第六話 愚直
―――――嘘と願いは似ている―――――
どちらも前に進もうとしない者には不要である。
第六話
愚直
銃声がした方へと私と誠君は向かった。
―――そこには、豪華な扉と、その前に二つの死体があった。死体には銃弾で撃たれたような傷、おそらく蠍座の狙撃なのだろう。
「二人の星座と願いを確認しましょう。」
誠君が二人の元へ向かおうとする。
「待って、撃たれるかもしれない。」
あの豪華な扉、絶対何かある感じがするし、私が狙撃手ならあそこを狙っていれば人が寄ってきて、入れ食いになると思うもの。
とはいえ、願いを確認しない訳にはいかない・・・さて、どうしようか・・・
手元には今までと違って拳銃がある、私のスキルを使えば私は相手の銃弾を避けて、且つ相手に銃弾を当てる未来を持ってこれる、なら・・・
「誠君はここで待ってて、銃弾を避けられる私が行くわ。」
「・・・はい、お気をつけて。」
私は未来を視る――――
―――倒れている二人、そして、廊下の先に見える人影。お互い銃を構える。私に向かって来る銃弾の軌跡を把握して、そして、私が撃った弾丸が相手に命中するよう相手の位置をおぼえて――――
私は歩を進める。倒れている人のスマホを確認する。一人目、魚座、願いは・・・絶対的な味方・・・もう一人は、獅子座、願いは・・・人生に色・・・そして、ヤツが撃ってくるのは、私が二人のスマホを確認して、ひと安心する、この瞬間!!
私は拳銃をさっき視た方へと向け、引き金を引く!
パンッ!!
その弾丸は虚空を貫いた。
――――えっ!? 何で誰もいないの!?
わからない、何が起きているのか!?
「―――!!・・・っ真白さん!!」
誠君が突如走って来て私を突き飛ばす。
ッズガアアァァァン!!
その直後に響く轟音。突き飛ばされながら私はその弾丸が誠君に向かっているのを見た。
その弾丸は私が視た未来とは逆方向から放たれていた。
「くっ!」
ッパンッ!!
誠君が狙撃手に向けて発砲する。狙撃手には当たらなかったが、その影は一度奥へと消えた。そして私は、自分の視た未来と結果が異なり、頭の理解が追い付かず、ただ呆然としていた。
「真白さん!!」
誠君が私の手を引く、その手は真っ赤に濡れていた。
――――!?誠君は肩を撃たれていた。・・・私がしっかりしていないから、また・・・
「とりあえずこの部屋に!」
狙撃を避けるために近くの小部屋に入る。
部屋で誠君の傷口を処置する。幸いにも掠めただけで骨とかには異状は無さそうだった。ひと安心。
「どうしたんですか?考え込んで、真白さんらしくない。」
「さっき、私の視た未来とは全然違った展開だった・・・もしかしたら、私の未来視が通じない相手なのかも・・・どうしたらいいのかな・・・」
誠君が突き飛ばしてくれなかったら、今頃私は・・・
「・・・あれ?誠君は何で私が撃たれるって・・・?」
「別に真白さんの様に、それがわかった訳じゃないです。ただ、狙撃手の射線上にいるのに呆然としてたから危ないと思って駆けつけて、そしたらアイツが狙ってたのが見えたので・・・」
「そう・・・その、助かったわ、ありがとう。」
「今まで守ってもらってばかりでしたから・・・」
謙虚なことを言うわね。
「その、守ってくれていたお礼って訳じゃないですけど、僕が狙撃手の相手をしますよ。」
前言撤回、欠片も謙虚じゃないわ。
「未来視ができる真白さんよりも僕の方が銃さえ捨ててしまえば安全に見えますし、言葉で騙して接近しますよ。」
「騙すって、それは誠君が一番嫌っていた行為じゃないの?」
「そう、ですね。・・・正しくないって思います。でも、僕はこれからも真白さんと一緒に生きていたいんです!そのためなら、間違っていても、愚かでも、大切な、譲れないことを譲らない真っ直ぐな僕でいたいんです!何よりも、真白さんを失う方が耐えられませんし・・・」
・・・・・・えっ!?・・・えぇ!?
