第三話 突き付けられる死
第三話 突き付けられる死
謎の攻撃を受けた後(ナイフ・腹パン)、俺らは清美さんの地図アプリを頼りにチェックポイントを周りつつ二階へと繋がる階段を目指していた。
地図マジ便利。無駄なくルートを決められるのはデカい。
・・・ただ、無駄がなさ過ぎて休憩がさっき取ったお茶以降ないのが辛い、かれこれ3~4時間は歩き続きてる。どんだけビル広いんだよ。入り組んだ構造していて目的地に一直線でないから時間がかかるのは当然としても、テーマパークくらいあるんじゃないか・・・
疲れてきたが、気がかりなのがガスの進行度。あんまりゆっくりしていたら全員お陀仏だからな。みんなで話してとりあえず二階まではノンストップで行こうと決めた。水分は採れるようお茶のペットボトルは邪魔にならない程度に持ってきた。
歩きながら今一緒に行動している二人について考えてみた。
・・・清美さんがいると地図があっていいが、遠回りが辛い。今考え事をしてる時にもしゃべり続けてるくらいに、口数少ない菫ちゃんをカバーするレベルでしゃべってくれて明るく進めるのはいいんだけど、美人さんだし、目の保養になっていいんだけど、遠回りが辛い。
・・・片や菫ちゃんは貴重な戦闘力保有者、手錠もあって戦闘力ほぼ0の俺と一人を拘束することしかできない清美さんからしたら超貴重な遠距離アタッカー・・・ただ、歩くのが手錠の所為もあって遅い。
・・・もしかして、この二人、相性悪い?
・・・今更メンバー変更はできまい。このことは黙っておこう。
「あ、もうすぐ最後のチェックポイントよ。」
「・・・これで、二階に行ける・・・お腹空いたよぅ・・・」
「ここからなら階段も近いし、もう少しの辛抱だ。」
チェックポイントは清美さんが来れば地図上のチェックポイントを表す赤い点が青い点に変わる。・・・何かに必要な作業、というよりただ遠回りさせたいだけな気がする。チェックポイントの配置的にも。
ともあれ、これで一階のチェックポイントは全て周ったことになる。特にあれ以降誰かに襲われることもなく、平和にことが進んだ。
「菫ちゃんは何でも食べられるなら何が食べたい?食べられるわけじゃないけど。」
「・・・私は・・・フ、フルーツグラノーラが食べたいです。」
「フルグラかぁ・・・私はあんまり食べたことないけど、どんなとこが好きなの?」
「・・・調理いらないトコと、メーカーによって味とか食感とか違うあたりがすき。」
「・・・う、うん。そうかぁ・・・菫ちゃんは女子力低いんだね。」
「おいおい、なんなんですかそのフォロー。いや、フォローにすらなってないよ・・・。」
「う、うるさいわよ。そういうなら芯君ならどう返すのよ?」
「え、・・・マジで?俺は日○のが好きなんだけど、菫ちゃんの押しグラは?」
「ノリノリ!?芯君もグラノーラ好きなだけじゃない。それはズルいわよ。」
「・・・私はトップ○リューのがすきです。」
「ほぅ・・・PBまでチェック済みとは、菫ちゃんは真のグララーなんだね。」
「えへへ・・・」
「グララー!?なにそれ!?そんな単語あるの!?グラノーラ好きってそういう規模なんだ!?しかも真のグララーは褒め言葉なんだ。」
「ちなみに清美さんはなに食べたいの?」
「私?私は・・・カップうどんが食べたいわね。」
「女子力低ーい。」
「な!・・・た、ただ好きなだけで料理しないとかじゃ・・・」
「・・・その焦り方・・・怪しいです。」
まさかの菫ちゃんからの攻撃・・・それだけ打ち解けてきたって事なのかな。
「いや・・・そう!仕事が忙しくて!それだから料理する時間がないだけよ!子供にはわかんないわよね、この辛さ・・・」
「・・・ど、動揺してます・・・。」
「い、忙しいのはホントよ!・・・本当に、何でかしらね・・・。」
ヤバい、地雷踏んだっぽい
「あ!階段あそこじゃない?何人か人がいるし」
「地図的にもあってるし、あれでしょうね。」
何とか話題反らしに成功。
階段付近には四人の人影がいる。
「どうする芯君?あの人たちに私達殺されないかしら?」
「・・・どうでしょう・・・四人もいるあたりあまり殺伐とはしてないと思いますけど・・・」
「私達を殺して、その後スマホを奪ったり・・・」
「一応壁さんに聴いてみますね。」
階段付近の彼らが安全かどうか、俺はスキルを使用し壁に尋ねた。
(壁さん壁さん、あの辺にいる人たちはどんな雰囲気ですか?)
