第五話 何度でも
第五話
何度でも
ッダアアアゥゥゥッ!!
ッダアアアゥゥゥッ!!
何度も轟音が響く
とある部屋にはライフルと弾丸が大量にあった。ライフル、おそらくはドラグノフという名前の銃だろう、FPSのゲームで見覚えがある。・・・まぁ、そんなことはいいとして・・・そういうことで、現在蜜柑が射撃の練習を行っている。耳栓は一つしかなかったので俺と利彦さんは手で押さえる形・・・ちょっと辛い・・・
この練習は蜜柑から言い出した。
「あたしは失敗しても平気になりたいって願ったの。でも、願うだけじゃなくて、失敗しないようにすることも大切だと思うの、だから――――」
とういう感じで・・・俺もこのゲームが終わったら、外の世界に出よう。やっぱり、できないからって逃げていたら、ダメだろうし・・・
「・・・っふぅ・・・」
「お疲れ、なかなかいいんじゃない?」
「そうかな?まだ反動に持っていかれる感じするけど・・・」
「いや、あれは誰がやってもそうなると思うよ。」
「ええ、僕もそう思います。ましてや蜜柑さんのような小柄な女性の割に、なかなか抑えてる方だと思いますよ。」
「小柄とか、関係あるの?」
「作用反作用の法則です。弾丸を撃つエネルギーと反対方向に銃も押されています。そのエネルギーは銃自体の重さとか、撃ち手が押さえつけることで弾丸のようにはなりませんけど、エネルギー的には同じものを負担してますから、重い、ということは慣性の法則で、安定させるのには重要です。」
「・・・・・・?」
「あー、そういえば蜜柑はおバカだったよな・・・」
「・・・そうでしたね・・・あ、それよりも、お預かりしていた蜜柑さんのスマホ、結構近場にまた人が来たようですよ。」
そのスマホのレーダーには、一つポイントが俺たちに向かって近づきて来ていた。
「・・・ひとり、ですか・・・どうします?」
「・・・怖いですけど、あたしのミッションも利彦さんのミッションも、逃げてばかりじゃいけないですから・・・」
ひとり、ということは他の人と共闘できないミッションなのかもしれない・・・かといって蜜柑の言う通り逃げてばかりではいけないし・・・
「一応俺がセーブしておきますから、この人に接触してみましょう。というより、ヤバい相手でもこっちには長距離の銃がありますから、怖いのはこの間の狙撃手くらいじゃないですか。」
「・・・それもそうですね。僕は少し臆病過ぎたかもしれません。」
「セーブで保身に走る樹君素敵!」
「あれ?今、俺、貶されてなかった?」
いつの間にか蜜柑は俺のことを君呼びしていた。・・・まぁ、俺も気が付いたら呼び捨てにしてるし、いいんだけど。
俺はセーブし、未知の相手との遭遇に備える・・・
「とりあえず僕が先行します。話し合いで何とかなるかもしれませんし・・・」
利彦さんは強がっていた。何となく、この人は兄貴体質なんだな、と思った。何となくだけど。
利彦さんが人影に近付く・・・あの人影、どこかで・・・?
「すみません、少しお話しをよろs―――――」
ズガアアァァァンッッ!!
聞き覚えのある轟音!そしてあの小柄な人影!間違いない、この間の階段付近で狙撃をしてきた人だ!
俺は利彦さんが床に崩れ落ちる前にロードを行う。
―――――戻ってきた!
「あの人は階段で狙撃をしてきた人です!蜜柑、構えて。」
戻ってすぐに俺はみんなに指示をする。
・・・セーブをするのが遅かった・・・今から逃げたんじゃヤツの射程距離から逃れられない・・・
「あっちは俺らの話を聞く気はない、仕方がないから傷だけつけて、逃げるよ。」
「そんな、傷だけなんて、できるかわかんないです・・・」
「足元に撃って、もし早めに床に落ちても、跳弾とかで当たるかもしれないから。」
「・・・やってみる。」
遠くの人影が近付く・・・その手元が小さく光った・・・これは――――
「蜜柑、撃って!!」
「―――――っ!!」
同時に複数の銃声が響き渡る!!耳の鼓膜が張り裂けそう・・・それどころか全身の血液が揺さぶられておかしくなりそう・・・
蜜柑の弾丸は当たらなかったようだ。しかし、相手の弾丸も同じ・・・おそらく相手も狙撃に精通しているわけではなさそう・・・
「もう一回!」
「はいっ!」
蜜柑が次を構える―――
長距離ライフルというのは次弾装填に時間がかかる・・・と思っていたが・・・
ズガズガアアアァァァンッッ!!
ズガズガアアアァァァンッッ!!
相手は普通ではありえない頻度で二発刻みで連射してきた!!
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる・・・
蜜柑の応戦虚しく、弾丸は俺らに命中した・・・
この状況、どう活路を見出せばいいのだろうか・・・具体的な対策ができないまま、俺は再びロードする・・・
・・・戻ってきた。俺は蜜柑に射撃指示を出し・・・人影に向かって走り出す!
良い作戦なんて何も思いつかなかった。だから俺は囮になることを選択した。相手も素人、動く相手に狙いを定めることは難しいはず、もし失敗してもまたチャレンジすればいい、死んで憶えるんだ!
