第三話 蜜柑のあーるわんぐらんぷり
第三話
蜜柑のあーるわんぐらんぷり
気が付いたら、俺は嘔吐物塗れになっていた。
「・・・これって、その・・・」
蜜柑ちゃんの方を見る。
「・・・えっと・・・///」
申し訳なさそうに俯く蜜柑ちゃん。
「・・・悩むなぁ・・・蜜柑ちゃんの嘔吐物だからなぁ・・・喜ばしいんだけど・・・嘔吐物だからなぁ・・・」
「吐いたあたしが言うのもアレですけど、そんなところで悩まないでください。」
「樹さんがそれをどうなさるかは置いといて、シャワーを浴びに行きませんか?僕達も結構動いて汗かきましたし。」
「シャワー?」
「はい、僕のアプリの情報で、この階にはシャワー室が数か所あるみたいなので」
「・・・あたしは利彦さんの案に賛成です。」
「せっかくの体液を流すのか・・・どうしよう・・・」
「樹さん、ホントに引きますよ、そこまで行くと」
「・・・ちょっと嘗めてみようかな・・・関節チューになるかも・・・」
「やめてえええぇぇぇぇぇ!!」
「ははは・・・ロマンチックさの一切ない関節キスですね。」
二階を探索すること数分、あっさりその部屋は見つかった。
「わぁ!すごいふかふかのベッド!しかも冷蔵庫にいっぱい食べ物が入ってるよ!!」
「このゲームの主催者は何を考えているんでしょうね?僕にはわかりかねます。」
「・・・・・・あれ?」
「? ・・・樹さん?どうかしましたか?」
「ん?あぁ、いや、あれだけ動いたのにあんまり腹減ってないから不思議だなって。」
「気が張っているから・・・とかでしょうか?」
「んー、嘔吐物の所為かな?」
「それは言わないで下さいよ!!」
「とりあえず樹さんはシャワーを浴びてきたらいかがですか?」
「・・・そうします。」
俺はシャワーで身を清めた。・・・蜜柑ちゃんに汚されちゃった。とか言ってみようかなぁ・・・とか、「汚しちゃったお詫びに・・・///」って蜜柑ちゃんが一緒にシャワー室に来ないかなぁ・・・とか考えていたが、一切そういう展開にはならなかった。
着替えもよりどりみどり、揃っていた。・・・戦隊物の変身ベルトまで・・・着けていこうかな・・・でも邪魔だろうしなぁ・・・
シャワーから上がると、蜜柑ちゃんが仁王立ちで待ち構えていて、その正面には利彦さんが座っていた。
「お待ちしておりました。樹さん、どうぞおかけください。」
・・・? よくわからないけど、とりあえず利彦さんの隣に座る。
「・・・コホン、えー、では!『蜜柑劇場』始めるよー!!イェー!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
・・・なんか始まった。 ・・・呆然とする俺と利彦さん・・・
「えー、会場も温まってきたところで!早速行きたいと思います!」
温まってない、温まってない。
「ショ、ショートコント『ヒューマノイド』」
ヒューマノイド・・・人間型のロボットのことか
蜜柑ちゃんは動きがカクカクになる。ロボになりきったつもりなのかな・・・
「・・・はぁ~・・・ん?ロボットのあたしに悩みがあるのかって?・・・いや、最近寝不足でね―――――ってお前ロボだから寝る必要ないやーん!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
訪れる沈黙・・・
「うああぁぁぁぁぁ!!」
そして、はじける俺の記憶・・・
「ショートコント『ヒューマノイド』」
あ、なんか始まった。蜜柑ちゃんがカクカクとロボットになりきっている。
「え?ロボの座右の銘?・・・『永遠に生きるつもりで学び、今日死ぬつもりで生きる』かな。」
またはじける俺の記憶・・・
「ショートコント―――」
「あの、蜜柑さん。スベる度に樹さんの記憶を消すのは流石にかわいそうかと・・・」
「・・・ぜ、善処します。」
やっぱ記憶消されてたのね・・・いきなりショートコントとかされても、ちょっと理解がついていかないんだよね・・・。というより、なんでショートコントやってるんだろう・・・