(オオウ、ニンゲンニ、ハナシカケラレマシタ)
壁にも言葉不自由なヤツとかいるんだ・・・。
(アノヨニンノ、フンイキ?ミンナタノシソーニハナシテルヨ。)
(殺す、とかそういう言葉は言ってましたか?)
(コロス?ヨクワカンナイケドキイタコトナイネ。シンジルネ、カベウソツカナイ)
(・・・あ、ありがとうございます。)
信憑性はともかく、少なくとも出合い頭にグサリ、とはならなそうだ。
「どうやら、大丈夫そうですよ。四人の関係は友好的なようなので、いきなり殺されることはないかと」
「そう、じゃあ接触してみましょうか。何か役に立つアプリを持っているかもしれないし」
「そうですね。・・・菫ちゃん、一応いつでも応戦できるようにね。」
「・・・はい。」
相手の人数もあるし、念には念を入れてこう。
・・・どうやら四人の内二人は男性のようだ。俺以外の男性を見つけてちょっと安心。今まで女の人しか会わなかったからなぁ・・・
近づくと、向こうもこちらに気付いたようだ。
女性の一人が近づいてくる。この状況で一人で来れるということはそれなりのスキルを持っているのだろう。パッと見の外見はフリフリした白い服を着ていておっとりした印象を受ける、あまり戦闘ができる人には見えない。
「アナタ達もゲームの参加者なのよね~?三人で行動しているということは~危害を加えるミッションではないのよね~?」
「ええ、少なくとも私たちはあなた方に危害を加えるつもりはないわ」
清美さんが対応する。
「私達も~アナタ達に協力はお願いしたいけどぉ、害は与えるつもりはないの~。」
「それを信じる材料が欲しいな。あなた達四人の星座を教えてもらってもいいですか?」
「・・・?えっと~、私が乙女座で、あっちにいる女の子が~天秤座、年上っぽい男の方が双子座で~、影の薄そうな男の子が獅子座、だったはずです~。」
安全の確認のため、星座を尋ねると、あっさりと教えてくれた。
乙女座は願いを知る、天秤座は生存者で一番下の階にいる、双子座は天秤座のスマホの破壊、獅子座がスマホ三つの所持・・・スマホ関係のミッションは奪われそうで怖いけど、こうやって協力関係にいるということは奪う気はないのかな。
「わかりました。協力に関しては内容を聞くまでは判断できませんが、とりあえずあなた達に俺たちを攻撃する利がないことは確認できました。」
「芯君、こっちばかり要求してたら失礼でしょ。今度は私たちが何か無害を証明しましょうか?」
「いえ~、それに関しては大丈夫です~。これでも私たちは結構武闘派なスキルを所持してますので~、問題ないです~。あなた達の用心深さや、その手錠を見るにあまり争いたくないというのはわかりますし~。」
この人・・・おっとりしてる割に鋭い・・・
「話が早くて助かります。」
俺たちは階段にいる他の人の元へ向かった。
「まずは私達の自己紹介からしましょうか~。私は桃山 真白と申します~。星座は先ほど申したように乙女座で~、~ミッションは参加者全員の願いを知ること、スキルは近い未来に限りますが未来予知ができます~。」
おっとりとした女性、真白さんから自己紹介が始まった。スキルまでいうのか・・・というより、未来予知は抑止力で言ったのだろう。俺らがもし攻撃しても先にわかるぞ、という。なるほど、一人で俺らの相手をし、俺らの詳しい事情を知らずとも交渉に持ち込めるわけだ。
「次は僕かな、僕は米山 利彦、双子座を割り当てられました。そしてこちらが僕の妹、米山 千尋、妹の星座は天秤座となってます。」
気さくな男性、利彦さんが慣れたように話す、その隣に怯えたようにこちらを窺う女の子、千尋ちゃんがいる。
