なんですけど、どなたかご存知ありませんか?」
「私はゲームが始まった時に会いましたよ~。女の子でした~。」
山羊座・・・ミッションは水瓶座を生かして目的地までたどり着く、だったか。
・・・ん?水瓶座って・・・
俺がいうより早く、蒼が森村さんに告げる。
「その、森村さんには悪いんですけど・・・水瓶座の人は・・・もう・・・」
「・・・ぇ?」
「その、俺のアプリは参加者の生死情報なんですけど・・・水瓶座の人は、既に死亡に変わってます。」
「そんな・・・」
ミッションクリアは不可能という状況に陥る森村さん。この人にかける言葉が見当たらない・・・
「死亡に変わったのはいつ!?どこで!?誰にやられたの!?」
「いや、俺のアプリでは、そこまでは・・・確かゲームが始まって数時間後には死亡になっていた、ってことくらいしか・・・」
「ゲームが始まって、数時間・・・ありがとう。」
「森村さーん、ここにいても死ぬだけですしぃ、よければ上までご一緒しませんかぁ?何か別の方法があるかもしれませんし~」
「いや、折角のお誘いですけど、もう少し、一人で頑張りたいんで」
「あら・・・」
「それでは。」
そう言って、森村さんは去っていった。
まだ頑張るってどういうことだろう?みんながみんな頭にハテナを浮かべていた。
森村さんと別れ、進路を進もうとした時、遠くから走ってくる音が聞こえた。正体不明の音に全員が身構える。
しかし、その足音の正体は千尋ちゃんだった。彼女一人で血相変えて走ってくる。
「千尋ちゃん!どうしたの!?」
清美さんが千尋ちゃんを抱きとめ、尋ねる。
「兄さんが・・・兄さんが・・・殺されちゃったよ・・・」
全身が震えている。兄が死んだこと、そして自分も殺されるかもしれないこと、様々な恐怖が彼女を襲っているのだろう。
「落ち着いて千尋ちゃん、利彦さんはどうやって、殺されたの?銃?それともナイフとか?」
「・・・首を絞められて・・・」
「利彦さんはスキルを使わなかったのかしらぁ?」
「そ、その男が、出合い頭に、兄さんの口を塞いだの・・・そのまま床に倒して・・・ぁぁぁああああああ!!次は!次はあたしだ!あたしが、兄さんみたいにっ!!」
「落ち着いて!大丈夫、私たちがいるわ!」
利彦さんの死ぬ様子を思い出したのか、再び取り乱す千尋ちゃん。その千尋ちゃんを清美さんはさらに強く抱きしめる。
すると、千尋ちゃんはスッと落ち着きを取り戻した。
「・・・え・・・な、何、コレ・・・やだ・・・怖い・・・!」
ーーーーー!?
いきなり清美さんが恐怖を訴える。これが利彦さんの言っていた、千尋ちゃんの感情転移能力・・・
その場に蹲ってしまう清美さん、対して、千尋ちゃんは棒立ちとなっていた。
「・・・兄さんのところに、行かなくちゃ・・・」
そう呟いて千尋ちゃんは来た道を走って戻り始めた。
「ちょっと!千尋ちゃん!?」
「どこ行くの!?待ってって!」
呼び止めても止まらない。利彦さんを殺した人がまだいるかもしれにのに、行かせたらマズい。
「ぃ・・・ぁぁぁぁああああ!やめて!!殺さないで!!」
大きな声に驚いたのか、清美さんが怯える・・・
その震える身体を菫ちゃんがおどおどしながらだが、優しく抱きしめる。
「芯君と菫ちゃんは清美ちゃんと一緒にいてあげて。それで、蒼君は私と一緒に千尋ちゃんを連れ戻しに行くわ。」
「真白さん・・・俺よりも真白さんが清美さんに付いた方が」
「あなた達じゃ、走る千尋ちゃんに追いつけないでしょ?戦力的には偏っちゃうけど、速さが必要なのよ。」
「わかりました。真白さんたちも、気を付けてください。利彦さんを殺したヤツがまだいるかもしれませんから。」
「わかってるわ、心配しなくても大丈夫よ私達強いし、それに、またあなた達と会う未来が視えているもの」
そういって安心させるように笑顔を作った。きっとそれは嘘なのだろう、でも、今は安心させないといけない相手がいるから・・・
「ガスも上がって来てるはずだから、少し落ち着いたら私達はいいから先に上に向かってて、上の階で落ち合いましょう。」
「・・・はい。わかりました。ご武運を。」
今後の動きを決め、二人は千尋ちゃんを追った。
「・・・お願いだから・・・独りにしないでよ・・・傍にいてよ・・・」
清美さんの呟きに、俺は菫ちゃんを見習い、言葉ではなく、彼女の手を握ることで答えた。
Another viewing
後を追う
突如走り出した千尋ちゃんを真白さんと追う。
姿は見えないので、俺のスキルで嗅覚を活性化させて、においで追跡している。気分は警察犬。
ふと思ったが、こういった追跡目的でにおいを使うときって、思ったほど「良い匂い」とか「臭い」って意識しないものだった。ただの記号と化している。
「視えた!千尋ちゃんに追いつく未来!」
くだらないことを考えていると隣を走る真白さんからそんな報告が入った。
「ーーーーーーーー。」
その数秒後、足を止める真白さん。どうしたのだろうか?
「どうしたんですか?追わないのですか?」
俺の問いかけには反応しない。
「ーーーーーーー。」
何か未来を見ているのだろうか。
「・・・戻りましょう。」
「え!?千尋ちゃんは?まさか、見捨てるんですか!?」
「・・・あの子は、千尋ちゃんは、お兄さんと一緒にいることを望んでいたわ。」
「え?」
「連れ戻す未来だったのだけど、あの子は、途中で抵抗して・・・自殺したわ。」
「・・・そんな・・・」
「あの子にとって、私達と生き延びることは・・・兄と引き裂かれることは、幸せではないみたい。」
「・・・どうにも、できないんですか?」
「そうね。それがあの子の幸せなのだから」
「・・・・・・。」
あの子にとって、兄と一緒にいるということは、命よりも大切なことなのだろう。俺も命よりも優先したいことがあったから、気持ちはわからなくもない。
「・・・真白さん、せめて、しばらくの間はあの子の傍で護衛をしましょう。」
「そうね、あの子は誰にも殺させないわ」
俺たちは米山兄妹の周辺に張って、二人の最期を守ることにした。
私事で申し訳ありませんが、しばらくの間、更新間隔が開きます。申し訳ありません。(執筆時間の確保が厳しくなりまして・・・)
一応、週一話ペースを目標に頑張ります。
すみませんが、よろしくお願い致します。