「ショートコント『ヒューマノイド』」
記憶を消すたびに違うネタを用意してるんだよね・・・結構大変そう・・・
「・・・大丈夫ッス。バカにされても気にしないッス。あたしメンタル強いッス。ロバなんで。」
「・・・ロバ?」
「―――――――――――――っ!!」
「ストーップ!!記憶は消さないであげてください!!」
「・・・ロボっ!!噛んだだけ!!」
「―――――もうっ!かわいいなぁ!!蜜柑はぁ!!」
思わず撫でくり回す。
「――――――ウプッ―――――」
蜜柑ちゃんが嘔吐いたので急遽撫でるのをやめる。
「というより、なんでいきなりショートコントなんて始めたの?」
「・・・・・・っ!」
恥ずかしくなったのか、蜜柑ちゃんはシャワー室へ逃げる。
「・・・利彦さんはご存知ですか?」
「嘔吐物をかけたお詫びに、おちゃらけてるけどあまり笑わない樹さんを笑わせる。って意気込んでましたよ。・・・健気だったので、とりあえず協力しようと思ったのですが、あまりに寒すぎて・・・」
・・・笑わない俺・・・まぁ、確かにそうかも・・・可愛い蜜柑ちゃんを見てるときは大抵ニヤけるけど、笑う、とは確かに違う気もする・・・蜜柑ちゃん、そんなとこまで見てたのか・・・
そんな事件(?)があった後、俺たちはひと眠りすることにした・・・しかし、そこでも俺は・・・
「・・・樹さん、眠れないのですか?」
「利彦さん・・・起きてたんですね・・・」
「いえ、たまたま目が覚めたところです。」
「・・・どういうわけか、食欲も、睡眠欲もかなりなくなってきてるんです・・・身体も大して疲れていないし・・・」
「・・・・・・樹さんはそのことに関して、どう思います?」
「・・・薄々ですけど、何となく、こういうのも含めて、『電人化』なのかもしれません。銃で撃たれても死に近づきはするけど、痛みはそこまで感じない、さすがにそれは人間でなくなっている気しかしませんよ。」
「・・・僕もそうじゃないかと思います。」
今のところそこまで困っているわけではないのだけど・・・あんまりセーブ・ロードは使わない方がいいのかもしれない・・・
夜が明けて・・・いや、夜かどうかはわからないのだけど。
「二人とも、僕のアプリの情報に、この階にはスナイパーライフルがあるとの情報がありました。」
利彦さんのスマホには一階よりも殺傷力の高い武器の名が並んでいる。
「樹さんの話によると、遠距離から狙撃をしてくる参加者がいるらしいですから、対策をしておくべきかと・・・」
俺も蜜柑ちゃんも利彦さんに同意して、二階での武器探しから開始した――――――
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連射
・・・私の目の前には拳銃を構える男性、そしてその人に私もライフルをけ向ける。
相手の星座が何かはわからないけど、私のジョーカーアプリを破った。それだけはわかる。
この男性が私に銃を向けるのは、自衛のためか・・・ミッションのためかはわからないけど、私には殺さない理由がない。
―――――お互いに向けた銃口に緊張が走る―――
ズガアアァァァンッッ!!
私は先手を取る――――――が、射撃経験のない私の弾丸は躱したのか外れたのかはわからないが、当たらなかった――――
「今だっ!!」
相手の男性が接近してくる!私のライフルは一発ずつ弾を装填しなくてはいけない代物、外した隙は絶好のチャンスだと思うはず――――
だけど、私は新しい銃を呼び出し、もう一度彼に向けて発砲する。
轟音が再び響く
「―――――!!?」
驚く男性、弾はまた外れた・・・だったら!
私は両手に銃を呼び出し、撃っては新しい銃、撃っては新しい銃、として、連射を行なった。その度に空気が震えた。
しばらくすると、弾は何発か相手に命中し、殺害することに成功した―――――。
私は参加者の全滅のために銃を構え、再び歩き始めた――――




