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Desire Game   作者: ユーキ生物
幸福の章
31/39

第六話 兄の幸福

第六話

(ひとり)幸福(しあわせ)


「・・・・・・っ・・・んっ、あれ?・・・千尋・・・」

「あ、兄さん、気が付いた?」

「・・・あ、そうか、僕は・・・」

「兄さん、ごめんなさい、咄嗟に兄さんに感情を流しちゃって・・・」

「僕の方こそ格好悪いところを見せてしまったね・・・」


 少しバツが悪そうに兄さんは言う・・・


「・・・私は、嬉しかったよ。」

「・・・嬉しい・・・?」

「うん、兄さんを私が守れたし、それに、今まで兄さんのことを完璧だと、手が届かない人だと思ってたけど、人間らしいところが見られたし・・・すごく、兄さんを近く感じられたから・・・。」


 これは嘘偽りない私の気持ち・・・


「完璧・・・か。・・・僕は、妹の前だからって、兄なんだからって、しっかりしようと虚勢を張っていただけで・・・本当の僕は身体を張る度胸がなくて、口でしか守ることのできないビビりな人間なんだよ・・・」


 やっぱり、こうやって身近に感じて改めて思う・・・兄さんは完璧超人でも何でもない、ただの人間で―――――私の兄さんだ。


「さ、千尋、そろそろ行こうか。真白さんと樹君が待っているだろうし・・・」

「うん、そうだね。」


 私は兄さんの手を取り歩を進める。


「・・・どうしたの?そんないきなり手を繋ぐなんて・・・」

「んーん、ただ兄さんに甘えたかっただけ」

「・・・・・・うん」


 これで私たちは兄妹になれたのかな・・・それとも・・・やっぱり、私の中には煮え切らない「何か」があった・・・


 私はその「何か」が掴めそうで掴めず・・・悶々としながら四階へ向かった。



Another Viewing


 私と樹君は利彦君たちと落ち合う予定の部屋で待っていた。一応休める部屋らしく、簡単な絨毯とかキッチンとインスタントラーメンがあったので、それを食べて待っていた。


「ズズッ・・・旨し・・・」

「樹君・・・塩バターコーンって・・・まるで子どもね・・・」

「・・・まぁ、否定はしませんけど・・・でも、真白さんの豚骨味噌こそオッサンっぽいですよ・・・」

「・・・・・・・・・(/´△`\)」

「いや!そんなマジ凹みしないでくださいよ!冗談ですって!!」

「嘘、良くない。」

「どの口が言いますか・・・」


 オッサン・・・オッサンかぁ・・・


 とか思っていたら部屋の扉が開き、利彦君と千尋ちゃんが入ってくる。


「あ、真白さんに樹さん、お待たせしてしまいましたか」

「ううん、大丈夫よ、さっきまで食事とか、休むということをしてたから。」

「ならよかったです。」


 そう言うと利彦さんはこの4階の物資の情報を教えてくれた。

 そこには一般人を一人殺すには過剰とも言える武器(もの)の名前があった・・・


「さすが最上階(・・・)、なかなかに物騒な武器があるみたいねぇ・・・」

「・・・最上階、なんですか?」

「えぇ、さっきまでマッピングをしてたんだけど、『終点』って部屋があったわよ。多分ミッションを達成して、そこまで行けばいいみたいね。」

「・・・ということは・・・千尋のミッションは・・・もう・・・」

 「・・・兄さんの言う通りかもしれない・・・私のミッション、『参加者の中で最も下の階層にいる』は達成されたのかもしれない・・・」


 千尋ちゃんと利彦さんは安堵している・・・でも・・・


「・・・ただ、私のミッション、『参加者全員の願いを知る』がまだ達成されていないのよ・・・だから、私達は他の参加者を探しに行くわ。」

「そうですか・・・僕達もお供しましょうか?」

「そうね、とりあえずは近場を探すから、二人は少しここで休んで、それから手伝ってもらおうかしら」

「・・・わかりました。僕らもさすがに疲労が溜まってますし、ここはお言葉に甘えさせてもらって、少し休ませてもらいます。」


 そうして、私達は一旦別れ、私と樹君でこの部屋の周辺を巡ることにした―――――――


 「お前達のスマホを渡してもらおう。」


 部屋を出た先に二人の男性がいた。どうにも臨戦態勢の様で―――


 『オーバードライブ!』


 男性の一人がそんなワードを口にする・・・

 私はすぐさま未来視で彼の攻撃に備える――――


 ―――――彼の拳の軌道を視・・・速いっ!!人間の速度じゃない!?――――――


 ―――――未来で見た拳の軌道を逸れる様に、全力で身体を動かす―――けど!彼の拳の応酬に身体がついていかな―――――


 ――――ぐしゃっ!!