利彦さんはフォーマルな恰好をしていて年上な印象を受ける、清美さんと並ぶとここがオフィスな気がしてならない。千尋ちゃんはよくは見えないが制服らしきものを着ている、どこの学校の物か見覚えはない。みんな日本人だけど出身ってどこなんだろう。このゲームの参加者はどういう基準で選ばれているのだろうか、地域は全国からなのか、一部の地域からなのか・・・。
というより、この二人兄妹なんだ・・・二人揃ってゲームに巻き込まれるとは気の毒だな・・・いや、引き剥がされる方が辛いだろうな、きっと。
「僕の方はミッションが双子座、つまりは千尋のスマホの破壊、スキルは両者に利のある交渉を行った場合必ず交渉を成立させる、といったものです。例えば・・・そこのあなた、僕のアプリ情報とあなたのアプリとミッション、スキルの情報を交換しましょう。」
そう言って利彦さんは俺に向き合う。
「いいですよ。」
!?
どう考えても俺の利の方が少ない交渉なのに、考えるよりも早く口が返事してしまう。
菫ちゃんと清美さんも驚いている。
「では先に僕から、僕のアプリは僕のいる階の物資や設備の情報が入ります。この階には食料がないことや、ベッドルームが参加者と同じ十一個あることなどのね。」
「俺のアプリは参加者のミッションが星座ごとに記されています。ミッションは二名以上のミッションクリアを手伝うこと、スキルは物と会話ができます。」
俺の意思とは別に勝手に口が動いてしまう。なんて恐ろしいスキルだろうか。
「わかっていただけたようですね。では次に妹の千尋のミッションですが、千尋は生存者の中で最も下の階にいなければなりません、そのために我々はここで待機していました。スキルは触れた相手に自分の感情を移す、というものです。・・・見てのとおり少々怖がりな子でして、巻き込まれないようあまり近づかない方がよいかと思います。」
感情転移能力、何というか、なんの役に立つのだろう・・・このスキルって自分の願いから生まれたものなんだよな・・・何を願ったのかな・・・
「最後は俺か、俺は火口 蒼、獅子座でスマホ三個の所持がミッションになっている。スキルはあらゆる身体能力を向上させることができる、ただし、身体能力を向上させる燃料として俺の寿命を消費する。消費を抑えれば身体強化はすこしだけ、あるいは短い間だけ、逆に人生の大半を注ぎ込めばなんだってできる。」
パッとしない見た目の、普通の男子がしゃべる。この人も武闘派なスキルを持ってるんだな。
喧嘩売る気はなかったけど、銃とか構えて接触しなくてよかった・・・。
「次は私達が紹介する番ね。」
清美さんが紹介していく
利彦さんのスキルを使えば俺たちの情報はおろか、協力すらさせられたはずなのに何でしなかったのだろう・・・誠意とか、そういうものだろうか・・・
「・・・という感じになっているわ。」
清美さんが俺たちの情報を公開し終える。
「それで、協力のお願いというのはぁ、私と蒼君のミッションに協力していただきたいのですぅ。」
「ん?真白さんのミッションの協力はわかるのですが、蒼君のミッションもですか?」
「その件に関しては僕の方から、火口さんのミッションはスマホ三つ以上の所持ですが、僕と千尋は参加者最後尾を行かねばならないので、皆様と協力関係が結べたら別行動をすることをお願いしたのです。できるだけガスが満たされるギリギリラインでいなければならないので・・・それと、その件でもう一つ、皆様のアプリなどから得られる情報をいただきたいのです、僕と千尋は最後尾でいるので無駄な行動は避けたいので・・・」
そういうことか、要するに真白さん、蒼君と先に行って利彦さん、千尋ちゃんのサポートをするってことか。
「別段こちらに都合の悪いことは・・・ないので、協力することはやぶさかではないですけど」
菫ちゃんと清美さんに目で許可を取り、答える。
「俺たちにも何か利があるんですよね?」
