表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desire Game   作者: ユーキ生物
幸福の章
28/39

第三話 立ち向かう勇気

第三話

立ち向かう勇気



 階段付近に潜伏して、何人か階段を昇っていく姿を見た。


「・・・今ので、さっき柚子さんから得た人数になるかな・・・」

「・・・そうだね、兄さん。」


 恐らくこの階には私達しかいないはず・・・そう推察し、私達は上の階へ進んだ。ちなみにこの時一階のガスの進行度は75%だった。


「千尋、こっち」


 上の階に上がると、芯さんと紅さんと合流する手はずの部屋へ向かう。私は場所を知らないので兄さんの誘導なんだけど・・・


「・・・・・・///」


 私は兄さんに手を引かれていた・・・


「・・・その、に、兄さん。子どもじゃないんだし、手は・・・///」

「何言ってるの?兄にとって妹はいつまでも保護対照(こども)なんだよ。」


 何その理屈!?・・・照れくさいよ・・・


 でも、兄さんにとって、私は・・・


「さ、ここだよ。」


 その部屋は割りと近場にあった。


「あ、来たね。」


 中には予定通り芯さんと紅さんが待っていた。


 そして――――――


「芯さん、その手に持っている物は?」

「これ?拳銃だよ。」


 芯さんの手には拳銃が二丁握られていた・・・


「利彦さん、そんな怖い顔しないでよ。見つけたから千尋ちゃんにって持ってきたんだ。一丁は俺が持つけど。」

「・・・・・・え?わ、私に?」

「うん、君と僕のスキルは戦闘向きではないから。」


 そう言って、芯さんは私に拳銃を渡してくる。


「・・・・・・あ、ありがとう、ございます。」


 私・・・


「・・・・・・うっ・・・・・・・っ・・・・・・!!」


 どうしよう・・・涙が・・・


「千尋ちゃん!?」

「千尋!?どうした!?」

「・・・っ・・・う、ううん。だ、大丈夫・・・っ・・・た、ただ、今まで、兄さん以外の人から、こうやって、私のためって贈り物、されたこと無かったから・・・嬉しくて・・・っ・・・」


 今まで、兄さん以外の優しさに触れて来なかった、そして、兄さんの優しさは、兄が妹に対して向けるもので・・・私個人を思いやられたのが、純粋に嬉しかった。


 私を見ていてくれるようで、私が私でいいって言われてるみたいで。


 ・・・もらった物は拳銃だけどっ!!


 うん、少し、落ち着いた。


 落ち着いて。改めて手の中にある物を見つめる。


 視界の端では兄さんが紅さんから地図をもらっていた。


 紅さんと芯さんはその後に先へ進んで行くようだ。兄さんが二人と打ち合わせをしている。


 そんな兄さんと、この拳銃を交互に見て、私は決意する。


 この(チカラ)で私が兄さんを守る、と―――――――





 ―――――――――――私はずっと兄さんに守られてきた。底層区画にいる時も、米山組にいる時も、そして、米山組から脱する時も―――――


「千尋、今日は僕と職場(カジノ)に行かないか?」


 その日、兄さんは私にそんな提案をしてきた。


「・・・いいけど、兄さんがそんなこと言うの初めてだよね、何かあるの?」

「何かってほどのことじゃないよ。ただ、あそこで働いてだいぶ経って、それなりに(さま)になってきたから、千尋にも見てもらおうと思って・・・」


 もちろん私は兄さんに付いていった。


 兄さんの仕事ぶりは凄かった。カジノということを理解していて、ただ強いだけでなく、相手をしっかりと楽しませた上で、利益もきっちりと出し、またリベンジしたくなるように、絶妙に勝ち負けをコントロールしていた。もちろんイカサマのオンパレードで。


 休憩時間に兄さんに聴いてみた。


「兄さん、さっきのって、底層区画の・・・」

「・・・うん、さすがに千尋にはわかっちゃうか。・・・これは、僕達が家族でいるために、家族を守るための技術(ちから)なんだ。正しいとは思わないけど、間違っているとも思いたくない。」


 兄さんのその言葉と、その時の眼差(まなざ)し、兄としての覚悟と誇りを感じるには十分だった。



 兄さんの仕事を見て、米山組の屋敷に戻ると、屋敷は炎と喧騒に包まれていた。


 対立組織と組内の反乱分子による一斉攻撃だったらしい。


 そして、組長らの遺産の大半は兄さんが受け取った。どうにも近縁の人はほとんどが亡くなったとのことで・・・


 そうして、米山組は解体された。


 残された私達は底層区画に逆戻り、かと思っていた。


 でも兄さんは私と二人で暮らす十年以上の生活費を稼いでいて、米山組解体と同時に私達は普通の生活に戻ることに・・・なるはずだった――――――――――




 新たな生活を始めた日の夜、私達は何者かに拐われて、ようやく始まる普通(しあわせな)の生活を奪われて、このゲームに参加させられている。


 二人が先へ進んで、また兄さんと二人になる・・・


 いや、これはチャンスかもしれない、今まで兄さんにずっと守られてきたんだから、この非常事態で、私が兄さんを守るんだ・・・!!

