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Desire Game   作者: ユーキ生物
幸福の章
32/39

第七話 家族の幸福

「――――待って、私、やっぱり兄さんにスマホは渡せない――――」



「――――兄さんは――――間違ってる――――――」









第七話

家族(ふたり)幸福(せいかつ)








「・・・えっ?千尋?どうしたの?」


 兄さんは事態が理解できていないかのように私を見る。


「千尋? もうゴールするだけなんだよ?どうして――――」


 私は兄さんを真っ直ぐ見据えて、想いを口にする―――


「今のもそうだけど、兄さんは正しいし、合理的だと思う。兄さんのお蔭で底層区画(スラム)でも生きていけたし、兄さんのお蔭で底層区画から出られたし、兄さんのお蔭で米山組からも解放された、兄さんのお蔭でこのゲームもここまで来れた。本当に感謝してるし、助けてもらってばかりの私が、兄さんに意見するなんておこがましいっていうのも分かってる。」


 本当に、感謝してる・・・兄さんがいなかったら私は・・・


「だから、これは(かぞく)としての(かぞく)へのお願い。」

「千尋・・・」

「どうか、正しい兄さんでいて下さい。私達が生きるために他の人を殺すのも、誰かを騙したり、イカサマしたり、そういうのをやめて欲しい。・・・私は、兄さんといられるだけで、それだけで本当に幸せだから・・・」


 本当に、それだけで充分だから・・・


「なるほど、千尋の言いたいことは大体分かったよ。正しいと思う。・・・でも、僕は二人でいられるように全力を尽くしてきたんだ。」


 兄さんは私を真っ直ぐ見て、信念を持った瞳で私に訴え掛ける。






「――――僕は、幸福(しあわせ)は、頑張った人に、その努力の報酬として与えられるものだって、そう、信じてる―――」






 ――――それが、兄さんが今まで全力で私を守って、敵を排除して、財を成してきた理由―――


「現実はそこまで綺麗にできていない、そんなことは分かってる。・・・でも、底層区画(スラム)で生まれた僕達は、そうであって欲しいと、頑張れば報われるって思わないと、境遇に心が折られてしまう・・・だから僕はそれを体現するために、『生まれの境遇は関係ない』って神とか運命に喧嘩を売るために、ここまでやってきた!その結果が今であり、僕は妹を守ってきた誇りと共に、幸せを感じてる!」



 出てきたのは兄さんの信念、流儀、そして、願い――――



 ――――兄さんの確固たる信念を見た・・・そりゃ強いはずだよ・・・



 ―――――――でも、私にだって、ある。兄さんの様に強くないけど、本当に、弱くて、ちっぽけで、すぐに揺らいでしまうけど、それでも確かに“ある”―――――信念。


「だったら、はっきりさせようよ・・・私の正義(かぞく)を想う力と、兄さんの生活(かぞく)を守るちから、どっちが上か・・・」


「・・・・・・・・・・・」


 兄さんは私の提案を無言で聞いていてくれる・・・


「私達は底層区画(スラム)にいた頃からずっとギャンブルで白黒つけて生きていた。なら、その流儀に沿って、“これ”で、決着(ケリ)をつけようよ・・・」


 私の手にはトランプ・・・兄さんとの勝負ならポーカー以外にはないと思ってたから・・・ボソッとその旨を呟くだけで、このゲームの主催者は私の手に用意してくれた・・・きっと、見物人も私達兄妹が命を懸けて争う姿を観たいのだろう・・・気にくわないけど、今だけは、この舞台を用意してくれたことに感謝する・・・


「・・・・・・三回勝負で先に二勝した方が勝ちでいいかな?」


 兄さんは何かを察したのかルールを兄さんの方から提案してきた・・・やっぱり兄さんは侮れない、私に何か策があることを見越している・・・


「・・・・・・じゃあ、それで。」


 三回勝負なら私の能力(スキル)的にも臨むところ・・・






 お互いに山札をシャッフルして、五枚引く―――――


 ・・・・・・うん。思っていた感じになってる・・・


 お互いカードを交換して、兄さんが手札を見せる――――


「僕は、フラッシュだ」


 その手札は全てダイヤだった・・・これはかなり高い、やはり兄さんは強い・・・だけど!


「・・・私、ずっと兄さんに守られてきて、兄さんの強さは知ってる・・・ずっと負け無しだったよね・・・だから、正しいのは勝者、それが常識だった底層区画スラムにいたから、兄さんは間違いに気付けなかった・・・」

「千尋・・・」


 完璧な兄さんに欠けているもの、それは、敗北・・・


「だから、私が――――――兄さんを負かしてあげる―――」


 私の開けた手札はジャックの4カード―――――


「こ、こんなことが・・・千尋・・・何をしたの・・・」




「『運量調整』――――――これが、兄さんを倒すために手に入れた新しいスキル―――」



 私はアップデートをしたスマホの画面を兄さんに見せる。

 私のスマホの画面は今までとは2点だけ変わっていた。一つはスキルの欄、そして、もう一つは・・・願いの欄―――――


「『兄さんと並んで歩ける能力ちからが欲しい』・・・」

「私が兄さんと比べても引けを取らないのって、やっぱり運しかないから・・・そのぶきを大いに使えるスキルが手に入ったの・・・それじゃあ、兄さん、続けようよ。」


 私たちはポーカーを続ける・・・きっと、兄さんもここまではある程度予測していたのだろう、だからこその3本勝負・・・現に私のスキルはあくまで運量を調整するもので、無限の幸運をえることはできない・・・運がよかったのはスキルの本質がアップデート前と同じで、「自分の持っているもの」以上の効果が得られない、ということで、スキル変化によるミッションの変化がなかったことかな・・・


「僕は、フルハウスだ・・・」

「残念、私は役なし、一番上も7・・・」


 兄さんもわかっているはず、これは運を使わずに次への溜めであることを・・・

 この溜めと、追い詰められた時に発揮する私の逆境運・・・これなら兄さんに、勝てる!