「もちろんですよぉ、利彦さんのアプリの情報とかぁ、千尋ちゃんのアプリ情報も結構大事ですしぃ、私達もぉ、強いですよ?」
真白さんが自信満々に言う。最後の言葉には「試してみようか?」というニュアンスが含まれていた気がする。まぁ、強いスキルを持ってるのは理解できるし・・・
「俺らと組むと進行速度遅くなりますけど、それを了承してくれるなら、協力しましょう。」
俺は菫ちゃんと繋がれた手錠を示し、清美さんも続いてスマホに移ったチェックポイントの文字を見せる。
「そのくらいだったら何てことないですよぉ。それじゃぁ、これからよろしくお願いしますぅ。」
みんなで協力を確認する挨拶をする。礼儀を重んじる人たちなんだろう。
これでずいぶんゲームクリアが見えてきた。
・・・ただ気がかりなのは蠍座の「参加者全員の死亡」というミッションまだ生存者がこれだけ徒党を組んだら困難だろう・・・主催者はゲームバランスとか考えてるのかな?他の参加者とは遠い場所に配置するとか。
「ところで、みんなの役に立つアプリってどんなのなの?・・・あ、私は自分のいる階の地図が見れるわ」
清美さんの発案でアプリ公開が始まった。
利彦さんは物資や設備の情報、この人のスキルからしてみれば利がある情報だから鬼に金棒。
千尋ちゃんはガスの進行度合が見れる、どうやら一時間で4%程度ガスが進行しているらしい、一日一階ってことか。
真白さんは半径二メートル以内の人のアプリの封印、未来予知なんてチートレベルなスキルだからか、あんまりパッとしないアプリだった。俺とかもう大体おぼえたからアプリ起動しないし・・・
そして、蒼君から告げられたアプリの内容に俺たちは幻想を打ち砕かれた。
「俺のアプリは参加者の生死の情報が入る・・・アプリによると既に水瓶座の人は死んでいる、らしい。」
・・・・・・・・・・・・。
え?死んでる?・・・そんなまさか・・・。
こんなに和気あいあいとしてるのに・・・、みんな協力関係が大事だって理解して・・・え?
命の保証はしないとは聞いていたけど・・・確かにナイフを投げつけられたりしたけど・・・ミッションに殺害だの、死亡だのあったのは知っていたけど・・・心のどこかでレクリエーションやエンターテイメントの類だと思っていた。
「・・・えっと、俺のアプリはさっき話したけど、全員のミッションが表示される。・・・その中には、殺害するものや、参加者全員の死亡がクリアミッションになっている星座もいる・・・。」
全員に重い空気が流れる。
俺たちはこのゲームの異常さに、どこで誰が殺意を持って狙っているかわからない恐怖に晒された。
「・・・みんな思うことはあるだろうけど、私達は私達ができることをしましょう。できるだけ多くの人が生き残れるように。」
清美さんが空気を破る。確かにここでモタモタしている場合じゃない。
生き残る。まさにその通りだと感じた。
「そうだね。真白さんのミッションとか先に行った人とか探さなきゃだし。・・・ちなみに、水瓶座の人の願いは・・・。」
「それは大丈夫ですぅ。水瓶座の人とは部屋を出てすぐに出合いまして、ミッションをするための道具もなかったのでとりあえず願いだけ見て別れましたぁ。」
・・・この感じ・・・武力行使したんだろうなぁ・・・。
「それでは、僕達はまだここで待機しておりますので、お願いします。」
「わかりました。二階の情報ありがとうございます。」
「いえいえ、僕の方こそ地図がもらえたので、安いものですよ。」
とりあえず利彦さん、清美さん、真白さんで二階に先に行き、アプリの情報を交換した。
紙とペンは一階にあったらしい。ホント便利なアプリだな・・・。
「それじゃあ、二人とも気を付けて」
「ええ、皆さんも、どうかご無事で」
「千尋ちゃん、またあとで会いましょうねぇ」
「・・・うん。バイバイ」