 能力(ちから)ない私は、今までずっと逃げてきた。底層区画でも、米山組でも、ずっと、自分を殺してきた。

 それは、私に立ち向かう勇気が無かったから・・・困難に、不条理に、自分自身に、そして恩人(にいさん)に・・・

 勇気が無かったから願いを聴かれた時、逃げたいと願ってしまった。・・・でも、私は兄さんの隣に立ちたい、守られるだけじゃなくて、二人で支え合える関係になりたい・・・!!


「―――――――っ!!―――――――ゃ!!」


 そう思った矢先、誰かが声を上げて私達の方へ駆け寄ってくる―――あれは・・・さっきの、柚木さん、だっけ。

 柚木さんの顔は焦りと恐怖のようなもので染まっていた。その手にはナイフが握られて・・・


「懲りない方ですね―――――僕の年齢を教えますから、そのナイフで自害してください。」


 私が銃を構えて、柚木さんに近付き始めたと同時に、兄さんのスキル―――――!!


 今回の取引は容赦がない・・・しかし、柚木さんは自害することなく私達に近付く――――!!


「助けて!!襲っておいて難だけど!操られてるの!!」


 ―――――――操ら・・・えっ!?・・・


 一瞬思考が止まった際に、私は柚木さんに拘束され、ナイフを首に押し当てられる―――――


 操られてるって、私じゃどうすることもできないんじゃ・・・ナイフが当たったところが冷たい、私の命はもう・・・・・・怖い・・・守るって決めたばかりだけど、怖いよ・・・怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!!


 ・・・・・・あれ?


 いつの間にか、まるで、坂の上から下に水が流れるかのように、私の感情が無くなっていた・・・


「あ・・・あぁ・・・!!ぃやあああぁぁぁぁっ!!!」


 代わりに叫び、うずくまってしまう柚木さん、まさか、これが・・・感情転移・・・私の、スキル・・・なんて・・・なんて・・・愚かで、恐ろしいスキルなの・・・


 流れた感情のあった空間と、私のスキルのごうの深さへの罪悪感で、私は、ただ立ち尽くすしかなかった・・・。


 そこへ、もうひとつ、焦った様な足音が近付いてきた。


「蜜柑!?スキルが切断したけど何があったの!?」


 現れたのはスーツの大人な女性で、柚木さんの様子に慌てている・・・


「君たち二人とも、後でまた会いに来るから、ここで黙って動かずにいてください。」


「「・・・・・・・・・・・・・・。」」


 兄さんがスキルを使用すると、二人は時間が止まったかの如く動くことがなかった。今度はちゃんとスキルが効いたみたい・・・


 動けないでいる私を、兄さんが誘導してくれて、私達はこの場を離れた。

 少し進んだ部屋で兄さんは私にしばらく待ってて、と言い残し、どこかへ行ってしまった。頼れる似ただから、心配はしていないけど・・・

 私はしばらく茫然としているしかなかった。




Another viewing

兄の使命


 さっきの男性のスキルで、私達は一歩も動けないでいた。

 また会いに来るって言ってたし、きっと大丈夫だよね・・・?


「別に、そのままでもよかったんだけど・・・」


 その男性が現れる。


「でも、僕達が上に行けないのは困るんだよね・・・」


 その男性は少し考えて、私に―――


「キミ、そのナイフ、僕が磨いてあげる、だから、こっちの女性を殺して、その後キミ自身も自害して。」


 ―――――えっ!?


 男性は私のナイフを取り、刃先を少しだけハンカチで拭く、そして、そのナイフは、私の手に、戻った・・・

 身体が新しい支配に奪われる感覚。

 それと同時に、私の手はスーツへと勝手に吸い込まれていった。

 シャツとスーツの白とグレーが赤黒く、ただの一色に変わっていった。

 女性(ひと)死体(もの)に変わったのを確認すると、今度は私の喉元が熱くなった・・・

 傷口が痛くて、呼吸ができなくて苦しくて、酸欠で意識が薄れていった。


 私が最後に見たのは、だいぶ離れたところで私達の死を確認して、作業が終わったと言わんばかりに足早に立ち去る男性の姿だった。


 ご欄悦ありがとうございます。


 エイプリルフールネタを仕込もうかと思ったけど、余裕なくてできなかったユーキ生物です。

 何とか予定通りの投稿に間に合いました。少しだけですけど、定期的に更新できるよう書き溜めておいたものの、たった三話で使いきる始末・・・次回の更新が心配になります。

 記憶の章が完結して二週間ほど時間をいただいたお陰でプロットがしっかりしてて、書くペースはそこそこなのが救いですね。

『後書き書く時間で本編書けよ。』

というのは何度自分に言い聞かせた言葉でしょうか・・・


 第四話、まだサブタイトルしか書いてない・・・


 あ、ちなみにここのところデス描写に不満が募っていたので、今回予定にはありませんでしたが、突発的に入れてみました。でもなんか不完全燃焼、もう少し気の効いた表現を入れたいですね。


 とか頭オカシイとこを後書きで晒してますね、前回といい・・・これで読んで下さる方が減らないか心配です。小説とか作品は人の目に触れてナンボだと思ってるので。


 それでは、今回はこの辺で―――――


次回は4月8日付近に更新予定です。エイプリルフールの嘘ではなくて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