 そして―――――――



「僕は――――――」

「私は――――――」



「「4カード」」



 ――――――同じ役・・・ということは――――――


「私は・・・クイーンの4カード・・・」


 私の手元には、ハートのQ、ダイヤのQ、クラブのQ、スペードのQ、そして、クラブのKキング・・・


 兄さんの手札は、ダイヤのJ、ハートのK、ダイヤのK、スペードのK、そして・・・JOKER・・・


 つまり、私はクイーンの4カードに対し、兄さんはキングの4カード・・・



 ・・・・・・負け・・・た・・・・・・どうして・・・・・・



「・・・大切な家族を守るための能力ちからを、僕は運には頼らない―――」


 ・・・・・・兄さんの能力(イカサマ)・・・運とか、そういう次元の話じゃなかったって、ことなのかな・・・

 でも、これじゃあ、誰が兄さんを正すことが――――


「正しくなくても、卑怯でも、かぞくを守るために身に着けた能力ちからなんだ・・・」


 そう言って、兄さんは、私を抱きしめた・・・


「・・・でも、この能力ちからも、この守り方も、今ので、最後だ。」


「――――えっ?」


 それって、どういう――――


「確かに、僕は千尋のスキルに勝った、だから、さっきの勝負が理由じゃない・・・だって―――」


 そして、兄さんは私を更に強く抱きしめ、続けた――――


「―――だって、妹のお願いを聞かない兄はいないから――――千尋がお願いをした時点で、僕の負けだよ・・・」


「兄さん・・・」


「―――これからは、僕達二人で、正しく生きよう。」


「・・・うん。」


 私は兄さんを抱きしめ返し、そして、スマホを兄さんに渡した。


「そのスマホは、壊しても大丈夫だよ。」

「でも、もし、千尋がクリアできなくなったら―――」


 兄さんは少し躊躇う・・・


 私は、もう一つのスマホを、新しい願いの書かれた方のスマホを、兄さんに見せる―――


「・・・千尋・・・正しくって言い出したのは千尋なのに・・・」

「フフッ・・・これが最後だから許してっ・・・だって、私、兄さんの妹だもん!」


 そう、兄さんに渡したのは「天秤座だと主張するスマホ」・・・そう、蠍座の女の子の亡骸から出てきた二つのスマホの内の一つ、ちょっと拝借してきた・・・ジョーカーのスマホ・・・

 そして、兄さんは”天秤座のスマホ”を破壊した。





「――――――おめでとうございます。ゲームクリアです―――――――。」









エピローグ



 ―――――このゲームの対価コストを支払ってもらうよ――――――


 私と兄さんは、謎の空間にいた―――――


 手を握っていないと兄さんとはぐれてしまいそうな、そんな混沌とした空間―――


 ただ、何者かの声が届く、ただそれだけの空間―――――


 ―――――対価コストは二つに一つ・・・・・・今まで貯めてきた財産を全て失い、底層区画スラムに戻るか・・・財産は二人で分けて、家族を失うか―――――



 そんな二択に意味なんてなかった――――家族よりも大切な幸福ざいさんなんて存在しないのだから―――


―――――だから、私たちは、二人で、答えた―――――――――

――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

―――――――――――――

――――――――

―――






 ――――――――日の当たらない建物の陰で、砂埃と、血肉の腐臭が漂い、悪が闊歩する底層区画スラムに私達は戻って来た・・・


 ―――今度は、兄さんに任せずに二人で、正しく生きていくと決めて―――


 財産もなく、明日着る服も、食事の保障もない、そんな生活を強いられた私たちだけど、それでも数年後に朽ちるまで、私たちは笑っていられた―――――


 大好きな家族がいれば、それだけで、幸せなのだから





幸福の章 完

どうも、ユーキ生物です。


 幸福の章、如何でしたでしょうか?底層区画とか恐らくこのシリーズで最も設定に拘った章になったはずです。

 幸福はそこにあるものなのか、努力で手に入れるものなのか、というのが個人的にこの章がお気に入り理由となる主題(テーマ)です。私は圧倒的後者派ですので、物語内で超主張しました。

 エピローグはなんか不完全燃焼になりました。プロットではこんなことにはならない感じでしたが、書いてる時の勢い(徹夜三日目)でやりました。何だかんだ気に入ったのでそのまま投稿しました。


 ええ、少々忙しさがましてきまして・・・まぁ読んで下さってる方から見たら関係ないかと思いますが・・・

 ですので、次の章は少し間を開けさせていただきます。サボりではなく手を抜きたくないので・・・


 まぁ、ここまで読んでくださった方は大体お察しかと思いますが、Desire Gameは次の章が最終章となります。メインの人物も恐らく、お察しの通りです。

 次の作品のプロットも平行して行い始め、時間が足りなくなったことも事実です。ちょっと迷走してる感は否めません・・・


 ともあれ、今は最終章ですね。有終の美を飾れる様に頑張りたいと思います。


それでは、Desire Game 第五章 (いのち)の章でまた!


次回更新は、ひとまず5月27日(金)20:00を予定しております。


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