「ほら、菫ちゃんも」
「・・・ま、またね・・・」
「芯君パパみたい」
「なっ!清美さん!」
「俺もそれ思いました!」
「パパぁ、ましろもパパって呼びたい~」
「悪ノリしないでくださいよ真白さん。まったく、いい歳なんですかrゴフッ!」
鳩尾をいつの間にか殴られていた。崩れ落ちる俺・・・。
これ菫ちゃんも倒れる俺に手首引っ張られるからやめてほしいんだけど・・・。
こうして俺、菫ちゃん、清美さんに、真白さん、蒼君が新たに加わり二階へ向かった。
Another viewing
リレーションシップ
芯君達と別れてから数時間が経った。あれから誰もこの階段には来ない。千尋のアプリに示されるガス情報は50%くらいになっていた。ガスの比重はずいぶん重く加工されているようで、足元が心なしか軽くなった気がする。
「・・・兄さん、もうみんな上に行っちゃったのかな?」
「どうだろう・・・参加者が十一人で、真白さん、蒼君、芯君、清美さん、菫ちゃん、水瓶座の人、それと僕達。八人は大丈夫だけど、残りの三人が僕達より先に行った保証はないからね・・・念のために粘れるだけ粘ろう。幸運なことに地図も手に入ったわけだし。」
「そうだね。ラッキーだったよね。」
「それはそうと千尋、さっきの態度はどうかと思うぞ、お前が人見知りなのは知ってるけど、みんな友好的に接してくれてるんだから。」
「あたしは兄さんさえいてくれればいいもん」
「そういうこと言ってるとこういう地図とか手に入らなくて苦労するんだぞ。」
「・・・。」
「少しずつでいいから人見知り直していこうな。」
「・・・はぁい・・・」
千尋は不満そうに答える。こんな調子じゃいつまでも俺が面倒を見ることになってしまう・・・。仕方のない妹だことで・・・。
「あ、兄さん、誰か来たよ。」
「・・・一人か・・・千尋、隠れてなさい。」
何かを探しているようにキョロキョロと落ち着きのない男性がやってきた。単独でいるということは協力が難しいミッションなのか、それともたまたま誰とも遭遇していないのか・・・
男性を見るにあまり凶悪な印象は受けない・・・どうするべきか・・・
とっさに死というワード、そして、このゲームの異常性が頭を過った。
みんなのアシストのおかげで僕達のミッションは大分楽になったのだから、ここは一つ欲張るよりも無難にいこう。僕には千尋を守るという人生におけるミッションがあるのだから。
僕はスキルを使用することを決めた。
「こんにちは、僕と取引をしましょう。僕はあなたに僕のミッションを教えます。その代りあなたはあなたの名前とミッション、スキル、アプリを教えて、僕らには関わらずに上の階へと進んでください。」
必要な情報だけを聞き出して後は先へ行かせる。先に行かせることが最大の目的だ。
「僕のミッションは双子座のスマホの破壊、君にはきっと関係ないはず」
苦悩させられたミッションを口にする。
「俺は森村 樹、ミッションは水瓶座を生かして目的地にたどり着くこと、スキルは電人化、アプリは自分のスマホの機能を犠牲にすることで半径十メートル以内にあるスマホ一機を使えなくする。それでは」
そう言って、森村さんは上の階へと向かっていった。
ミッションから推測するに彼は山羊座、電人化というスキルがどんなものかはわからなかったが、とりあえず第一目標は達成された。あと二人がどこにいるかわかればいいんだけど・・・
「ねぇ、兄さん。さっきの人のミッション・・・」
千尋が不安そうに話しかける。さっきの人のミッション?
「水瓶座を生かして目的地にって・・・もう水瓶座の人は・・・」
そうか、蒼君のアプリで確認したところ、水瓶座の人はもう・・・
彼はまだ知らないのだろう。
蘇生のスキルとかあればいいけど・・・
僕は千尋と階段で他の参加者を待ち続ける。