第七話 救済
第七話
救済
私達は生きて帰るために、蠍座の人を殺すために、もう一度さっきの豪華な扉まで来た。
最初は誠君には殺しをしてほしくなかったけど、今は違う。あの頃の誠君はミッションだから、と殺すことを自分の意志にはしていなくて、罪悪感なんて持っていなかった。殺すことに何も感じないなんて、いくらこんなゲームをやらされているからだって、おかしいって思ったから。だから誠君が蠍座を殺すことは阻止したかった。
だけども今、彼は自分の欲求を叶えるために人を殺して犠牲になってもらう。そういう考えがしっかりできていて、殺される相手にも心が、願いがあることをきちんと理解している。なら、私は誠君の殺しを阻む理由はほとんどない。何よりも、私のために、なんて言われたら・・・ねぇ?
扉の前には人影が一つ。その手には大きいライフル。
「僕達は君に害を与える理由はない!」
そう言い放ち誠君は手に持っていた拳銃を捨てる。私は聴覚の四分の三を誠君に分け与えているので、隣に立っている、ただ、立っているだけ。ヘッドフォンをつけているみたいに声が伝わらない。
「・・・な、何?・・・的に、なってくれるの?」
「まさか、僕たちはキミを救いに来たんだ。」
「・・・す、救う?」
「キミのミッションは『参加者全員の死亡』だよね?」
・・・軽く頷く蠍座の女の子。
「おそらくだけど、キミが何か条件を満たすと、アップデートって言って、ミッションの内容とスキルが変わるんだ。」
「・・・ほ、本当に?」
「うん、僕がそうだったから」
・・・ここまでは真実、誠君が「騙されてもよくて、今度は騙してやる」って思ったときにアップデートをした。
「だから僕達は君のアップデートを手伝いたい。・・・もちろん、僕達が生きて帰りたいっていうのもあるんだけどね。」
真実と嘘を織り交ぜ始める。・・・やっぱり思った通り、騙されてきた誠君は、嘘の吐き方が上手い。騙された経験が活きている。
「・・・わ、私もこの、ミッションは・・・嫌・・・でした。・・・でも、仕方がないって、生きて帰るためには、って、お、思って・・・」
「そうか、なら、アップデートを目指そうよ。・・・まず、アップデートは、自分の願いと関係があるはずねんだ。だから、キミのミッションを教えてくれないかな?」
・・・完全に誠君のペースだわ。まさか願いまで聞き出すとは・・・
「・・・うん、ちょっと待ってね・・・」
そういってスマホを見る少女。
「・・・ん・・・」
少し見辛そうに目を細める。・・・そりゃ見にくくなるよ。誠君に視力を奪われているんだから。
「――――!?・・・え!?なんで真っ暗に!?」
これは誠君が完全に視力を奪ったってことかしら?
「やっぱりアプリの仕業でした!真白さん!今なら行けます!」
「うん!」
誠君の合図で私は彼女を拘束するために動き出す。
「くっ!!」
視力は失われているはずなのに、彼女は銃を私たちに構える。・・・え?どうして私を狙えるの・・・?
・・・彼女の銃は、私の方を向いていた。
・・・だが、彼女は床に崩れ落ちる。・・・一体何が?