「・・・それって・・・」
「はい、自分でも信じられないのですけど、嘘つきの真白さんが、相手を想って嘘を吐く優しい真白さんに、僕は心奪われてしまいました。」
心奪われてって・・・そんなっ!?
「だから、そのために、二人で生きて帰るために、僕はあの子を殺します。」
えっと、その、誠君に言いたいこと、聞きたいことがごちゃごちゃになってきた・・・
「その、真白さん、お返事の方は、頂けないのでしょうか・・・?」
不安そうにこちらを見る・・・あー!!もうっ!!こんな!こんな!命を助けられて、私のためにって決意見せられて、ズルいわよっ!!そんなのっ!!・・・私の方が年上なのよ!ここは私の恐ろしさを見せてやらなきゃ!
あー!!焦って何か耳がぐわんぐわんしてきた・・・
「・・・返事の前に、二つ確認したいのだけど?」
「・・・はい!」
「まず一つ目は、誠君はあの子が殺せるの?そのビジョンはあるの?」
「ええ、確信はありませんが、恐らくあの子には説得の余地があるはずです。」
「説得?あの誰でも銃を撃ってくるアイツに?」
「ええ、あの弾丸、どういう訳か僕のスキルが嘘だと反応するんです。恐らく、殺す気がないのか、それとも殺したくないのか、あの子は殺す事に関して、ミッションだから、せざるをえない状況だからしている、そんな気がするんです。」
「なるほどね。それで、説得するっていってもどうやって?」
「それは、これです。」
そう言って、誠君は私にスマホの画面を見せる。そこには「アップデート」という文字。
「さっき、真白さんを守ろうと、嘘を吐かれて騙されること、そして僕が嘘を吐くことを決意したとき、スマホから表示されました。アップデートをすると、ミッション、スキルが変わるようです。もし、あの子がミッションだからと嫌々で人を殺しているのなら、アップデートの話をすると少なからず説得できるかと思うんです。その隙をついて、殺します。」
・・・アップデートね。
「・・・ゴメン、質問増えるんだけど、誠君はスキルとミッション変わったのよね?どんなの?」
「えっと、スキルは感覚の支配です。嘘を吐くには持ってこいです。真白さん、さっきから耳が聞こえにくいですよね?」
「え、うん。確かに」
「それが僕の新しいスキルであり、ミッションでもあります。」
「どういうこと?」
「アップデートしてから、僕は耳が聞こえなくなりました。そのため、外部の音を得るには誰かの聴覚を支配して、拝借しなければなりません。今真白さんの聴覚を半分もらっているように。そして聴覚を失った状態で今までのミッション、蠍座を殺すということをクリアする。これが新しいミッションです。」
騙しやすくなった代わりに、騙されやすくなった。とでもいうのかしら。
「わかったわ。そのビジョンなら、できるのかも知れないわね。」
聴覚がない状態で会話とかできるのかしら?
「それで、もう一つ、最後の質問。」
そう言って、誠君の目の前に立つ。彼を真っ直ぐ見つめて。
「私に心奪われたってこと、もっと分かりやすく言葉にして。」
「それは、僕は、真白さんが、好き、女性として、好きだというこ―――――」
「―――――んっ!」
誠君が全部言い終わる前に私は彼の唇にキスをした。
・・・しちゃった。
「ま!真白さん!?」
動揺する誠君。私をときめかせた仕返しは成功したみたいね。
・・・私も顔が爆発しそうなくらい熱いけど・・・
「私が言葉で返事しても、信じてもらえないでしょ!だから、嘘が吐けない返事よ!」
「・・・う、うおおおおおおお!!真白さん!!好きだあああぁぁあっ!!」
咆哮する誠君。もうっ、いちいちめんどくさい王子様だこと・・・