Another viewing


 俺の目の前で、人の頭を人の拳が貫いている・・・普通そんなことはあり得ないけど、これが彼のスキルだとすると、俺に何ができるのだろうか・・・

 俺の電人化(スキル)には一つ欠点がある・・・それは、さっきの真白さんみたく頭を破壊されること、ロードすることが出来ないダメージで即死してしまうと足掻くことができない。


 真白さんを砕いた男が俺を見据え、拳を構える――――


 ―――逃げたい・・・逃げきれるなんて思わないけど、ただ、向き合うことが怖くて、向き合いたくない・・・


 でも、俺がここで逃げたら、この部屋には・・・千尋ちゃんが、俺が不安で押し潰されそうな時に、手を差し伸べてくれた恩人(ひと)がいる・・・!!


 立ち向かえるわけない、こんな選択は賢いとは言えない―――だけど!!逃げるなって、できる限りしぶとく、足掻けって、俺の中の何かが言ってるんだ!!


 だから俺はナイフを手に取る――――



Original viewing


私と兄さんは食事の準備を進める。早いところ休んで真白さんに協力しないと・・・


 ・・・・・・・!!

 ―――――――!!


 何やら外が騒がしい・・・


「兄さん、外、何かあったのかな?」

「そうだね・・・ちょっと見てみようか・・・」


 私達はドアを開け外の様子を―――――



 ――――――そこには頭を砕かれた樹さんと、真白さん、そして血にまみれた男性が二人・・・さっきスマホを要求してきた人たちだ・・・つまり、この状況は――――


「この携帯食料をあげるから――――――動くな。」


 すぐさま兄さんがスキルを使って二人を拘束する――――


「僕は君達にさらにこの水をあげよう、だから君達は僕の質問には全て正直に答えて下さい。」

「――――はい。」

「どうして二人を殺したんですか?」

「俺はミッションを達成するためにスマホが必要なんだ・・・だから奪うために殺した。」

「殺し方は?」

「俺のスキルは身体強化で、普通に殴って」

「そっちの方は?」

「僕は蠍座の人を殺す必要があって、彼が殺す際に蠍座だったら譲って貰うということになっています。」


 なるほど、だからか――――


「そうですか―――では、最後に一つ、僕はあなた方の拘束を解きますからお互いに殺しあって下さい。もし、生き残ったら自害してください。」


「「はい。」」


 兄さんはまた私を守ってくれた・・・でも、本当にこのやり方で良いのだろうか・・・いつだってそうだ・・・兄さんは私を守ることに遠慮がない、他者がどうなろうと関係ないみたいに平気で人を殺してしまう―――――きっとそれが、兄さんの、兄としての矜持(しあわせ)なのかもしれない――――


「考えてみると、これで残りの参加者は僕達だけじゃないかな?」

「そういえば・・・」


 私はまだ迷っている・・・


「僕は一つ不安があるんだけど、僕のミッションはクリア済みの千尋のスマホでいいのかな?あるいは千尋は僕にスマホを渡してもクリアになるのかな・・・って・・・」

「・・・・・・・・・・。」


 迷っている内に、「終点」に着いてしまう・・・


「千尋?どうかしたの?」


 兄さんが「終点」の扉に手を掛け――――――



「――――待って、私、やっぱり兄さんにスマホは渡せない――――」




「――――兄さんは――――間違ってる――――――」


どーも、ユーキ生物です。


 ここまで読んで下さった方なら大体察しがつくと思いますが、この幸福の章もクライマックスに近付いて来ましたね。当初は7話完結なんて予定にありませんでしたが、気付いたらそうしなくては、という謎の使命感に襲われる様になってしまいました。一話の重さが違うのにそれが達成できたかは置いておいて下さい。

 もう幸福の章終わった気で語りますが、この話の章タイトル、心、(やさしさ)、記憶、幸福・・・結構悩んで決めてます。心の章とか書き出す直前までは別の章タイトルでしたし・・・このあとの章も最近タイトル変えましたし・・・その点幸福の章と嘘の章はすんなり決まりましたね。そういう意味で、書きたい内容がハッキリしてる章です。あと一話ですが、幸福について少しでも表現できたらと思います。


 ・・・なんか、真面目な話になってしまいましたね・・・まぁ、ぶっちゃけ後書きのネタ切れ感は否めません。


 次回、あの兄妹の結末と一緒に、後書きが無事書ききれるか、ご期待下さい。


 次回更新は5月14日正午を予定しております。

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