「おおおおぉぉぉぉぉっ!!」
囮になるように大声で肉迫する。
ズガアアァァァンッッ!!
一発目は外れる!よしっ!行ける――――
ズガアアァァァンッッ!!
「――――くッ!!」
二発目に、俺の右足は吹き飛んだ・・・
痛みは薄れても痛いことに変わりはない・・・
崩れ落ちる俺・・・
ダメ、だったか・・・でも!
俺にはやり直すことができる!・・・ロード――――!!
戻って再度走り出す!こんなバカげたこと、正気の人間だったらやらないだろう。俺には学も、身体能力もさしてない、根性だって、今すぐに俺だけでも逃げ出したいくらいだ・・・でも!死ぬことへの抵抗だけはおそらくどの人間よりも少ないはず!だったら自分のできることを、愛する人のために!!
ズガアアァァァンッッ!!
今度は腹部を直撃・・・でもさっきよりも狙撃手に近付いた・・・その姿は、蜜柑と同じくらいの、ニット帽にマフラーで顔を隠した少女だった・・・
俺はもう一度ロードする―――――
何度も撃たれた。何度も死んだ。近付いたこともあれば、それまでよりも遠くでやられた時もあった・・・どのくらい死んだのだろうか・・・
・・・・・・一つ、わかったことがある。あの狙撃手の射撃から射撃へのリズムだ。狙撃用のライフルとしてはあり得ない速さだが、そのリズムはほとんど一定、素人だからそれをズラすというそぶりもない・・・きっとそこにチャンスが生まれる・・・セーブ・ロードの最大の利点、こっちは経験を積めるが、相手はそれができない、ということ、こういうところで差が発生するのか・・・
俺は発砲タイミングに回避行動をとる。それだけで弾丸の回避率は大きく上がった。これなら――――
「やっとたどり着いた・・・」
「・・・どうして、そこまでできるんですか・・・」
少女の銃口は俺の腹に触れている。そこには熱が蓄積されていて、熱かった。
それにしても・・・
「どうして、そこまで・・・って、なぜそんなことを聴くの?」
「私のアプリは、さ、参加者のスキルの使用履歴を見ることが、できます。つ、つまり、あなたが、何度も私に殺されていることも、把握できているんです・・・。」
この様子だと、復活したことはわかっても、その時に何を考えているかとかはわからないみたいだ・・・
「死んだらロード、ゲーマーの基本だからな・・・あとはこういう難しいゲームってクリアのやり応えあるじゃん、それに、何よりも・・・」
俺は何度目かの死の恐怖を隠そうと不敵に笑って見せる――――
「ひっ――――!!」
ズガアアァァァンッッ!!
その威嚇の笑いに少女は驚き発砲する―――――ロード!!
そして再度、俺は少女に隣接する。今度は銃を俺が押さえている形で―――
「復活したって、な、何度も、死ぬほどの痛みを、あ、味わうはずなのに・・・どうして、そんなに、向かって来れるの!?」
「痛かったさ、心が折れそうだったよ・・・いや、折れてたかもしれない・・・ひとりだったら!」
「―――――!?」
俺は少女の銃を振り落とし、その肩を掴んで、まっすぐ目を向け、伝える。
「そんな痛みとか、死ぬ恐怖とか、関係ない!!俺は愛する人と生きて帰るためだったら、何度でも死んでやる!!」
「あ、愛する、人――――――」
ッダアアアゥゥゥッ!!
俺が少女を押さえ、その間に、蜜柑がしっかりと照準を合わせ、そして、少女の脚を撃った。
「――――うっ!!」
その激痛に少女はなす術もなく地に伏せる・・・
「・・・ごめんな。」
俺は彼女のスマホだけ確認し、その場を離れた。
「さっきの子、蠍座でした。」
離脱後、俺は利彦さんに星座の情報を伝える・・・
「・・・そうでしたか・・・。」
なかなか見つからない天秤座。利彦さんは少し不安になったようだ・・・。
「・・・樹君、さっきの、その・・・」
「うん?蜜柑、どうしたの?」
「その、カッコ良かった。惚れ直した。」
「うん、蜜柑のためなら俺は―――」
「ありがと―――んっ・・・」
俺の言葉を遮り、蜜柑は背伸びで俺の唇を奪った・・・
「あのー、僕もいることを忘れないでいただきたいんですけど・・・」
「あ・・・ウプッ・・・」
あ・・・この流れは・・・
「・・・ゥ・・・ゥォオオオエエエエエェェェェ!!」
やっぱり・・・でも!!
「蜜柑の愛なら俺は!!」
「そこまでの愛はいらないわよ!変態!!」
引っ叩かれて、記憶が弾ける―――――
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弱くても・・・
痛い・・・痛い・・・
さっき撃たれた脚が焼けるように痛い・・・むしろもう痛いという感覚すら正しいのかわからない・・・
私は撃たれて、その激痛で動けなくなっていた・・・
さっきの人の言葉が脳裏から離れない―――
「俺は愛する人と生きて帰るためだったら、何度でも死んでやる!!」
・・・カッコ悪い・・・弱いくせに・・・失敗して、何度も死んでるくせに・・・
・・・・・・・でも、そんな弱い人でも、私は、味方が、欲しかったな・・・
視界が狭くなる・・・それは、失血によるものなのか、溢れてきた涙の所為なのかはわからなかった・・・