「あ、視えた・・・けど、何、これ・・・」
「・・・ごめんね。最初から君を助ける気はなかったんだ。」
「・・・え!?・・・何で・・・こんなっ・・・」
「アップデートしたことも本当、キミももしかしたらアップデートできて、そのミッションから解放されたかもしれない。でも、僕たちは僕達が生きて帰ることを優先したんだ。アップデートできるかわからないし、できたとして変更したミッションがどんな物かもわからないしね。・・・そして、今、キミが立てないのも僕のアップデートしたスキル、それは感覚器官の支配。今はキミの三半規管、つまりは平衡感覚を奪っているんだ。」
「そんな!・・・だ、騙したの!?」
「・・・ごめんね。僕はミッションとして聴力を奪われてしまったから、スキルで誰かの聴力を借りないと何も聞こえないんだ。」
「・・・私、こ、殺されるの?・・・嫌っ!!死にたくない!!・・・こんなのっ!こんなのって!」
今、彼女がどういう状況なのか、傍目にはわからないでしょうね。でも、この作戦を立てたとき、誠君が宣言していたから、私は知っている―――――
「―――――いくら僕達が生き残るためだからって、人を殺すことは、許されることじゃない。・・・それでも、僕は殺す。・・・なら、できるだけ相手に配慮する必要があると思うんです」
「殺すことに、配慮・・・?」
「一つ、考えがあるんです。」
「・・・考え?」
「はい、僕が蠍座の人を殺す時、僕はスキルで相手の全ての感覚を奪おうと思うんです。」
「・・・全ての感覚、ねぇ・・・」
「そうしたら、きっと怖さも減るでしょうし、何より、痛くないですから。」
「・・・わざわざそんなことしなくても・・・相手は芯君の仇でもあるわけだし・・・」
「だって、嘘を吐く時は相手を幸せにするように吐く、そう学びましたから。」
「・・・誠君・・・」
―――――あの時の誠君、ちょっとかっこよかったわね・・・じゃなくて!
誠君は今、彼女の全ての感覚を奪っているはず。奪われた方はもう自分が存在しているのかすらわからないでしょうね。
そして、そのまま誠君は、彼女にナイフを突き立てた。
「これで、僕のアップデート後のミッション、『聴覚を失った状態で蠍座を殺害する。』をクリアできた・・・せめて、安らかに・・・」
「私の方も、この子の願い『想いを真っ直ぐ伝えたい』を確認したわ。これで全員の願いを知った事になるはずよ。」
「・・・・・・。」
あ、そうだった。聴覚がないんだった。・・・私は私の耳を指差す。聴覚を奪って貰う。
「私の方も、この子の『想いを真っ直ぐ伝えたい』って願いで全部って言ったの。」
「あぁ。想いを真っ直ぐ、ね・・・この子の最後の叫び、僕は言葉、聞こえなかったけど、死にたくないって気持ちは痛いくらいわかったよ。」
「私も、声もそうだったけど、やっぱり、死にたくないって気持ちはよくわかった。」
「どうしてできるのに最初からしなかったのかな・・・いや、それは僕にも言えることですよね・・・」
「・・・そうね。願いって、全部がそうってわけしゃないけど、案外その程度のものが多いのかもしれないわね。」
「でも、どうして人はその程度のことを全力で、命を掛けてまで望んでしまうのでしょうか?」
「・・・さぁ、人それぞれってヤツよね、きっと。」
私達は豪華な扉を開いた。そこは「終点」という、ゲームで目指す部屋だった。その部屋に入ったとき、私達のゲームは終わった。
エピローグ
ゲームが終わって、僕は聴力をゲームへの参加費として徴収された。スキルもあるけど、僕はあれから一度も使用していない。だって、僕の傍には信じられる人がいてくれるから。この人を信じていれば、たとえ騙されたとしても、悪いようにはしないって思えるから――――。
私はゲームの参加費として、子宮を失った。未来を視る私は、未来を繋ぐことができなくなった。・・・誠君と一緒にいて、今はとても幸せ。でも、いつかはこのことを伝えなくちゃいけないのよね・・・さて、どうやって幸せな嘘を吐こうかしら・・・
―――――嘘と願いは似ている―――――
どちらも自分を形作るもの、自分自身である。
嘘の章 完
御覧閲ありがとうございます。いかがでしたでしょうか。
これにて嘘の章は完結となります。また、次の章もよろしければ読んでいただければと思います。
あと、活動報告という機能がサイトにあるらしいので、というよりあるので、明日2月10日辺りに何か書こうと思います。折角なので。そちらの方もあわせてお願いいたします。




